ネタがひらめかないとき、どうしたら?創作を助ける名曲のメソッド/カレー沢薫の創作相談

ネタをどうやって捻り出したらいいですか?
私もたまには長々講釈を垂れるのではなく、北方謙三先生が若者の悩みを「ソープへ行け」の一言で解決したように、「クスリをキメろ」の一言で終わらせる大御所ムーブをしたいところです。
しかし「クスリをやれば良いアイディアがひらめく」というのは都市伝説らしく、そんな状態で出てくるようなネタはどれも「俺はキマった状態でこれを書いている」以外のメッセージ性はないそうです。
何せキマっているので、そんなものでも「神降臨......!」と震えることができるそうなのですが、シラフに戻って見直したら酷すぎて「やっぱり真面目に考えないとダメだ」と再確認できるという意味では、クスリとクリエイターの相性は抜群だそうです。
ただしクスリと法律の相性は最悪なので、娑婆で創作活動をしたいならおすすめできま
せん。
よってもう1回、原作をキメ直すことをお勧めします。覚えるほど見た原作でも改めて読み返してみると「よく見たら、このコマとコマの間の余白に推しカプの結婚式が描いてあった」など、新しい発見という名の幻覚が見えてくるものです。
隙あらば推しカプの妄想をする
確かに、アゲハ蝶をイメソンにして推しカプ創作をしたことがない昭和のオタクはいないと言われていますし、仕事だろうが趣味だろうが創作に苦悩はつきものです。
しかし、苦悩はよくても「疲れ」は禁物であり、疲れというのは全ての意欲を奪うので、机の前で無理やりネタを出すという疲れる行為はお勧めしません。
そういう罰は迂闊にも作家という職業を選んだ奴だけが受ければいいのです。妄想ですら「あの壁の突起が眼球に突き刺さったらどうなるだろう」などのネガティブなことしか考えられない、という場合は、創作より先に休養をお勧めします。
楽しく推しカプの妄想をして、使えそうな妄想を創作のネタにしていくというサイクルを作れれば、楽しみながらこの世に推しカプ作品を増やしていけるのではないでしょうか。
妄想を手助けするメソッド
そこで利用したいのが「あの娘ぼくがロングシュート決めたらどんな顔するだろう」メソッドです。
よって後は、役者が演じる舞台やシチュエーションを用意することになります。
もし「あの娘」に与えたシチュエーションが「何の理由もなくキモオタデブな僕を好きになったら」だったら「てめえの脳内だけでやってろ、いや脳内でもやるな」という脳内治外法権すら脅かされない不興を買ってしまいます。
しかし「僕がロングシュートを決めたら」というエモいシチュを与えることで、一生忘れないタイトルになっている上に「一体どんな顔をするんや?」という内容への興味にもつながっているのです。
創作界に「セックスしないと出れない部屋」という、どんなカプでも輝かせる最高の舞台があるように、良い舞台が用意できれば役者も良い演技をすることができるのです。
つまり、机の前で生まれてきたことを後悔しながらネタを捻り出すのではなく、日常の些細なできごとから、推しカプ妄想というヘブン状態に入り、ついでに創作のネタにもしてしまうという楽しい創作活動で、世界をひっくり返していただければと思います。
感想は貪欲に求めよ
ちなみに商業作家でも、ネタがどんどん湧いて出る、という状態がないわけではなりません。
それは、クスリをやっているとき、そして「読者からの評判が良いとき」です。
逆に評判どころか感想の一つもなければ、やる気も発想もどんどん失われます。
よって作品を作ったら、できるだけ多くの人に見てもらえるよう宣伝し、貪欲に感想を求めていきましょう。
そういう姿勢を「下品」や「必死WW」などと笑う風潮もありますが、必死に書いたのなら必死に見てもらおうとするまでが創作です。
むしろ見てもらえなければ、必死に書いた意味すら感じられなくなり、やる気も消えてしまいます。
アップする際も見てもらえるようにタグやキャプチャを工夫し、SNSでの宣伝も忘れないようにしましょう。
それもただ、URLを貼るだけではなく、マンガなら一番エロいコマ、小説なら一番エロい行をスクショして貼るぐらい肉食系でいきましょう。
何回も宣伝ツイートして逆にウザがられないだろうかと思うかもしれませんが、ウザがるのは私のように1日48時間ずっとTwitterに張り付いている奴だけであり、そのほかの人はTwitterを見ている時間帯が限られていたりするので、朝昼晩宣伝ぐらいは余裕でありなのです。
どれだけ優れた教えでも布教をしなければ広まりません。
推しカプの尊さを記した経典を書いたなら、必ずそれを広める布教活動もセットで行いましょう。

カレー沢さんこんにちは。しがない字書きです。
ずっと読み専でしたが、いまいるジャンルで私の性癖をぶち抜く受けと出会い、pixivで検索したところ逆カプが多かったので「私が増やすしかない!」と使命感とともに創作を始めました。
相談したい内容は「ネタをどうやって捻り出すか」ということです。
ネタをひらめけば自動書記のように一気に書きあげることができるのですが、ひらめかないときは全然書けません。だったら書かなきゃいいという話なのですが、まだ逆カプが多いため筆を止めるわけにはいかないのです。
先生は商業で活躍されております。ひらめかないから書けないでは済まない世界だと思いますので、ネタをひらめかないときにどうしているのか教えてください。