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インタビュー
2021.11.26

一発勝負のアナログを制するコツは潔く捨てること?「コピックアワード2021」受賞者梅桜インタビュー

構成/原田イチボ@HEW

コピック公式作品コンテスト「コピックアワード2021」でpixiv賞を受賞したのは、梅桜さんによるイラスト『暖かい水の中』でした。なんとpixivの選考スタッフたちは満場一致で梅桜さんの作品を選んだそう。審査員コメントには、「作品の中の要素や利用されているカラーが多く、構成のバランスが難しい中、丁寧に描写されています」とあります。

暖かい水の中

by 梅桜

コピックを使ったイラスト制作は、なんといっても一発描きの世界です。作業前に决めておくことや自然に見えるリカバリの方法は? 梅桜さんにインタビューしました。

多忙な育児の合間を縫って制作した

── まずは受賞おめでとうございます。受賞した感想は、どんなものですか?

飛び上がって喜びました! まず夫に報告したら、夫も喜んでくれて……。募集要項やスケジュールなどを調べるのがすごく苦手なので、こういったコンテストに応募した経験自体が全くありませんでした。「『コピックアワード』っていうのがあるんだよ」と教えてくれた友達には感謝しています。

── 梅桜さんはお子さんがいらっしゃると聞きました。となると、作業時間の確保などは結構大変だったのでは……。

上の子が3歳、下の子が0歳なので、細切れに作業していました。子どもがおもちゃで遊んでるときや、寝ている間にちょっとずつ進めていく感じですね。制作には3週間ほどかかりました。

── お忙しい中でも少しずつ絵を描く生活なのでしょうか?

絵を描くのが息抜きになっているので、1日30分程度でも何かしら描いています。下書きは1日で終えて、あとは色塗りの日々です。色塗りが一番楽しいので。

── どこかのタイミングで、お子さんたちは「うちの母親、めちゃくちゃ絵が上手い!」と気づくんでしょうね。

どうなんでしょうね?(笑) 今は子どもに頼まれてアンパンマンを描いたりしています。子どもって同じものを何回も描いてほしがるので、一度アンパンマンを描いたら、「また新しいアンパンマン描いて」とずっと同じキャラを描かされるんですよ。上の子はお絵描きに興味があるみたいで、コピックを奪われてポンポンポンとやられて、「ペン先が……!」となったりしています(笑)。

やり直しがしやすいように「難しいところを先に」

── さきほど、受賞作の制作期間は3週間とおっしゃっていました。工程ごとに分けると、どんな作業スケジュールだったのでしょうか? まずラフに何日とか……。

私、基本的にきっちりラフとか下絵を描かないんですよ。さすがに人物だけは一発描きできないので下書きをしっかりしますが、残りの背景やお魚は下書きなしのいきなり線画です。線画のとき、ペンではなく色鉛筆を使う派なので、あまり描き込むと手で擦れて汚くなっちゃうんですよね。あと、その場のノリでいろいろ決めていくほうが性に合っています。

── コピック公式YouTubeチャンネルで公開中の梅桜さんのメイキング動画を拝見しました。描くスピードがとても速いので、描く前にがっちりイメージを固めて、それに沿って作業していく方だと思っていました。

いや、実際は全然何も考えていないタイプです(笑)。「この色、いいんじゃない?」でどんどん塗っちゃいます。

── 最初にキーカラーを何色か決めるようなこともありませんか?

ありませんね……。最初は赤メインのつもりだったのに、実際は違う色になったりということが多いです。受賞作も本当は髪の毛をもっと白っぽい色で塗る予定だったんですが、いざ塗ってみると目立たないように感じたので、急きょ黒にしました。

── コピックでイラストを描くとき、試し書き用の紙を別に用意して、グラデーションの具合などをこまめにチェックするイラストレーターさんもいます。

それもやっていないんですよね……。性格上、試し書きが面倒くさくて仕方ない(笑)。だから正直、失敗することも多いです。受賞作も3、4枚は描き直しています。

── 塗りで失敗したから描き直しといっても、線画までは終わっているんですよね?

あまり厳密に「線画を全部済ませてから着色」という流れをとっているわけではありません。失敗しそうなところは優先して進めるようにしています。他の部分はほとんど真っ白だけど、人物は失敗しがちだから線画が終わった時点でいったん塗る……みたいな感じですね。完成間近でやり直しになるよりは、一部描いたところでやり直しになるほうがダメージは少なく済みますよね。だから、「難しいところを先に」を意識しています。

受賞作の制作過程。主線が終わってないところもありますが色塗りまで済んでいるところもあります。

── とはいえ、「イチから描き直し」というのは、かなり大きな決断のように感じます。そもそも作業スピードが速いのでしょうか?

たしかにコピック仲間からも「描くのが速い」とはよく言われます。

── たとえば今回の受賞作ですと、好きに時間を使えるとなったら、どのくらいの日数で完成させられるものなんですか?

3日くらいですかね。集中していると6時間ぶっ通しで描いたりしますし、子どもがいない頃は1日で仕上げることもありました。

── 3日……! それだけのスピードだったら、たしかに「やり直したほうが速い」という判断になりそうです。

もちろんリカバリできないか一度は試してみますが、それでダメだったら潔く諦めます。これは微妙だなと思いながら描き続けても良い作品になりませんし、悩み続けるぐらいなら描き直しちゃおって思っちゃいます。

グラデは同系色でなく、少し違う色を混ぜてみる

── 「失敗した!」というとき、どんなふうにリカバリしていますか?

薄い色の箇所だったら濃く塗ってごまかすし、濃い色の箇所だったら、もっと濃くしてごまかします。あと私はよくインクをうっかり飛び散らせてしまうんですが、たとえば受賞作だと、飛ばした先にお魚を配置したりしています。

── 受賞作はコピックをだいたい何本くらい使いましたか?

3、40本です。

── それだけの色を使いつつも、全体にまとまりを生むコツは何でしょうか?

こまめに遠くから見るようにしています。やっぱりテーブルの上だけで作業していると、どうしても視野が狭くなっちゃうんですよね。イラストをちょっと離して見るようにすると、「このへんに赤を足したほうがいいな」といったことに気づきやすくなります。

受賞作の制作過程。こまめに全体を見てバランスをとるそうです。

── どうすれば色選びのセンスを伸ばすことができますか?

「この色とこの色が合う」というのは経験で得られる知識なので、とにかく試すしかないと思います。だから新しいコピックを買ったときは、これまでの手持ちのコピックとひたすら合わせてみます。私が持っているコピックは150本くらいで、「思ったより少ない」と言われることもありますが、逆に言えばその150色のことはだいたい色の相性など使い方がわかっていると思います。

梅桜さんが所持しているコピック

── コピックの魅力のひとつは、グラデーションです。グラデーションのコツはありますか?

同系色でグラデを作ろうとするよりは、少し違う色を混ぜたほうが見栄えがよくなる気がします。赤系と赤系、青系と青系みたいに色を重ねるよりは、青と紫、赤と灰色など使い分けると一気に雰囲気が変わります。

── なるほど。梅桜さんのイラストを拡大して分析してみます!

光を表現するために、勇気を出して濃い色を塗る

── 受賞作は、どんなふうに生まれたのでしょうか?

お魚が好きなので、自分の得意ジャンルを思い切り描きました。

カラフルな世界

by 梅桜

── 丁寧な描写からお魚への愛が伝わってきます。

イラストに描いてあるのは全部実在する魚で、実際に私が飼っていた魚も盛り込んでいます。ベタやグッピー、グラミーなど。中でもベタが大好きでよく描きます。ベタっていうのは、女の子の近くにいる大きくてヒラヒラした赤と青の魚です。

── 受賞作でこだわったポイントを教えてください。

お魚一匹一匹にいろいろな色を使っているところと、女の子の肌などの光の表現を見てもらえるとうれしいです。

── たしかに光の表現にこだわりを感じます! 水中、しかもそこに光が差し込んでいる様子というのは、かなり難易度が高そうですが……。

私もまだ勉強中ですが、光の表現は、陰と陽の強弱をはっきりつけることが大事だと感じています。なので勇気を持って(笑)、濃い色を使っています。

── 女の子をモチーフにすることが多いですか?

そうですね。昔は男の子もよく描いていましたが、今は女の子ばかりです。女の子、魚、和風の3つがよく描くモチーフです

✿

by 梅桜

── 女の子をよく描くイラストレーターさんは、瞳の表現にこだわっている印象です。

コピックでも瞳を宝石みたいに塗っている方が多いですよね。私は瞳より髪の毛に力をいれています。描きたい線を納得いくまで追求しています。あとは単色で終わらせず、明るいところは明るいグラデ、暗いところも暗いグラデで塗っています。

── 梅桜さんは受賞作のようなカラフルなイラストと、色味を絞ったイラストの両方をpixivに投稿されていますね。

「コピックアワード」では少しでも目に留まりやすいようにカラフルな作品を描きましたが、普段は色味を絞った描き方をするほうが多いです。でもカラフルな絵を描くのが嫌いなわけではなくて、人物をメインで見せるときは色味をまとめて、他のモチーフも盛り込むときは、いろんな色を使うというふうに分けています。

青と赤をメインにした作品。pixivにも色を絞った作品が多数投稿されています。

デジタル作画は「こんなに描き直せるんだ!?」

── お絵描き歴を教えてください。

両親いわく私は2歳から絵を描いていたそうです。だからお絵描き歴は25年ですかね。ずっとアナログで、高校生のときに友達から借りてコピックに出会いました。その子たちに「こういうグラデってどうやるの?」といろいろ質問させてもらったおかげで、コピックにどんどんハマっていきました。あの子たちがいなかったら今ごろコピックでお絵描きをしていないと思います。

── コピック以外で使う画材はありますか?

シグマの黒いボールペンと色鉛筆、あとは線画用のシャーペンです。シャーペンで描いた後、消しゴムでポンポンとして線を薄くしています。色鉛筆は主線を濃くするためのもので、それ以外の塗りにはあまり使いません。塗りはあくまでコピックですね。

── 紙選びにこだわりはありますか?

画用紙のようなザラッとした描き心地は個人的に好みではないのと、スキャンしたときにいかにもな紙っぽさが出てしまうので、つるつるした紙を選んでいます。あとはグラデの発色がキレイなので、最近はコピックが出している専用紙も気に入っています。

── デジタルに挑戦したことはありますか?

2年前にiPadを買ってから、デジタルの練習をしています。そもそも機械が苦手なのもあって、デジタル作画のレベルはゼロに等しいです。

── それだけコピックで描けるのに、イチからデジタルの勉強を始めるモチベーションとは……?

やっぱり商業の仕事に挑戦するとなると、デジタルができるに越したことはないのかなと考えています。それと単純にコピックだとできない表現ができるのが楽しいですよね。アニメみたいなパキッとした塗り方とか。今までずっとコピックで絵を描いてきたので、デジタルはやり直しがきくのが新鮮です。「こんなに描き直せるんだ!?」と感動しています(笑)。

無理して練習しない。心折れる前に描くのを止める

── すごく素朴な質問ですが、どうすれば絵が上手くなると思いますか?

自分の描きたいものを無理せず描くことが大事だと思います。「苦手だし、正直そんなに興味もないけど、こういうのを描けるようにならなきゃ」と、いやいや練習したところで上達するとは限りません。それよりは自分の好きなものをたくさん描いたほうが結果的にレベルアップに繋がるんじゃないかな。無理に描いても焦るだけなので、特に描きたくないものは描かなくていいと思います。

でも、描きたくなって苦手だけど挑戦してみようかなって思ったときは、チャレンジしたらいいと思います。

── 梅桜さんは今までどんな練習をしてきましたか?

「描きたいとき、描きたいものを描く」なので、練習らしい練習は全然していないかもしれません。でも描くときは、キャラクターの顔だけ描いて終わりではなく、背景まで細かく描き込むようなイラストを描いていました。自分がそっちのほうが楽しいから描き込んでいるだけですが、結果的に上達できた部分はあると思います。昔から「やりたくないことは絶対やらない、やりたいことはとことんやりたい」という性格なんです(笑)。

── 絵を描いていて心が折れそうになった瞬間はありませんか?

ありませんね。焦っても良いものはできないし、心が折れる前に描くのを止めてしまいます。また描きたくなったら描けばいいや、って。そこの切り替えが大切だと思います。本当に無理しないほうがいいと思います!

── 梅桜さんは無理せず描き続けた結果、お絵描き歴は25年に及び、コンテストでも受賞したんですもんね。「続けること」について考えさせられます。最後に、今後挑戦したいことを教えてください。

人工物をモチーフにした絵に挑戦したいです。今まで植物やお魚はたくさん描いてきましたが、無機物というか、カクカクしたものは好きなのですが描くのが苦手なんですよね……。今後はその分野も伸ばしていけたらと思います。ほかには、さらに多くの方々に私のイラストを見ていただきたいです。もしオファーがあるなら商業のお仕事にもチャレンジしたいですし、自分のイラストをまとめた本も作ってみたいですね。

「コピックアワード2021」他の受賞作品はこちら!

第4回目となったコピックアワード2021には、昨年の応募数を上回る5000点以上もの素晴らしい作品が寄せられました。


受賞作はどれも技術とセンスが光る素晴らしい作品ばかり!
ぜひチェックしてみてください。

>>コピックアワード2021結果発表<<

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