元漫画家は意外に少ない? 分業制の魅力は?14名のWEBTOON作家のアンケートを一挙紹介!【ウェブトゥーン入門】
WEBTOON情報をお届けするシリーズ「ウェブトゥーン入門」。今回はWEBTOONクリエイターの気になる前職や、やりがいなどを、総勢14名にアンケート。それぞれの回答をご紹介します。分業制ならではの面白さや苦労、作家さんたちの意外な経歴など、興味深いデータとなっています。
その前に……ウェブトゥーンの制作工程ってどう分かれている?
フルカラーの作品が多いWEBTOONでは、アニメーション制作のように工程が細かく分かれていることが多いようです。アンケートに協力いただいたWEBTOON制作会社のLOCKER ROOMさんでは以下のように工程を分けています。
必ずしも全てのパートの担当者が分かれているわけではなく、線画担当者が下書きも担当するなど、作品に合わせて柔軟に参加メンバーを割り振っているそうです。
では、それぞれの担当パート別にアンケートを見てみましょう!
シナリオ担当
Q.前職やこれまでされてきたことは?
家電量販店店員。
分業制なので、自分のシナリオが別の方の絵でどう動くのか楽しみです。
シナリオ及びネームが作品の柱になる点。
分業制なので、自身の脚本を他人に預けられる人が向いているのではないでしょうか。
粟国翼 さん
Q.担当パートでのやりがいや面白さは?
原案がある場合は、原案に書かれていないことをすり合わせていく作業。
Q.難しいことや大変なことは?
同じ回答になりますが、原案がある場合に、原案に書かれていないことをすり合わせて行く作業は楽しくもあり難しくもありました。
Q.向いているのはどんな人? また、どんな人に挑戦してほしい?
認識をすり合わせる作業を苦とせず、決まっていない部分についても自分から提案できるコミュニケーション力のある人、直近で関わるパートの担当者および担当編集者とのコミュニケーションが円滑に行える人が向いていると思います。
ハーーナ殿下 さん
Q.前職やこれまでされてきたことは?
ライトノベル作家。
Q.難しいことや大変なことは?
創作の楽しさ。
Q.向いているのはどんな人? また、どんな人に挑戦してほしい?
漫画を沢山読める人。
Q.前職やこれまでされてきたことは?
柔道整復師、ゲームのシナリオ、ゲームのプランナー、音声ドラマの脚本。
字コンテは設計図です。ドラマやアニメでいうところの脚本です。文字のみで構成されているからこそ、感情や世界、あらゆるものが内包されているにも関わらず、それが「視えません」。 字コンテはその「視えない」ものを「視える」ようにするのが仕事です。識字率が99.8%を越えた日本で、誰でも書けて誰でも読める文字を仕事にするというのは、文字であらゆる想像を搔き立たせなければいけません。それが面白くて、何よりもやりがいのある仕事なのだと思います。
特にないです。すべて楽しいし、すべてが大変。 漫画のセリフは現実やドラマなどとは違い、絵を際立たせる為の漫画のかっこいいセリフとして加工がされていて、一種のデザインや歌詞に近いセンスが試されます。 写植やフォントや手描き文字やセリフの流れなど、気にするべき点はたくさんあります。
アニメの脚本家や構成作家さんは強いと思います。特にアニメの脚本家は、色彩やライティング、パース、カメラ位置なども理解しているはずですので。
参加して欲しいのは、「若い子・若い世代」です。 専門学校でWEBTOONコースなどが生まれて、そこからドンドン新しい作家が生まれてくれればいいなと思います。
閂ひよ さん
Q.前職やこれまでされてきたことは?
シナリオライター。
どうやってワクワクしてもらえるか考えるのは面白いです。
他の人が読んだときの捉え方を想像するのが難しいです。
アイデア豊かで膨らむそれを理性で丸め込める方が向いているかと思います。
ネーム担当
Q.前職やこれまでされてきたことは?
漫画家、ネーム作家。 「死んだ息子の遺品に息子の嫁が入っていた話」全2巻、ジャンプ+「U太郎侵略中!」など。 その他、横読み・縦読み漫画の構成・ネーム制作を担当。
Q.担当パートでのやりがいや面白さは?
プロット・シナリオを元に漫画をどのように演出するか、構図を練ることが難しくもあり面白さでもあります。また、自分の考えたネームが線画・着彩担当の方々のおかげで完成していくところもワクワク感があります。
Q.難しいことや大変なことは?
シナリオライターさんの意図を汲み取れているか、線画・着彩担当の方々にこちらが意図していることを伝えられているかを念頭において作業しています。
Q.向いているのはどんな人? また、どんな人に挑戦してほしい?
一つひとつのコマに意味があるよう演出や構図を考えられる人。ネームに限らず、一緒に制作するメンバーとスムーズな意思疎通ができる人がWEBTOONの制作スタッフに向いていると思います。
佐々田 さん
Q.前職やこれまでされてきたことは?
アニメーター、漫画アシスタント。
物語をどう面白く魅せるか考える事。
映画や漫画、沢山のインプットが必要。
漫画に限らず、あらゆるジャンルのエンターテイメントを楽しめ、それを生かせる人。
千代田 夜々 さん
Q.前職やこれまでされてきたことは?
アニメーターから飲食店接客まで色々。
場面を想像しながらどういう絵を入れこむか考えることが楽しいです。
想像上の生き物や、魔法の効果をどう視覚化するかという部分は悩みます。
あまり長時間悩まないタイプの方が向いてるのではないでしょうか? あとは描くべき絵に悩みすぎるタイプも、そこに時間を取られすぎてしまうかもしれないので難しいのかもしれません。
Q.前職やこれまでされてきたことは?
線画はイメージを整えてく作業になるので描き切るのが大変です。またネームで調子乗って大胆な構図ばかり描いてると後で痛い目みます...…。分業の場合、次の人へデータを渡すことを意識して描かないといけないのが難しいかもしれません。
筆が速い人。新しいことへ挑戦できる忍耐力のある人だと思います。
東去 宇人(Tokyo to) さん
Q.前職やこれまでされてきたことは?
普段は会社員として、広告企画制作に携わりながら、マンガのネーム制作を続けています。クライアント業務ではあるが、マンガ原作担当経験やストーリーコンテンツの制作実績も多数。
文字だけでしか存在していないものを、具体的にマンガ表現として定着させる役目を担えること。場合によっては、ストーリーやセリフにも手を入れられ、WEBTOON制作における重要なポジションだと実感できること。
スマホの縦長画面を効率的に活用しようとすると、一般的な横読みマンガと比べて、コマや吹き出しがだいぶ大きくなります。そのため、演出や配置を少し変えるだけで大きく印象が変わってしまうことがあり、細かな構図やレイアウトに神経を使います。
もっとこうした方が面白くなるのでは、というアイディアがたくさん出せる人。チームクリエイティブを楽しめる人。そして…日本のマンガ表現をグローバルにアピールしたいという熱意のある人と一緒にお仕事がしたい!
線画・着彩担当
十久 さん(担当:線画)
Q.前職やこれまでされてきたことは?
漫画家・システムエンジニア
Q.担当パートでのやりがいや面白さは?
自分の線画に綺麗な色がつくのでとても嬉しいです。モノクロ漫画に色をつけるだけとは違って、線画の段階から塗りが馴染むような手法を模索できたりと、カラーならではの楽しみがあります。
Q.難しいことや大変なことは?
アニメーターのような綺麗な線画かつ、迫力ある画にしないといけないところが技術が必要で大変でした。
Q.向いているのはどんな人? また、どんな人に挑戦してほしい?
純粋に絵が上手い人が参加するのが一番だと思います。ベタなどでごまかしが利かない上に1コマずつ読まれるので、自分のデッサンの下手さと向き合って成長したいと思える人が向いてると思います…!笑
牛尾カウ さん(担当:線画、モノクロ仕上げ作業、一部絵コンテ)
Q.担当パートでのやりがいや面白さは?
自分ひとりでは恐らく描くことはなかっただろうな、と感じるジャンルやシナリオ、キャラクターを描く機会に恵まれ、大変勉強にもなりますし、新鮮で楽しく制作させていただいてます。
原作やネームの方がイメージしている意図をどれだけ汲めるかということでしょうか。前のフローの方の意図を汲んだ上で、より良い、イメージ以上の作画になっているといいなと思って制作しています。
向いてるのは絵を描くことが好きで、求められているものを描ける人。私も日々勉強中ですが、作品によって作風の振り幅が大きかったりするので、絵柄や線の雰囲気を作品ごとに変えて対応できる引き出しの多さは強みになる気がします。
漫画を描くのは好きだけど苦手な作業がある人、逆に「ここはすごく得意!」がある人達が集まって、補い合いつつも高め合いながら良い作品を作っていきたいです。
田村 さん(担当:着彩)
Q.担当パートでのやりがいや面白さは?
色によって表現出来ることは沢山あるので、ストーリーを伝える一員としてお仕事が出来ることにやりがいを感じます!
WEBTOON塗りはアニメ塗りとも違うので、スクロールで見やすい情報量を考えるなど研究する必要があるなと思います!
WEBTOONが好きな方、イラストを描く時、色塗りの段階が1番好きと思う方は向いてるんじゃないかと思います!
企画発案は誰が? 1作品に何人が関わる? もっと知りたいWEBTOON制作
作業別に担当者が分かれているなかで、各工程の間をつなぐ編集者として活躍する、制作会社LOCKER ROOMの堀田さんに、WEBTOON制作の流れを教えていただきました。
── そもそも作品作りはどのように始まるのでしょうか?
堀田:案件によってまちまちで、たとえば「IP(既存の人気作品)を使って作りたい」という依頼がある場合もありますし、弊社の場合、自分たちで企画を考えることも多いです。
── 企画原作開発の担当者や、プロット、キャラクター設定を考える人はそれぞれ別なのでしょうか。
── 全ての工程で、携わる人数は何人ぐらいなのでしょうか。
堀田:編集者やアートディレクターも含めて平均では10人ぐらいの人が関わっていますが、これも案件によって変動します。週間連載に耐えうる体制をつくることが重要なので、線画、着彩などの作画工程をより細かく区切る必要があると関わる人数が増えていきます。
── 案件や作品によって、メンバー構成やそれぞれの担当範囲も変動があるんですね。
堀田:そうですね。例えば、「ネーム担当はこの作業まで、線画担当はこの作業まで絶対やってくださいね」とルール化して全部パキッと分けた方が、量産化には向いていると思うんです。
ただ、ネーム担当で演出が上手だけど下描きレベルの絵を描くのは難しい人と、演出はあまり得意ではないけど絵が上手でネームをうまく汲み取って線画ができる人が組んだら、いいチームになりますよね。
── 関わる人数も多くなりそうですが、作家さんとはどのようにやり取りをされているのでしょうか。
堀田:作品ごとにチームでチャットスペースを作って、そこに成果物を上げて、編集者だけでなく、他の作業工程の方もコメントできる仕組みで進めています。例えばネームの場合、「演出をもうちょっとこういう風にしたら」や、着彩の塗りの部分では「こういう光の入れ方にした方が良くなるかもしれない」など、チームとして「良い作品を作る」という目標に向かってお互いに意見しあいます。シナリオ作家さんの仕事は絵を描くことではありませんが、ひととおりの漫画経験がある方もいらっしゃいますし、読み手側の意見でも、大事な意見として受け止めています。
── 意見を出し合える環境づくりを進めているんですね。
堀田:弊社では、良い作品を作ることと同じくらい、良いチームを作ることを重要しています。作っていただいた作品があまり売れなかったとしても、解散するのではなく、作品に携わった経験やチームワークを次の作品に活かしていただき、長くご一緒したいという思いがあります。
── 特に人が足りていないところや、人材競争になっている部門もあるのでしょうか。
堀田:線画や着彩ですね。弊社はアクションものがメインなので、アクションシーンを描ける方を特に探しています。pixivやTwitterで漫画を描いている方を探してスカウトすることもあります。そのときは、「そもそもWebtoonとは何か?」というところから説明する形で打ち合わせしています。弊社のホームページでも絶賛大募集中です!
── チームとして制作が行えることがWEBTOONの魅力であることが分かりました。堀田さん、ありがとうございました!
クリエイター大募集中!
現在LOCKER ROOMさんでは、一緒にWEBTOONを作成してくれるクリエイターを募集しています。
【募集職種】
・イラストレーター(線画)
・ウェブトゥーンデザイナー(ネーム)
・ペインター(着彩)
・バックオフィス(採用メイン)
特にアートディレクター、イラストレーター(線画)、ペインター(着彩)は採用を拡大中とのこと。興味を持たれた方はぜひHPをご覧ください。
LOCKER ROOMの情報をもっと知りたい人は?
代表の朝岡さんのTwitter、LOCKER ROOMのnoteでも情報を発信しています。あわせてご覧ください。
投票で人気だった作品は連載化!? THE NEXT WEBTOON PROJECT Vol. 1 結果発表
2022年7月の「THE NEXT WEBTOON PROJECT Vol. 1 」では、ピクシブと株式会社LOCKER ROOMが共同制作した9作品のオリジナルWEBTOONをpixivコミック上で公開し、「続きが気になる」作品へ投票をしていただきました。
集計の結果、上位3作品は以下の結果となりました。
1位『欺きの王』
見事に1位を獲得した「欺きの王」は、pixivコミックにてフルカラー3話掲載予定です! たくさんのご投票ありがとうございました。
※投票は終了していますが、作品は引き続き読めますので、ぜひサイトをご覧ください。
鷹村アキラ さん
Q.前職やこれまでされてきたことは?
Q.担当パートでのやりがいや面白さは?
見せ場がきっちりと響いた時がとても嬉しいです。そこに至るまで丁寧に紡いできたシーンが報われるような気持ちになります。
Q.難しいことや大変なことは?
描写の選択です。尺は限られているので、その中で一番効果的に人物やストーリーを表現できる方法を探るのは、楽しいながらも難しい仕事だなと思います。
Q.向いているのはどんな人? また、どんな人に挑戦してほしい?
担当編集さんとコミュニケーションをしっかりとれる人、何度も自分の作品をリセットして、より良いものを目指していける気概のある人に向いているなと思います。 また、WEBTOONを普段からたくさん読んでいる人に参加して欲しいです。