松丸亮吾が謎解きを作成! 謎解きクリエイターとイラストレーター風間雷太が個展「Anneau」を作り上げるまで
イラストレーター・風間雷太さんの個展「Anneau(アノー)」が、東京・表参道にある「pixiv WAEN GALLERY」にて2024年10月23日(水)まで開催中。謎解きクリエイター・松丸亮吾さんとタッグを組み、松丸さんが作成した謎を解きながら、風間さんの絵を楽しむという展示になっています。
過去に例のないユニークな個展は、どのように作り上げられたのか、風間雷太さんと松丸亮吾さんのおふたりにお話を聞きました。
- 松丸亮吾(まつまる りょうご)
TV番組・イベント・舞台など、様々なメディアで一大ブームを巻き起こしている「謎解きクリエイター」。2019年に謎解き制作会社RIDDLER(株)を立ち上げ、現在に至るまで全国各所に謎解きを仕掛けている。
ヨーロッパで開催された脱出ゲームの世界大会「World Escape Room Championship 2023」に出場して優勝し、脱出ゲーム世界一の称号も獲得。「ポケモンとどこいく!?」(テレビ東京)、「土スタ」(NHK)、「おはスタ」(テレビ東京)、「今夜はナゾトレ」(フジテレビ)、「ニュー試」(NHK・Eテレ)にレギュラー出演するなど各方面で活躍中。
普通は嫌、まだ誰もやっていないことをやりたかった
── 謎解きとイラストを掛け合わせたユニークな展示は、どのように企画されたのでしょうか?
風間:私が「松丸くん、ぜひコラボして!」とわがままを言いました(笑)。もともと普通のことをやるのが嫌で、自分は、新しいこと、まだ誰もやっていないことをやってこそだなと思っているので、松丸くんの力を借りたいなと。
── お話を聞いて、松丸さんはどう思われましたか?
松丸:そうですね、僕は自分の会社で新しい謎解きを仕掛けることはあるんですけど、クリエイターとしての自分の幅を広げるためにも、新しいチャレンジをしたいと普段から思っています。そんな中で、急に雷太先生から「個展やるんだけど、謎解きをやりたくて」とお話をいただいて。
風間:「え?」って感じだよね(笑)。
松丸:いやいや、そんなことないですよ(笑)。「やりますか」とすぐに返事をしました。
風間:松丸くんがあまりにも快諾してくれたから、逆にこちらが「え?」となって。そのときから松丸くんの中ではいろんな構想がパパパッと浮かんでいるのかなとは思ってました。
松丸:雷太先生の絵には神秘的な世界観があって、僕が今までやったことがあることとは明らかに異なっていたんです。絵として完成されているから、むしろ謎解きでよりよくできることってあるのかな、謎が邪魔になっちゃわないかなという葛藤は少しあったんですけれども。
風間:ああ、最初に言ってくれてたね。
松丸:そうそう、個展に謎解きって、大丈夫かな、と。新しい挑戦だしやりたい!とすぐに思ったんですけど、同時に謎が邪魔にならないように頑張らなきゃなと思って、そこからはヒアリングを重ねましたね。
“謎解き”という体験を設計する
── 私も会場で実際に謎解きに挑戦しましたが、すごく楽しかったです。ちょっと切ないストーリー仕立てになっていますが、ストーリーはおふたりで考えられたんですか。
松丸:キャラクターやバックボーンは、雷太先生に決めていただきました。絵を描きながら思ったことや、大事にしたい部分もあるはずなので。
風間:白い森の白い館に住んでいる白い女の子というイメージは僕が決めて、そこからは松丸くんの方で調理してもらいました。
── そこまで細やかに考えるんですね。
松丸:僕が大事にしてるのが、どんな主人公でも、どんな人が謎解きに来ても、ストーリーが矛盾しないように、入り込めるようにというところです。男性女性のどちらが遊んだとしても矛盾がないかなども気をつけていますね。
松丸:ネタバレになってしまうので詳しくは言えないのですが、一問一問、答えが出るたびに、「そういうことか!」と、少女が抱えていたものがわかっていくようになっています。雷太先生の原案を、僕はある種の脚本にしたような感じですね。解く人の物語体験の順番を決めて、どうやったら感動のピークを最後にもっていけるか、そこまでに、じわじわと物語を理解していくフェーズ、プレイヤーが気づいてはっとするフェーズをいれこんでいくか。そういう体験設計をするのが大好きですし、今回はすごい化学反応が起こせたなと思っています。
風間:女の子の抱えていたものも、こちらが指定したわけではないのに、テーマに沿ったものにしてもらっていて、めちゃめちゃ感動しました。
松丸:謎解きも少女のバックボーンと関係のあるものを登場させています。単に謎を作るだけならもっと簡単なんですが、「少女はおそらくこういった記憶があるだろう」というもので作らないと意味がないなと思っていて。雷太先生の世界観を文章で説明するんじゃなくて、体験しながら感じ取れるような空気作りは挑戦でしたし、やっていて楽しかったです。
風間:流れを揉む時間は多少はあったんですが、松丸くんが謎を作るの自体はめちゃくちゃ早くてびっくりしました。1日2日ぐらいでバーっと、もうやりだしたら止まらないぐらいの勢いで(笑)。それに、途中で会場のレイアウトに変更が加わって、謎も調整する必要が出てきたんですが、サクッと切り替えてまた新しい謎を作れるのが、「これが謎解きクリエイターなんだな」と感嘆しました。
最後に待つ”驚き”から逆算されたもの
── ぼかした言い方しかできないのですが、最後の”アレ”にはびっくりしました。
松丸:物語の終盤にかけて、あっと驚く体験のフェーズがあり、謎を解いた人が見られる隠し要素があります。最先端の技術を使って、驚きの絵を作りたい、それを雷太先生の絵に仕掛けたいなと。非日常的な体験になりますし、なるべくじっくり絵に浸ってほしいと、最後の展開が決まっていった感じですね。
風間:意外と序盤にそれは決めてましたよね。これだけはやりたいよねと。
松丸:最初に決まりましたね。逆に言うと、クライマックスが先に決まっていたので、そこをどう感動的にするかが大変でした。あとは、ユーザーに体験してほしい仕掛けを指示文にしすぎないのも工夫したところですね。言葉にしちゃうのは簡単なんですが、物語としてのシズルがないし、いかに物語的に伝えるか、その間を矛盾なく埋めるのは一番こだわりました。
風間:まさにそのこだわりが伝わって、さっきも涙を流されていたお客様がいて、もうめちゃくちゃ伝わったんだなと思いました。
松丸:それは嬉しいです!
風間:最後に心に残るものを持って帰ってもらいたいと、ずっとふたりで話していたので、それが成功したんだなとグッときました。
展示仕様から額縁まで、風間さんこだわりのチョイス
── 展示されている絵は、特殊印刷がふんだんに盛り込まれていて、見応えがありました。印刷仕様は風間さんが決められたのでしょうか?
風間:そうですね、特殊印刷はFLATLABOさんにお願いしていて、できることをヒアリングしたうえで、どの作品にどの印刷技術が合うのか試行しながら、仕様を決めました。値が張る仕様もあって、ほぼ一発勝負のものもあるんですが、すごくいいものをあげてくださったので、FLATLABOさんに頼んで本当によかったなと思っています。
── 画集のインタビューで、「自分のオリジナル作品は家に飾りたい絵にしたい」とお話しされていましたが、まさにそれが叶っていると感じました。
── 額縁も凝っていますよね。
── イラストレーターとして長いキャリアがあって、ファン待望の初画集が刊行されたタイミングだったので、自分の絵だけを厳選して並べる個展もできたと思うんです。そこに謎解きという掛け合わせをしたのはなぜでしょうか?
風間:最初にも言いましたが、「普通があまり好きではない」のが一番ですかね。何か新しいことをやり切るぞとは思っていて、自分なりに松丸くんにお願いしてやってみました。前例がないからどうなるか正直怖い部分もありましたけど、結果泣いてくれる人もいるし、喜んでくれる人もいっぱいいたので、松丸くん成功したよ、ありがとう。
松丸:よかったです!
互いへのリスペクトで作り上げた展示
── 息ぴったりのおふたりですが、どうやって出会ったのでしょうか?
── 偶然の出会いだったんですね。
松丸:そうなんです。僕は雷太先生のことは知っていたんですけど、雷太先生の見た目は知らなくて、最初はボディビルの人が座ってるなって思っていて(笑)。すごい気さくなボディービルダーさんだなと思っていたら、「雷太先生」「雷太先生」と呼ばれてるのが聞こえて、調べたらやっぱりあの風間雷太さんだとわかって、強烈なインパクトでした。
── 風間さん、すごく鍛えてますもんね。
風間:策略というか、ギャップ萌えを狙ってね(笑)。そのときに松丸くんと大いに盛り上がり、また遊びましょうと、仲良くなりました。
松丸:そうですね、一緒にポケモンカードで遊んだり、プライベートで沖縄に行ったり。
── 仲良しのふたりが、展示で改めてタッグを組んだという。
風間:普段遊んでる松丸くんも、仕事モードだとまた違っていて、いつもあんなにおちゃらけているのにな〜と思ったんですよね。そのギャップを感じられるのも新鮮で、仕事の真面目な部分も知って、もっと好きになりました。
── お互いへのリスペクトあってこそなんですね。最後に来場される方へのメッセージをお願いします。
風間:会場で急いでWebサイトの謎を解いている人もいましたよ。
松丸:それは嬉しいな。
風間:私からはそうですね、準備でも紆余曲折いろいろありましたが、松丸くんと、展示されているタロットカードの監修をしてくれた村瀬歩さんの助けを借りて、最高の展示にできたと思っています。楽しんでもらえるよう、精一杯のおもてなしを用意したので、ぜひご来場ください。
10月23日(水)まで開催!風間雷太さん個展「Anneau」
pixivとツインプラネットが共同運営するギャラリー「pixiv WAEN GALLERY」にてイラストレーター・風間雷太さんの個展「Anneau(アノー)」が2024年10月23日(水)まで開催中です。
初の作品集発売に合わせて制作された表紙のキービジュアルのほか、個展のための描き下ろしイラスト5点と作品集に収録された約30点の作品を展示します。また、会場内では作品の展示と合わせ、謎解きクリエイター・松丸亮吾さんによる謎解きもお楽しみいただけます。ぜひ足をお運びください。
開催期間:2024年10月4日(金)〜10月23日(水)
入場無料
所在地:東京都渋谷区神宮前5-46-1 TWIN PLANET South BLDG. 1F
営業時間:12:00~19:00