マンガはバズっても売れないのか!? 12万RTした若林稔弥先生のチャレンジとは
さる2019年5月12日、pixivでも多くのファンを抱える『徒然チルドレン』(講談社)でおなじみの若林稔弥先生の新作『幸せカナコの殺し屋生活』(星海社)の単行本が発売されました。本作はTwitterに第1話が投稿されるや一気にバズった話題作ですが、単行本になるまでファンコミュニティ「pixivFANBOX」の運営を中心にさまざまな挑戦をされてきたとのこと。
前編となる今回は『幸せカナコの殺し屋生活』誕生までの裏側についてうかがってみました!

- 若林稔弥
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漫画家。代表作に『徒然チルドレン』(講談社)『僕はお姫様になれない』(アスキー・メディアワークス)『恋するみちるお嬢様』(スクウェア・エニックス)等がある。現在『幸せカナコの殺し屋生活』(星海社)が大好評連載中!
連載が終わって試行錯誤 FANBOXでネームを投稿!

──『カナコ』はpixivFANBOXが初出の作品だとうかがっています。

──こちらのFANBOXで全体公開されているネームですね。

その編集さんからは社会人ラブコメの群像劇を推されていたんですが「でも僕もう当分は恋愛を描きたくないなあ」と(笑)。試しにちょっと描いてみても、これ面白いのかな……自分が今やる必要あるのかな……とか、社会人が本当にやりたいことって恋愛なのかな……上司の頭カチ割りたいんじゃないのかな……とか考えちゃって。ひどいですよね(笑)。


殺し屋のマンガ自体は、それこそpixivにもたくさんあって、ちょっとダークな感じのオシャレなものが多い。でもこれは10代向けで、社会人向けではないから競合しないなとか。とか言いつつ結局、完全に自分の好みになったんですけど、楽しい方へ楽しい方へと考えていったら、自然に現在の形になっていきましたね。最終的に誰向けのマンガなのか、自分でもよくわかってないんですが(笑)。

そうですね。自分も、世の中には理不尽なことがいっぱいあるから、ネタには困らないなって思っていたんです。でも、あまりにもパターン化しすぎていて飽きられてしまうぞと。だから、主人公が成長していったり、人間関係が少しずつ変わっていくマンガにせざるを得ない。かといって、毎回ムカつくやつが出てきてスッキリ殺すのは一番受ける部分だから外せない。『徒然』のときとは別の難しさがあります。


『徒然』は出てくるキャラクターの関係性がある程度は決まっていて、SNSで連載したときの反応やRTの減衰率は安定していた。でも『カナコ』は変わっていくから、特に2話目3話目以降だと途中からは読みづらくて数字がガーンと減る。最初はビクビクしていたんですけど、もうこの作品はこうなんだとあきらめました。Twitterは新規のファンの獲得のために使い、FANBOXに読者を集めて熱いサポーターを育てる方針に切り替えました。
もちろん、ひたすら同じパターンなのに、ずっと同じくらいかそれ以上のすごい数字を叩き出している作品や作家さんもいる。それは単純にすごいと思うんです。自分はなかなかマネできない。どうやっているのか聞いてみたいくらいです。
『カナコ』は超バズったけど…… ひたすら挑戦は続く
──ちなみに最初にネームを描いたとき、ご自身でバズるって思いましたか?


まあ、だから1番いいのはお金になるかならないか、なのかな。だから同人誌も出すしLINEスタンプも出すしFANBOXもやってみる。『徒然』のときは連載が忙しすぎて何もできなかったから、次はいろいろやるぞって思っていたんですよね。だから『カナコ』では結構いろいろ挑戦できているなと思います。

実は英語版は最新話まで翻訳は終わっているんですけど、ダジャレ部分を英語に合わせて変えてもらっているので、僕が新しく動物を描きおろさないといけない(笑)。追いついていなくて、お待たせして申し訳ないんですが(※インタビューは2019年4月末時点のものです)。

