毎日がオフ会!? オタク女子2人のうらやましすぎる関係性に萌える『オタシェア!』
文/ひらりさ
オタク。それは趣味を人生の生きがいとし、病めるときも健やかなるときも「萌え」を語りたくてたまらない生き物。SNSの発達で24時間いつでも萌え語りをできるようになったけれど、やっぱり趣味を理解しあえる同士と「オフ会」をする快楽にはかなわない。いっそオタク友達といっしょに暮らせたら、毎日がオフ会みたいだし、同人誌も交換しあえるし、最高すぎるのに……。
友人・さよりさんとのルームシェアの様子を、オタクならではの葛藤や楽しさをふんだんに盛り込みながら描いています。
元々さよりがルームシェアしていた友人が引っ越したのをきっかけに、さより宅に転がり込んだタッキー(小針さん)。二人が知り合ってから一緒に暮らし始めるまでの期間はたった5ヶ月で、しかも出会いはインターネットです。そのうえ、さよりのメインジャンルはBLではなく「ロリものエロゲ+怪談+児童文学」……と、周囲にも「大丈夫なのそれ!?」と驚かれる始末です。
タッキー自身も「ズボラすぎて愛想つかされるかも……」と不安に思っていたルームシェアでしたが、一緒に暮らしてみればとっても快適。「実家から大事な荷物(殿堂入りショタコン同人誌)を持ってき忘れた!!」などのルームシェアあるあるハプニング(?)もありながらも、おおむねハッピーにすすみます。
そう、オタク同士で暮らすと、良いことがめちゃくちゃあるんです。
・深夜に唐突に萌え語りしたくなったときに聞いてもらえる
・自分の蔵書と相手の蔵書をいつでも読みあえる
・仕事帰りに一緒に本屋に立ち寄って本をおすすめしあえる
・原稿中にひとりごとを言ってしまっても、合いの手が返ってくる
・コミケの申し込み(意外と記入漏れしやすい)を間違えなくなる
・修羅場に原稿を手伝ってもらえる
・コミケ当日の戦利品を一緒に自宅に送れる(送料折半)
・お互いが手に入れた戦利品を一緒に楽しめる
・趣味に金をつぎこむのに夢中で、ボロボロのパンツを履いていると「さすがにやばいよ」と言ってもらえる
とはいえ、決して「オタク友達との暮らしは最高!」だけを描いているわけではないのも『オタシェア!』の魅力。
オタクにとって趣味は人生の大事な一部ではあり、その世界観を共有できる友人は貴重なソウルメイトだけれど、やはりルームシェアをするとなると、人生全体や生活全体に対する価値観のズレも出てきます。
家事の分担がうまくいかなくてさよりが体調を崩し、タッキーにとっての「家事の概念」がだいぶ甘いことが発覚したり、自分ばかりが負担をかけていることを気に病んだタッキーが相談せずに家出したり……。人と暮らすとなれば避けては通れないアレコレも、きっちり発生しています。
それでも、同じオタクといえど、生まれも育ちもジャンルも違うふたりが、少しずつわかりあい、そして適度に「わかりあえない」部分を認めながら暮らしていくさまを見ていると、「ルームシェアっていいなあ」「っていうか、タッキーとさよりを見守っているこの気持ち、萌えなのでは……?」と気づくのです。オタク女の二人暮らしは、異文化コミュニケーションであり、最高の百合でもあるのでした。
BLに萌える人も、ロリに萌える人も、そして百合に萌える人も、すべてのオタクにささげたい実録エッセイです。