一発勝負のアナログを制するコツは潔く捨てること?「コピックアワード2021」受賞者梅桜インタビュー
構成/原田イチボ@HEW
多忙な育児の合間を縫って制作した
── まずは受賞おめでとうございます。受賞した感想は、どんなものですか?
── 梅桜さんはお子さんがいらっしゃると聞きました。となると、作業時間の確保などは結構大変だったのでは……。
── お忙しい中でも少しずつ絵を描く生活なのでしょうか?
── どこかのタイミングで、お子さんたちは「うちの母親、めちゃくちゃ絵が上手い!」と気づくんでしょうね。
やり直しがしやすいように「難しいところを先に」
── さきほど、受賞作の制作期間は3週間とおっしゃっていました。工程ごとに分けると、どんな作業スケジュールだったのでしょうか? まずラフに何日とか……。
── コピック公式YouTubeチャンネルで公開中の梅桜さんのメイキング動画を拝見しました。描くスピードがとても速いので、描く前にがっちりイメージを固めて、それに沿って作業していく方だと思っていました。
── 最初にキーカラーを何色か決めるようなこともありませんか?
── コピックでイラストを描くとき、試し書き用の紙を別に用意して、グラデーションの具合などをこまめにチェックするイラストレーターさんもいます。
── 塗りで失敗したから描き直しといっても、線画までは終わっているんですよね?
── とはいえ、「イチから描き直し」というのは、かなり大きな決断のように感じます。そもそも作業スピードが速いのでしょうか?
── たとえば今回の受賞作ですと、好きに時間を使えるとなったら、どのくらいの日数で完成させられるものなんですか?
── 3日……! それだけのスピードだったら、たしかに「やり直したほうが速い」という判断になりそうです。
グラデは同系色でなく、少し違う色を混ぜてみる
── 「失敗した!」というとき、どんなふうにリカバリしていますか?
── 受賞作はコピックをだいたい何本くらい使いましたか?
── それだけの色を使いつつも、全体にまとまりを生むコツは何でしょうか?
── どうすれば色選びのセンスを伸ばすことができますか?
「この色とこの色が合う」というのは経験で得られる知識なので、とにかく試すしかないと思います。だから新しいコピックを買ったときは、これまでの手持ちのコピックとひたすら合わせてみます。私が持っているコピックは150本くらいで、「思ったより少ない」と言われることもありますが、逆に言えばその150色のことはだいたい色の相性など使い方がわかっていると思います。
── コピックの魅力のひとつは、グラデーションです。グラデーションのコツはありますか?
── なるほど。梅桜さんのイラストを拡大して分析してみます!
光を表現するために、勇気を出して濃い色を塗る
── 受賞作は、どんなふうに生まれたのでしょうか?
── 丁寧な描写からお魚への愛が伝わってきます。
イラストに描いてあるのは全部実在する魚で、実際に私が飼っていた魚も盛り込んでいます。ベタやグッピー、グラミーなど。中でもベタが大好きでよく描きます。ベタっていうのは、女の子の近くにいる大きくてヒラヒラした赤と青の魚です。
── 受賞作でこだわったポイントを教えてください。
── たしかに光の表現にこだわりを感じます! 水中、しかもそこに光が差し込んでいる様子というのは、かなり難易度が高そうですが……。
── 女の子をモチーフにすることが多いですか?
── 女の子をよく描くイラストレーターさんは、瞳の表現にこだわっている印象です。
── 梅桜さんは受賞作のようなカラフルなイラストと、色味を絞ったイラストの両方をpixivに投稿されていますね。
デジタル作画は「こんなに描き直せるんだ!?」
── お絵描き歴を教えてください。
── コピック以外で使う画材はありますか?
── 紙選びにこだわりはありますか?
── デジタルに挑戦したことはありますか?
── それだけコピックで描けるのに、イチからデジタルの勉強を始めるモチベーションとは……?
無理して練習しない。心折れる前に描くのを止める
── すごく素朴な質問ですが、どうすれば絵が上手くなると思いますか?
でも、描きたくなって苦手だけど挑戦してみようかなって思ったときは、チャレンジしたらいいと思います。
── 梅桜さんは今までどんな練習をしてきましたか?
── 絵を描いていて心が折れそうになった瞬間はありませんか?
── 梅桜さんは無理せず描き続けた結果、お絵描き歴は25年に及び、コンテストでも受賞したんですもんね。「続けること」について考えさせられます。最後に、今後挑戦したいことを教えてください。
人工物をモチーフにした絵に挑戦したいです。今まで植物やお魚はたくさん描いてきましたが、無機物というか、カクカクしたものは好きなのですが描くのが苦手なんですよね……。今後はその分野も伸ばしていけたらと思います。ほかには、さらに多くの方々に私のイラストを見ていただきたいです。もしオファーがあるなら商業のお仕事にもチャレンジしたいですし、自分のイラストをまとめた本も作ってみたいですね。