男女ともに人気なのは「百合」?pixivの2021年を振り返る【小説】
構成/原田イチボ@HEW
2021年のpixivでは、あんなジャンルやこんなジャンルが流行したり、あんな新機能がリリースされたり、こんなコンテストが反響を招いたり……。今年はpixiv的にどんな1年だったのでしょうか?
小説チームの目線から2021年の重大ニュースを振り返ります。
ニュース①女性部門は、2020年の人気ジャンルが未だ強し!
女性ユーザーに人気だったタグの上半期トップスリーは、「呪術廻戦」、「ツイステッドワンダーランド」、「鬼滅の刃」。下半期トップスリーは、「東京卍リベンジャーズ」、「呪術廻戦」、「ツイステッドワンダーランド」でした。
上期下期ともにトップスリーに入った「ツイステッドワンダーランド」は2020年3月にリリースされて以降、継続的な人気を保っています。2020年は小説のマンスリーランキングに98作品がずらりとランクインしたほど。今年も2020年に続き、まだまだ強い。スマートフォンアプリはイベントなどの新規供給が続くため、一度話題になると人気が安定する傾向があります。
下半期で人気が爆発した「東京卍リベンジャーズ」はマンガ連載のみの時期は月間数百件程度の投稿数だったのが、4月にアニメが放送開始してからは投稿数が2.5倍になり、1カ月ごとに倍になっていくようなペースで急増していきました。9月にアニメが放送終了してからは少し落ち着きましたが、続編にあたる「聖夜決戦編」の制作が決定しているだけに今後も要チェックなジャンルです。
「呪術廻戦」も3月にアニメが放送終了してからは落ち着いていましたが、12月24日に映画『劇場版 呪術廻戦 0』が公開されたことにより、また増加傾向にあります。2022年はまた「呪術廻戦」がトレンドになる予感です。
「鬼滅の刃」も新作アニメ『遊郭編』が12月からスタートし、伸び始めています。ちなみにテレビアニメ版『無限列車編』の終盤も煉獄さん効果で「鬼滅の刃」タグが盛り上がりました。
ニュース②男性部門は、ウマ娘が大ブレイク!
上半期も下半期も「ウマ娘」、「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。」がワンツーフィニッシュ。そこに上半期は「ポケットモンスター」、下半期は「東方Project」と続きました。「ウマ娘」は当初ひと月あたりの投稿数が2ケタという小規模なジャンルでしたが、2月下旬のアプリリリースから人気が爆発。そこから数か月で他ジャンルのおよそ4倍という規模にまで成長し、一気に上半期トップに躍り出ました。そのまま圧倒的な勢いを維持しています。
男性ユーザーの場合、イラストだと2018年の「クッパ姫」のような瞬間的な盛り上がりがいろいろありますが、小説はストーリーである以上、キャラクター同士の関係性やドラマ性がある原作が求められます。「ウマ娘」はアニメ、ゲーム、モデルとなった名馬の歴史などその点をばっちり満たしていることが人気に繋がったようです。
また、小説の男性ユーザーは、ジャンルごとにプラットフォームを使い分ける傾向があるようです。
ジャンルの初期段階で、ユーザーの方々に「このジャンルを投稿・閲覧するならpixiv」というイメージを持ってもらうことが、pixivでの盛り上がりのカギとなりそうです。
ニュース③「地味だけど大事な機能」をテコ入れした2021年
小説チームが2017年に発足してから4年。今年は「地味に見えても小説投稿サイトとしてやりたいこと」にようやく着手できた年でした。
そのひとつが下書き機能です。これまでモバイルブラウザで下書きしたものはモバイルブラウザから、アプリで下書きしたものはアプリからしか編集できませんでしたが、3月のリニューアルによりパソコンからも下書きが可能となり、どのプラットフォームからでも同じ下書きが呼び出せるようになりました。
ほかにはウォッチリストに追加したシリーズが更新されたときの通知機能も実装しました。
地味だけど大切な部分のフォローに力を入れた2021年を経て、2022年はアッと驚く新機能のリリースがあるかも!?
ニュース④海外ユーザー向けのローカライズ機能もリリース
2021年冬、小説ランキングにおいて、ランクインした作品を指定言語のものだけに絞り込んで表示できるようになりました。
pixivはサービス開始から14周年を迎え、いまやアクティブユーザーにおける海外ユーザー比率は約半数となり、海外からの投稿数は月間24万作品を超えます。小説ランキングに並ぶのが自分のわからない言語の作品ばかりだと、どうしても疎外感を覚えてしまいます。
さまざまな国で暮らすユーザーの皆さんにpixivをより身近に感じていただけるように、2022年以降は前出の絞り込みフィルターのようなローカライズ施策をさらに進めていくつもりです。
ニュース⑤コンテストと企画の開催数が過去最多を更新
2021年はpixivが主催するコンテストと企画を合わせた開催数が30件を超えて、過去最多を更新しました。前年の開催数16件から2倍に増えています。コンテストや企画などは、小説を初めて書く理由になりえます。デビューを目標とするようなプロ志望向けのコンテストはもちろん、ユーザーの方々に「書くことって楽しい」と感じてもらうきっかけを提供することも重視した1年でした。
小説を書くきっかけになってもらえたら……と実施しているのが、「執筆応援プロジェクト」です。「音」や「夜」、「謎」など定期的にテーマを変えて小説を募集しており、投稿した方には抽選でAmazonギフトコードなどの賞品がプレゼントされます。一切審査はありませんが、代わりに小説チームから感想が届くかもしれません。「『執筆応援プロジェクト』で初めての小説を書きました」という声もたくさん届いており、小説チームとしても手応えを感じている施策のひとつです。
「『外の人』に届けるために、『中の人』がまず読む」という考えのもと、ユーザーの方々が想像しているよりずっと小説チームは皆さんの投稿をチェックしています!
ニュース⑥「さなコン」に1000作品を超える応募!コンテストあれこれ
「日本SF作家クラブの小さな小説コンテスト」、略して「さなコン」に、1000作品を超える応募が寄せられました。「朝テレビのスイッチを入れると、ニュースキャスターが『おはようございます。世界の終わりまであと七日になりました』と言う」という書き出しの続きを短編小説に仕立てるというユニークなルールと、日本SF作家クラブから広くコメントが貰える座組が注目を集め、小説チームとしても「面白そうなフックさえあれば、SFという少しハードルが高めに感じられがちなジャンルの創作も盛り上げることができるんだ」という手応えを感じる出来事でした。
また、2021年10月~2022年1月16日まで作品を募集している「一迅社発!女性向け新マンガレーベル 異世界ファンタジーマンガ原作コンテスト」には、12月28日時点で2600作品を超える応募があります。もともとpixiv小説のオリジナルにおいて、「女性向けの異世界ファンタジー」は一大ジャンルです。しかも大賞はコミカライズや書籍化が決定するとあって力作が次々と届いており、pixiv史上最高の応募作品数を記録する可能性もありそうです。
「pixiv小説は百合に強い」というイメージ獲得に大きな役割を果たしてくれた「百合文芸小説コンテスト」も2022年3月6日まで作品を募集中。応募作品数が年々増加しているだけに、第4回にあたる今回もどれだけの盛り上がりになるか楽しみですね。
作品数とはまた異なる観点で、小説チームにとって印象的だったのが「KODAAMA!声の台本コンテスト」です。同コンテストでは、ショートボイスSNS「KODAAMA!」とタッグを組んで、音声クリエイターのための台本を募集しました。pixiv小説には、朗読向けの台本も数多く投稿されてきました。そんな需要と供給を可視化できた点で、意義を感じる施策でした。
ニュース⑦2020年開催の「ワンルームSSチャレンジ」が書籍化
「一部屋の中だけで完結する」オリジナル短編を募集した2020年開催の企画「執筆応援!ワンルームSSチャレンジ」の応募作が、2021年4月に『ワンルーム・ショートストーリー』としてPHP研究所で書籍化されました。
また、どうしてもコミカライズ企画は形になるまで時間がかかってしまうのですが、2020年に開催されたマンガ原作コンテスト「コミカライズ・パーティ」の受賞作品たちも2021年に入って少しずつ書籍化されています。2022年もpixivコンテスト発の書籍がいろいろ刊行されそうです。
ニュース⑧オリジナルが増加傾向! 人気ジャンルは「百合」
小説チームが発足してからオリジナル作品の投稿数が伸び続けています。コンテスト開催によってオリジナルを執筆する作家が集まったことが一因と考えられますが、類似の作品を表示するレコメンド機能に力を入れることでオリジナル作品の閲覧数が増えたことも理由のひとつかもしれません。
コンテストをきっかけに「初めて一次創作を投稿してみよう」という声もありました。
オリジナル小説だと、女性ユーザーは創作BL、ファンタジー、恋愛、男性ユーザーはファンタジーやフリー台本が人気のジャンルです。そして、男女両方のユーザーから熱く支持されているのが百合。百合やSFなど、「このジャンルはpixivが強い」という認知が広がりつつあるのを感じています。
挿絵やファンアートなど、小説に限定しない広がりを生み出せるのは、数ある小説投稿サイトの中でもpixivならでは。ほかにも、ファンコミュニティ『pixivFANBOX』やグッズ・同人誌の制作サービス『pixivFACTORY』、創作物の総合マーケット『BOOTH』といったサービスと連動できるので、やり方次第で楽しみはどこまでも広がります。
2022年もpixiv上で魅力的な創作がたくさん生まれますように!