ずんだもんの二次創作はなぜ盛ん? 公式に聞く「異色のガイドライン」と「クリエイターの面倒をなくす仕組み」の裏側

インタビュー/原田イチボ
東北ずん子やずんだもんといったキャラクターで知られる「東北ずん子・ずんだもんプロジェクト」は、2026年10月27日でプロジェクト開始から15周年を迎えます。ご当地キャラとして誕生した東北ずん子とずんだもんたちは、いまや東北地方に留まらず、全国的な人気を誇っています。その広がりを後押ししてきたのが、「東北の企業は自由に商用利用OK」や「二次創作を歓迎」といった大胆な施策。
近年は、キャラクター利用のガイドラインを公式に設ける事例は珍しくありませんが、プロジェクトが始動した当時、こうした取り組みはまだ先進的でした。なぜここまで「自由に使えるキャラクター」を目指したのか。「東北ずん子・ずんだもんプロジェクト」の仕掛け人であるSSS合同会社代表・小田恭央さんに、その狙いを聞きました。
二次創作から生まれる、幸福な循環

「東北ずん子・ずんだもんプロジェクト」オフィシャルサイト
── まず、あらためて「東北ずん子・ずんだもんプロジェクト」について教えてください。
小田:現在は、「東北ずん子・ずんだもんプロジェクト」、略して「ずんずんPJ」という名称ですが、もともとは「東北ずん子プロジェクト」として2011年に発足しました。東日本大震災の後、コンテンツ企業として東北地方を盛り上げることができないかと考えたのがきっかけです。だからこそ東北の企業は、申請なしでキャラクターを無償利用できる仕組みにしました。

非商用、もしくは東北企業であれば利用できるイラストのイメージ

左が当初から公開されていたずんだもん、右が追加された人型のずんだもん
── 東北の企業は無償利用OKとのことですが、プロジェクトとしての利益はどこで生み出しているのでしょうか?
小田:東北以外の企業がずん子やずんだもんを商用利用する際は、ライセンス料をいただいています。二次創作などを通じてファンの方が盛り上げてくださるおかげで、「ずん子やずんだもんを使いたい」という企業が増えていく。そうなると東北の企業が彼女たちを無償で利用できるメリットが大きくなっていくし、弊社もライセンス料が得られる……という循環を意識しています。

ずん子やずんだもんの他にも、たくさんのキャラクターが!
── 東北家のほかにも、四国めたんや関西しのび、中部つるぎなど、各地方に対応したキャラがいます。これらは会社主導で生まれたのでしょうか? それともプロジェクトが盛り上がるなかで、地元からのオファーがあったのでしょうか?
小田:すべて会社主導で生まれたキャラです。すでに各地にたくさんのご当地キャラがいるので、既存のキャラとバッティングしないように、あえて「四国」や「関西」のように広いエリアを設定しています。もともといるキャラクターさんとライバル関係になるのではなく、仲良く共生できるようにしました。
異色のガイドラインが生まれた背景

「ずんずんPJ」利用手引きより
── 「地元企業は自由に商用利用OK」のほか、ファンによる二次創作を歓迎しているのも「ずんずんPJ」の特徴です。そうした基本ルールをガイドラインで明文化するのは、当時かなり斬新な取り組みだったのではないでしょうか。
小田:最近だと、企業側がキャラクター利用のガイドラインを公開するのは珍しくありません。しかし10年以上前は、二次創作に対して、「グレーな存在として、公式にお目こぼししてもらっている」という見方が一般的でした。そんな時代に我々は「二次創作はホワイトですよ」と明言したので、だいぶ珍しがられましたね。しかも二次創作の自由度もかなり高く設定していたので……。
── どのような経緯でガイドラインを用意することに決めたのでしょうか?
小田:まず、いくら「地元企業は無償で商用利用OK」とアピールしても、「本当に大丈夫なの?」というご不安は残るだろうと考えました。なので、「本当に大丈夫です!」ときちんと伝えるためにも、明確なガイドラインが必要だと思いました。
もうひとつ、「ファンの方に安心して二次創作を楽しんでいただきたい」という思いもありました。特に東北ずん子は早い段階から音声合成ソフトの企画が動いていたので、皆さんが動画などを作りやすい環境をなるべく速やかに整えたかったんです。
── 小田さんは、SSS合同会社を設立する以前、ITコンサルティングやコンテンツ制作を手がけていたと伺いました。そこでの知見がガイドライン作りに生かされたのでしょうか?
小田:そうですね。それに加え、「東方Project」と「くまモン」はかなり研究させていただきました。「東方Project」は当時から細かなガイドラインが整備されていたわけではないのですが、生みの親であるクリエイターのZUNさんが二次創作に寛容だったことで、大きく広がっていきました。「ずんずんPJ」も、そのようにファンの方々との共創で成長していくコンテンツを目指したかったんです。
一方の「くまモン」は、利用のガイドラインが細かく明文化されている。その内容を参考にしつつ、逆にルールとしては緩めまくりました(笑)。

「ずんずんPJ」利用手引きより
── ルールを緩くした点で言うと、ガイドラインのQ&Aに「エッチなことに使っていいの?」「そういうのはこっそりやるものです」と記載され、セクシーな二次創作も実質的に許容する姿勢が注目されましたね。
小田:「一般の人に見つからないようにこっそり」という意識さえ持っていただければいいよ、と(笑)。キャラクターのイメージを著しく損なうようなものでなければ、とにかく利用の自由度を高めたかったんです。
── 企業のガイドラインとしては、かなり柔らかい文体ですが、そこもこだわりのひとつなんでしょうか?
小田:当初はいかにもガイドラインらしい堅い文体で作り始めたんですが、保険の契約書みたいな文章って、やっぱり読むの超辛いじゃないですか(笑)。そもそも読んでもらえなければ無意味なので、「読みやすく、時にジョークも混ぜながら」という方向に修正しました。
キャラのピンチに、ファンも立ち上がった
── 二次創作OKとなると、良くも悪くも予想外のムーブメントが起こり得ます。キャラのイメージを著しく損なうような作品には、どのように対応してきましたか?
小田:一般の方の目にも触れるような場で公開されている残虐な表現については、削除対応をとることもあります。また、政治や宗教が関係するものなどは、ガイドラインではっきりと禁止しています。「カエルのペペ事件」をご存知ですか?
── アメリカで生まれたカエルのマスコットですよね。ネット上で人種差別などと結びついたミームとして広がり、原作者が抗議する事態にもなりました。
小田:はい。過去に選挙があったとき、「ずんずんPJ」で配布している音声合成ソフトを利用した政治関連の動画が大量に作られてしまったことがありました。僕たちは、ずん子やずんだもんをカエルのペペにはしたくなかった。とはいえ、自分たちだけで動画の内容をひとつひとつチェックしていくのは現実的ではありません。
そこでユーザーの皆さんにも協力してもらおうと、ガイドラインに違反するコンテンツを通報していただく窓口を設けたところ、チェックにかかるコストを大幅に減らすことができました。そうするうちに「『ずんずんPJ』のキャラを政治利用してはいけない」というルールが周知され、最近ではそういった違反事例はほとんどなくなりました。
── 大勢のユーザーの協力を得られたというのは、それだけ「ずんずんPJ」が愛されている証拠でもあります。ユーザーの方々と良い関係を築くために、どんなことを意識していますか?
小田:繰り返しになりますが、とにかく自由度を高めることです。「ずんずんPJ」は、クリエイターの方々のための「良い遊び場」でありたいと思っていますし、そのためにも音声合成ソフトや3Dデータといった「おもちゃ」を次々と提供しています。
イラストでも動画でもゲームでもコスプレでも、自分が二次創作をしたことのあるキャラってやっぱり愛着が湧くと思います。だからこそ、ずん子たちがピンチのときに「守りたい」と感じてくださった方々が多かったのかもしれません。
「面倒くさいこと」は公式が肩代わりする
── クリエイターの方々のための「良い遊び場」とは素敵な言葉ですね。ぜひ詳しく教えてください。
小田:冒頭で、「ライセンス料が収益になっている」とお話しましたが、ライセンス料が入ると何がうれしいかって、新しい「おもちゃ」を作れるからなんですよ! 音声合成ソフトもそうですし、VRChat向けの3Dモデルの展開もかなり早い時期に行ったと自負しています。いろいろな技術をいち早く導入する会社なので、新しいもの好きな方や研究者の方などにも注目していただけていますね。


公式サイトで配布されている素材のイメージ
小田:良い遊び場であるためには、おもちゃをそろえるだけでなく、皆さんにとって「面倒くさいこと」をなるべく公式で肩代わりすることも大切だと考えています。
── 面倒くさいこと?
小田:たとえばピクシブさんと連携したクリエイターズマーケット「BOOTH」で、「ずんずんPJ」関連作品を販売する際、指定のタグをつけていただければ、ライセンス料が自動的に支払われる仕組みを用意しました(詳細はこちら)。これは手続きの手間を可能な限り減らし、クリエイターの皆さんに創作そのものに集中していただくための施策です。
手間を減らすという意味では、3DデータやLive2Dモデルの配布も同じです。「ずん子で何か作りたい。でも絵を描くのは大変」という人でも、豊富な素材があれば気軽に創作を始めてくれるかもしれない。
実は私自身はクリエイター気質というより、かなり消費者マインドが強い人間だと思っています。しかもすごく面倒くさがりな性格(笑)。でもだからこそ人が面倒くささを感じるポイントに先回りして気づき、フォローすることができるのかもしれません。そうやって皆さんが創作しやすい環境を整えたうえで、最終的にはいち消費者に戻り、ただただ作品を楽しみたいという野望があります(笑)。
オリキャラを盛り上げるには「頻度」が大事
── クリエイターのなかには、せっかく作ったオリジナルキャラがなかなか盛り上がらずに悩んでいる方も多いかと思います。キャラを育てるうえで、どんなことを意識すればいいでしょうか?
小田:ありがたいことに東北ずん子は名前のインパクトが強いため、立ち上げ段階から話題になり、ファンアートも描いていただいて、良いスタートを切ることができました。とはいえ、その時点では立ち絵1枚しかない存在なので、一過性のバズに終わりかねない。そこで意識したのが、「頻度」ですね。
── 頻度、ですか?
小田:個人的には、オリキャラを流行らせたいなら、毎週、なんなら毎日のペースでコンテンツを公開していくことが、成功に近づく方法ではないかと考えています。もちろんコンテンツそのもののおもしろさは大前提ですが……。
── なるほど。考えてみれば、いわゆる「覇権コンテンツ」と呼ばれるものは、週刊連載のマンガやアニメが多い印象ですが、それは頻度の高さが関係しているのかもしれません。
小田:VTuberが流行っているのも、たぶん配信の頻度が高いからなんですよ。初音ミクも同じです。どんな人気アーティストでも、普通なら年に数回、新曲をリリースしてくれたら万々歳じゃないですか。
でもミクさんは、ユーザーの力によって、新曲が毎日いくつもリリースされるから超すごいんですよ!「ずんずんPJ」でも、ユーザーの皆さまによる二次創作という形で、高い更新頻度を実現できないかと考えました。
時には「スベる」ことを恐れない
── 二次創作に加え、公式側でも新規コンテンツや新たな話題の供給は行っていたのでしょうか?
小田:2012年6月から5年間ほどWeb小説を連載していました。各キャラのアカウントを利用してX上でストーリーを展開する形式で、今振り返るとちょっと新しすぎたかもしれませんが(笑)、コンテンツの定期供給という点では大きな意義があったと思います。
── バズる新規コンテンツというのは、初めから手応えがあるものですか?

ずんだもんの人型モデル
小田:たとえば2019年には、3Dモデルの東北ずん子を動かしてフキダシを付けることでマンガを簡単に作れるというPowerPoint対応の「マンガキット東北ずん子 for PowerPoint」を公開したんですが、期待していたほどは広がらなくて……(笑)。

── 俗な言い方になってしまいますが、更新頻度を保つためには「スベる」ことを恐れてはいけない?
小田:その精神は大事だと思っています。「失敗したら恥ずかしい」と感じる人は多いでしょうが、私に言わせると、本当に失敗した企画って、そもそも世間に気づいてもらえていないので、恥ずかしいも何もない(笑)。
── なるほど。失敗したという結果すら残らない……。
小田:「ずんずんPJ」もたくさん失敗してきました。でも失敗の積み重ねの中で、たまに大きくバズるものが出てくる。だから全体的にはなんか上手くいっている感じに見えるんです(笑)。
── 失敗を恐れず、手を動かし続けることが大事ですね。最後に、キャラを長く愛してもらうための秘訣を教えてください。
小田:まず運営側がキャラを愛していることだと思います。そして、「おもしろい何か」が定期的に起きること。「ずんだどん」など二次創作から生まれたムーブメントは本当にありがたいですが、それにあぐらをかかず、運営としてもいろいろ仕掛けていくことを心がけています。
今回の「FANBOXプリント」でのキャンペーンもその一貫です。「ずんずんPJ」のファンアートやマンガを日本や台湾のコンビニのプリントサービスを通じて販売できる仕組みが新たにスタートしました。「ずんずんPJ」の15周年を盛り上げる企画で、pixivではイラスト投稿企画も開催中です!
── ありがとうございます。今回お話を伺って、小田さん自身が「ずんずんPJ」のキャラを心の底から愛し、楽しんでいることが伝わってきました。
小田:はい。毎日、皆さんの作品を見て楽しませていただいています!
FANBOXプリント公認ファンワークス「ずんずんPJ」開始!
「ずんずんPJ」とFANBOXプリントのコラボレーション企画、FANBOXプリント公認ファンワークス「ずんずんPJ」が開始しました。
FANBOXプリントでは通常、オリジナル作品のみ販売が可能ですが、専用のコンテンツガイドライン・参加方法をお守りいただくことで、「ずんずんPJ」のファンイラスト・マンガをプリント商品として登録・販売することができます。
pixiv投稿企画「ずんずんPJ15周年」開催中
「ずんずんPJ」15周年を記念して、pixivではイラスト投稿企画「ずんずんPJ15周年」を開催中です!
参加者全員に、本企画限定の東北ずん子・ずんだもんの録り下ろしボイスデータをプレゼントします。
【募集テーマ】
・ずんずんPJ15周年を祝うイラスト
・東北ずん子の誕生日を祝うイラスト
【参加タグ】
zunzunpj_15th
15周年へのお祝いの気持ちや、キャラクターたちとの思い出、東北ずん子の誕生日を祝う一枚など、あなたらしいファンアートに、「zunzunpj_15th」のタグをつけてぜひpixivに投稿してください。
本日からpixivプレミアムコラボキャンペーンも開始!
pixivプレミアムでも、「ずんずんPJ」15周年を記念したコラボキャンペーンが本日より始まりました!
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