愛おしくって憎らしい「殺伐百合」の小説5作品／pixiv小説選集

紫乃の双子の妹・紅乃は、二年前に交通事故で死んで以来、鏡の向こうの世界で暮らしている。どうやら紅乃の世界では、姉の紫乃が死んだことになっているようだ。性格は正反対だが見た目はそっくりの紅乃は向こうの世界で似たような生活を送り、紫乃が鏡を覗けば決まって紅乃もそこに居る。元々反りの合わなかった二人は、顔を合わせると喧嘩ばかりしていた。そんな中、紫乃は文芸部の後輩に突然告白され、このことが二人の関係に大きな波乱を呼ぶことになる。

SF的な発想が光る殺伐百合。愛憎渦巻く鏡写しの姉妹関係に注目です。

中高一貫の歌園女学院は、名家資産家の令嬢が集まるお嬢様学校だ。そんな歌園女学院には、旧華族の出身で輝くような美貌の持ち主である美白沢祥恵と、妾腹の子でいつも陰鬱な雰囲気を発する黒葛川依子という対照的な二人の女学生がいた。二人は積極的に交わることはないが、誰とでも分け隔てなく話しかける祥恵は、依子にも何度か声をかけていた。それから10年後。二人は同窓会で再会することになるのだが……。

青春時代のひりつくような羨望が絶望に変わる瞬間を上手く描いた作品でした。

親の勧めでボクシングをはじめた鷹野瞳は、才能はあるもののボクシング自体にそれほど楽しみを見出しているわけではなかった。しかし、女子ボクシング部のある高校に進学して出会った転校生の先輩・獅童玲央との出会いをきっかけに態度を改めることになる。獅童はフットワークもパンチ力も段違いに鋭く、何より殺気立ったその目が鷹野の闘争心をに火をつけた。ところが獅童は、スカウトされて上京した後にファイトスタイルを変えてしまい、鷹野はそれにがっかりしてしまう。

憧憬が失望に変わる瞬間を丁寧に描写した殺伐百合です。

姉はずっと“あの人”に憧れていた。絵を描くことへの情熱を燃やし、不断の努力を続けてきた姉。それとは対照的に、一切努力をしないくせにいつも称賛される“あの人”。二人は良きライバルだったけれど、ある日“あの人”は階段で足を滑らせて死んでしまった。そして姉も、“あの人”を追うようにして……。

才能への憧憬にはいつも影がつきまとうもの。優しくも悲しみに溢れた物語でした。

殺し屋稼業の天星那由多（ナユタ）は、仕事で殺し損ねた少女に「彼方（カナタ）」という名前を与えた。家事が絶望的にできないナユタの代わりにカナタは料理などをこなし、二人は家族同然の暮らしをすることに。殺し屋としての技術を徹底的にカナタに仕込むナユタだが、現場で手を下すのはいつもナユタだった。そんな折、殺し屋の仕事の途中で、カナタの本当の名前と出自が判明する。

殺意、裏切り、そして愛ーー激しい感情が目まぐるしく交錯するTHE・殺伐百合。必読です。