「これまでのLAMの全てを注ぎ込んだ」総決算としての個展『千客万雷』と初画集『いかづち』
取材/編集:rukaku
「マジカルミライ 2023」キービジュアル、VRゲームとして話題となった「東京クロノス」、ゲーム「takt op. 運命は真紅き旋律の街を」、エナジードリンク「ZONe」の公式イメージキャラクター「ぞん子」のデザインなど、商業イラストレーターとして幅広く活躍しているLAMさん。
満を持しての初の画集となる「いかづち」と連動して、渾身の大型個展「千客万雷」が本日11月1日より池袋アニメイトで開催されます。
総展示数500点を超える個展や画集の見どころをLAMさんにお聞きしました。
会社員をやっておいて良かった
── 現在に至るまでどのようなキャリアを積まれてきましたか?
僕は元々美術大学の出身でグラフィックデザインを学ぶ傍ら、並行してずっと絵を描いていました。
昔からアニメやゲームといったサブカルチャーが好きで、将来はそれらに関わる仕事をしたいなと思っていたのですが、大学に入ってから「小さい頃からの夢だった絵を描く仕事をしたいな」と思うようになったんですよね。
当時から色んなイラストレーターさんの作品を見るのも好きで、好きなイラストレーターさんの経歴を調べたりもしていたのですが、「ゲーム会社に入社後、退職し独立」というルートを辿る方が多かったので、僕が元々ゲーム好きだったことも相まって、まずはゲーム会社に入りました。
ゲームの中でも僕は『ペルソナ』シリーズが特に好きだったので、『ペルソナ』シリーズの制作会社である株式会社アトラスに新卒入社をしました。
入社後はイラストを描く仕事ではなく、UIデザインに携わっていたんですよ。そして、会社員として仕事をしながら、並行して趣味でイラストもずっと描いていて、入社して5年目くらいから、COMITIAやコミックマーケットなどの同人イベントにも出始めました。
転機は同人イベントに出始めたあたりで、当時Twitter(現X)で作品を発表するうちに、周りにフリーランスのイラストレーターの知り合いが増えてきたのですが、そういう方々とお話しする中で、フリーランスへの憧れが沸々と沸き上がってきました。やっぱりフリーランスの方々って、毎日自分の絵のことを考えられるじゃないですか。それがうらやましくて。
会社員をやっていると、平日は帰宅してから朝までの時間、それと土日が作業時間だったので、やはりこのペースでやっていたら周りに一生追いつけないなと、そのとき改めて実感しました。
当時は本当にやれるだけやってみようという感じで、より一層睡眠時間を削って、がむしゃらに絵を描くようになりましたね。朝の4時とか5時まで描いていたと思います。
そういう風に作品を発表していた折、MyDearestという会社さんから、「『東京クロノス』というゲームのメインのキャラクターデザイナーをやってもらえないか」というオファーをいただいたんです。
「これはまたとないチャンスだな」と思って、これを機に会社を辞めて、2018年に独立をしました。ですから、独立して初めてお受けした仕事が「東京クロノス」ですね。
── 会社員生活が創作活動に何か影響を与えたことはありますか?
今思うと良いことばかりでしたよ。
ゲーム会社ではUIデザインを担当していたので、配色や視線誘導、「どこにまずは目がいって、逆にどういう画面、絵作りだと、ユーザーは見辛いのか」を常に考えながら、視覚情報をコントロールするということを長年やっていました。そういった意味では今の僕のイラストにもすごく活きています。
僕は普段から、パッと見たときに「おっ」と思ってもらえるようなイラストを描くことを意識していて、小さいサムネイルでもすぐに目に付いたり、スクロールを止めてもらえたりするイラストを目指しています。そういうアイキャッチなイラストを描く力というのはおそらく、大学で学んだ広告だったり、会社員時代に培ったグラフィックデザインの知見が活きていると思いますね。
特に「目」で、人の心をまずは掴みたい。僕は人体のパーツの中でも「目」を大事に描いてきたので、これからも目を象徴的に描いていきたい思いが強いです。
あともうひとつ良かったことがあって、僕は会社員時代、イラストレーターさんを含む外部の方々とやり取りする仕事もしていたので、相手からの連絡が早いと嬉しいし、連絡がないとやきもきするなというのが感覚として蓄積されていました。なので、「見た連絡はすぐに返そう」という習慣が身に染みついているんですね。これは会社員をやっていたおかげです。「LAMは連絡がすぐ返ってきてありがたい」と言われることが昔から多いのですが、そういうとき、「会社員をやっておいて良かったな」と心から思います。
── 絵を描き始めたきっかけは何でしたか?
それこそ絵をずっと描いている少年時代でした。運動も好きだったのですが、「絵が上手いよね」と言ってもらえるのがうれしくて、それで調子に乗って描きまくるという感じでしたね。中学生になってからは、友人とマンガの模写をずっとやっていました。
そして高校生の頃にpixivができて、本当に初期ぐらいに登録をしました。
そしてpixivに触発されて「デジタルイラストを描きたいな」と思ってしまって。その友人と一緒に「FAVOコミックパック」という、ワコムさんの小さなペンタブレットを電気屋さんに買いに行って、それでデジタルイラストを描き始めました。
ただ当時はもう全然下手っぴだったので、pixivで目立つことはなかったんですけど、楽しくてずっと描いていましたね。
── LAMさんのイラストの特徴である「目」や色彩豊かな表現はいつ頃生まれたのですか?
当時は自由帳をアニメイラストの模写でいっぱいにしていましたね。それも目だけで。
色彩に関しては、当時美術大学に進学するために予備校に通って配色を学び始めたのがきっかけではあるのですが、その頃はシャフトさんの作品が大好きで、『ぱにぽにだっしゅ!』や『まりあ✝︎ほりっく』、『さよなら絶望先生』など、独特でオシャレな色使いのアニメーションにとても影響を受けていました。
そのため、絵の具を実際に塗るような課題の時などは、シャフトさんの色をすごく参考にして制作していましたね。それから美術大学に入学して広告やグラフィックデザインを学ぶにつれ、色の持つ様々な力が見えてきて、そうした知見が今の基礎になっています。
3つのキャリア上の転機
── LAMさんのキャリア形成の上で転機となった作品は何ですか?
2つ目は専門学校HALさんのCMです。2019年度のCMに携わらせていただいたのですが、この専門学校HALさんのCMシリーズも、元々僕がすごく憧れていた仕事でした。というのも、イラストレーターのPALOW.さんとボーカリストのDAOKOさん、映像監督の吉崎響さん、音楽プロデューサーのTeddyloidさんという豪華なメンバーが集結して制作された、2016年度の専門学校HALのCMが当時とても好きで、影響を受けていたんです。
漠然と「いつか自分もやりたい」と思っていたので、いざやらせていただけるとなったときは本当にうれしかったのを覚えています。やはり地上波で通年通して流れるCMの影響力というのは大きくて、それ以降は「あの専門学校HALのCMの人」という認識をいただける機会が多くなりました。初めて自分の名刺代わりになるような作品を作れたというか、知名度を得るきっかけになった作品でしたね。
最後に、『takt op.(タクト オーパス)』という作品も、自分の中では大きな作品です。
『takt op.』は2021年にリリースされたアニメとゲームのメディアミックス作品なのですが、初めて「とても大きな規模感の作品に関わらせていただけた」という感覚がありましたし、何より僕の夢だったアニメを作ることができたというところで、とても思い出に残っています。
MAPPAさん、マッドハウスさんという、あまりに豪華な制作陣の中で地上波のアニメのキャラクターデザイン原案を初めてやらせていただいたのは感激でしたし、今のキャリアに大きな影響を与えたと思います。
── LAMさんは過去に同人誌をいくつも出されていますが、その思い出を軽く振り返っていただけますか?
初めて同人誌即売会に出たときは全く売れなかったのですが、「イベントって楽しいな」という感動はすごく心に残っていて、それ以来会社員をやるかたわら、イベントにもどんどん出るようになりました。
そうこうしているうちに、ひとりでは手が回らなくなってきたのですが、大学の頃からの友人であるデザイナーの加藤に同人誌のデザインをお願いしてみたらものすごくかっこいいデザインが上がってきて、それからふたりのタッグがスタートしました。
同人誌をふたりで作っていくうちに、「デザインがかっこいいよね」と言っていただける機会も増えてきて、「加藤の力による反響って大きいなぁ」と思ったとき、「僕個人の名前だけでやるのはちょっと違うんじゃないか」と感じ、二人のチームの名前でやっていくことを僕の方から提案しました。それが雷雷公社(らいらいこうしゃ)の起こりですね。
あれから雷雷公社も大きくなって、今では僕関係なくデザインの仕事をバリバリ回しています。僕は必要なときに絵を描いたりするくらいで、良い具合に分業体制ができています。
── これからも同人活動は続けられていくのでしょうか?
もちろんです。楽しいので!!
あとは商業だと難しいような表現ができるのは面白いことだと思っていますし、僕自らが足を運んでくれた人の顔を見ながら紙の本を手渡せるというのは、何にも代え難い喜びがあります。
僕はそもそも本という媒体が好きなんですよ。今はSNSやpixivなど、ネットで簡単にイラストを見ることができる時代ですが、そんな時代にあってわざわざ紙に印刷をして本を作る意味、プロダクトとしての価値をいかに出せるかということを、今までも追求してきました。
手に取った時の質感の良さとか、思わず飾りたくなるような表紙、そんな所有感を満たせるプロダクトをこれからも目指していきます。
初画集は「もうとことんやってやるぞ」という気持ち
── そんな中、今回初画集『いかづち』をリリースされるわけですが、どのような経緯で制作されたのですか?
もともと画集を出したい気持ちは凄くあったのですが、「どうせ作るなら絶対に自分の中のベストアルバムにしたいな」という気持ちが強くあったんですね。
なのでしっかりと時間をかけて、新作もたくさん描いて、自分の納得のいくクオリティの画集にしたかった。
独立してから5年、ありがたいことに仕事でずっとバタバタしていて、あっという間の5年だったので、今までは腰を据えて着手する余裕がありませんでした。ですが、今回個展をやらせていただくことが決まったタイミングでPIE Internationalさんから「うちで画集を出しませんか」というご提案をいただいたんです。
もちろん個展を盛り上げたいというのもありましたし、個展と画集を同時にリリースしたら面白いんじゃないかと思って、初画集『いかづち』を作り始めました。
── 初画集『いかづち』の見所を教えてください。
雷雷公社としても、商業画集を作るというのは長年の夢だったので、「とことんやってやるぞ」という気持ちでした。表紙作りから色んな細かい部分まで、PIE Internationalさんのご協力を得ながら作り上げたこだわりの一冊なので、見どころはもう「全部」です。ただ、強いて言うなら表紙ですかね。
画集というのは自分の名刺代わりになるものだと思っているので、表紙に何を描くかはとても重要で、すごく悩みました。当時、今回の個展『千客万雷』の看板娘としてデザインした猫娘が自分の中でアツかったので、そんななか表紙のことを加藤に相談したら、「LAMの中で今猫娘がアツいなら、その猫娘のファンアートを描く気持ちで表紙イラストを描いたらいいんじゃないか」という提案をしてもらって、確かに「それはいいな」と思ったんです。
そして、自分の性癖や好きな要素を詰め込みまくって描いたのが初画集『いかづち』の表紙です。パッと見のインパクトもすごくあって、格好良い仕上がりになったんじゃないかと思います。構図に関しても、僕の画風の特徴である「目」が引き立つようにこだわりました。
僕のこだわりがつまった初画集『いかづち』は2024年10月23日から各種サイトで販売開始しますので、皆さんぜひお手に取ってみてください。A4サイズで182ページの大ボリュームの画集です。
── 初画集『いかづち』には特装版もラインナップされています。特装版の内容はどんなものでしょうか。
特装版は個展で限定販売させていただきます。内容としては、画集本体に加え、オリジナルボックスとA3サイズの特製冊子、さらには僕の直筆サイン入りステッカーが付いてきます。
僕のパーソナルカラーである赤と黒が象徴的に見えるクールなデザインにしたいというのがありました。加藤が本当に頑張ってくれて、とても格好良いデザインのオリジナルボックスが完成しました。
特装版の特製冊子も面白い内容で、イラストの全体図だけでなく、僕がいつもこだわって描いている「顔」のドアップが贅沢に見られるという、すごい作りになっています。
画集本体がベストアルバムだとすると、この特製冊子は「ベストアルバムの中の更なる厳選集」という位置付けです。ページ数は32ページとそこまで多くはないのですが、画集本体の表紙のような「ドアップのインパクト」がずっと続く、LAMをとことん堪能できる本になっています。
── 初画集の『いかづち』というタイトルも印象的です。
最初はいっそ『LAM』にしてしまおうかとも思ったのですが、僕自身が元々「和」のモチーフがすごく好きだったのもあって、画集のタイトルはやっぱり日本語にしたいなと思い直しました。
また、僕は昔から「雷」というモチーフが大好きでよく描いてきたのですが、ビジュアル以外にも好きな理由があって、それは僕自身が目を奪われるような創作物を見たときに、「雷に打たれたような衝撃」を感じるからなんですね。
「そういう衝撃をイラストで表現したい」というのをモットーにずっと活動してきたので、このモットーが『いかづち』という名前にも現れています。
『いかづち』がひらがな表記なのは、僕がひらがなが好きだからですね。
アニメイト池袋本店のワンフロア全部!
── 続いて個展についてお聞きします。今回『目と雷』に続く2回目の個展『千客万雷』を開催されますが、どのような経緯で開催が決定したのですか?
前回の個展『目と雷』は4年前の2020年3月にpixiv WAEN GALLERYで開催させていただいたのですが、そのタイミングでコロナが流行ってしまって。それでも沢山の方が来て下さったのですが、動員としては悔しい結果が残りました。
なので、「今度個展を開催するときはより派手に、もう120%の力でやってやるぞ」という気持ちを蓄えながら、この4年間活動をしてきました。その折に、ムービックさんから「うちと個展をやりませんか」と打診を受けたんです。これが2022年の出来事ですね。
個展の打診自体は、それまでも度々いただいていたのですが、「やるならド派手に行きたい」という気持ちがあって、そんな中でムービックさんはすごい熱量を持って接してくださったんです。お話しさせていただく中で、「この方とならぜひ一緒にやらせていただきたいな」と思えて、今回個展を開催しようと踏み切った形です。画集がベストアルバムだとしたら、個展はLAMの総決算にしたかったので、これまで2年間、みっちりと準備してきました。
しかも今回は、東京だけでなく大阪でも開催させていただくことになっています。
東京会場はアニメイト池袋本店8階『Space Galleria』で2024年11月1日(金)~12月2日(月)の期間、大阪会場はアニメイト大阪日本橋別館3階『Space Gratus』で2025年1月10日(金)~2月3日(月)の期間にわたって開催します。
ちなみに入場チケットは、展示会場の当日券窓口だけでなく、イープラスでも当日券を販売しています。
── 個展のテーマである『千客万雷』に込めた想いは何ですか?
ありがたいことにこれまで独立してから沢山のゲームやアニメといったコンテンツに関わらせていただいてきたので、まずはそうした各コンテンツから僕を応援してくれるようになったファンの方たちに喜んでもらえるような空間にしたいなという気持ちがありました。
それと同時に、僕のオリジナル作品も沢山見てもらいたくて、今回オリジナルの新作を20枚ほど描き下ろしています。そしてそれらを各々適した表現方法でアウトプットして、独創的な空間を作りたかった。こういうふたつの想いがあったんですよね。
結局、今までのワークスもオリジナルも全部見てもらいたくて、もう自分の中ではお祭りみたいな感覚というか、「僕の全部を詰め込むぞ」というスタンスで構想したのが今回の個展です。
なので、お祭りとかテーマパークとか遊園地みたいな、そういう感覚で個展会場を作ろうというのを、ムービックさんと最初に決めました。それと「たくさんの方に来ていただきたいな」という願掛けの気持ちも込めて、「千客万来」をもじった『千客万雷』というタイトルにしました。「雷」という文字を入れたのは、初画集のタイトル『いかづち』と同じ理由で、個展に来てくださった方に「雷に打たれたような衝撃」を感じて欲しいという願いを込めています。あと純粋に『千客万雷』の言葉の響きって、とても和的で格好良いですよね。
── 今回のインタビューには、LAMさんの個展『千客万雷』の企画・制作を担当された株式会社ムービック ライセンス催事部の熱海熙尚さんにもご同席いただいていますが、ムービックさんはなぜこのタイミングでLAMさんに個展開催を持ちかけたのですか?
『Space Galleria』はワンフロア全部という広大な空間ですから、これを個人作家さんひとりの作品で埋めて、かつ動員を見込もうとすると、極めて実力の高い人でなければ難しいと感じました。そのため、今回私自身が個人的にファンであり、かつイラストレーターとして最前線で活躍され続けているLAMさんに個展開催のお声がけをさせていただいた流れになります。
ムービックの熱海さんは最初から最後までとても真摯にご対応してくださって、改めてムービックさんと個展を作る事ができて良かったと感じました。会場の広さにも、とても驚かされましたね。
初めて下見に行ったとき、あまりの広さに圧倒されて、「これだけ広かったらたくさん遊べるぞ」と奮い立って、すごくテンションが上がったのを覚えています。あとは照明の雰囲気などもすごく格好良い会場です。
── いよいよ開催となる個展『千客万雷』の一番の見どころというとどこでしょうか?
今回はやはり遊園地のように、「どこもかしこも楽しい空間」にしたいという気持ちが強かったので、それこそ会場に入る前の、7階から8階に上がる階段にすら「楽しさ」を付与しようとこだわって作りました。
なので「一番の見どころ」と聞かれると大変悩ましいのですが、強いて挙げるとすると、1つ目は“物量”かなと思います。
展示会場は、前半・後半とエリアを分けていて、前半のエリアには今まで携わらせていただいたお仕事回りの作品を展示しています。そして後半のエリアにはオリジナル作品を展示していて、今回の個展開催に合わせて新規のオリジナルイラストを20枚描いています。
権利や許諾の関係で全部は展示できなかったのですが、お仕事周りの作品を展示する前半のエリアだけでも600枚近くのイラストを展示する予定です。これだけのイラストを展示できたのも、会場の広さがあってこそですね。
2つ目は、後半のエリアに展示している新たな表現にチャレンジしたオリジナル作品たち。後で詳しく説明しますが、とても大きな紙に特殊加工したイラストだったり、イラスト以外にも人形や屏風だったり、二次元に限らず三次元のプロダクトにも沢山チャレンジしました。
── 会場デザインでこだわったポイントはありますか?
まずお仕事周りの作品を展示する前半のエリアについてですが、僕はこれまで和風なものから洋風なもの、モダンなものまで、様々なコンテンツに関わらせていただいて、その幅広さが自分の持ち味の一つです。だからそれぞれの作品たちが一段と際立つような空間作りをしました。
例えば『takt op.』エリアでは、ヨーロッパの雰囲気を感じるようなシックな空間作り、VOCALOIDエリアでは、僕が2023年のメインビジュアルを担当させていただいた『初音ミク「マジカルミライ」』をイメージをしたポップな空間作り、ボカロPのKanariaさんエリアでは、Kanariaさんのテーマカラーの赤を強調した空間作りといった感じで、それぞれのコンテンツをイメージした空間作りを突き詰めました。
また僕は前回の個展『目と雷』の時から「音」の力をとても大切にしていて、音楽ライブや映画で感じるような「音」の感動によって空間をより引き立てるということを、今回も試みています。
あと初の試みなのですが、今回『千客万雷』に合わせて、僕のイラストを使って「痛車」を作ったんですよ。デザインは加藤がとても頑張ってくれて、迫力のある格好良い痛車に仕上がっています。会場となるアニメイト池袋本店の1階入口付近に、個展開催前日の10月31日~11月4日までの5日間展示しているので、ぜひご覧いただきたいですね。
── 前半エリアと後半エリアの間に真っ白の空間があると聞きましたが、これはどういうことですか?
例えばジェットコースターって、頂上のところで一瞬「ピタッ」と減速するじゃないですか。一瞬「凪」の時間があった後にワーッと降りていくみたいな。そういう「凪」の空間を個展にも作りたかったんです。
なので、前半エリアと後半エリアの間に真っ白な和室を作りました。そこで一瞬、不思議な空間に迷い込んだ感じで気持ちを切り替えていただいて、そこから真っさらな気持ちで後半エリアに突入してもらいたいんです。
「どうせなら1メートル超えの人形を作って展示しよう」
── 個展に合わせて新規のオリジナルイラストを20枚描き下ろされたとのことですが、これらの見所は何ですか?
最近は印刷技術や造形技術の目まぐるしい革新がある中、印刷物としての表現の追求をしたい気持ちがずっとあったので、今回はそういった追求をふんだんに盛り込んでいます。
アートプリント専門の会社であるFLATLABOさんにご協力いただいて、オリジナル作品を魅力的に出力していただきました。
例えば、既に発表済みの作品ではありますが『三毒』という三枚の作品があって、これらは特殊な仕様の掛け軸として出力していただいています。
遠目だと分かり辛いのでぜひ近くで見ていただきたいのですが、実は透明なビニールフィルムにキャラクターだけを印刷していて、後ろに背景だけの紙素材がドッキングされるという、2枚重ねの面白い構成になっているんです。背景の紙素材にはキラキラのホログラム印刷をしていて、とてもポップな掛け軸に仕上がっています。
僕は日本の古典絵画が好きで、それこそ尾形光琳、俵屋宗達、伊藤若冲などがすごく好きなのです。こうした日本の古典絵画の技法を、2024年に生きる自分が咀嚼して新たに何か作れないだろうかという気持ちもあったので、『柘榴美人図』、『瑠璃唐草』という二枚の作品を、それぞれ金箔・銀箔の背景の上に印刷していただきました。これらはかなり大きなサイズなので、迫力のある本当に美しい作品になっています。
大好きなゲームと「能面」のモチーフを掛け合わせた『能面シリーズ』という作品群を最近投稿し始めました。「能面を装備している少年少女たちが特殊能力を持って戦うゲーム」を想定した作品群で、キャラクターは六道輪廻の六道の文字をひとり一文字ずつ冠しています。この六人を用いた作品もFLATLABOさんに出力していただきました。
例えば「獄」を担当している女の子のキャラクターの作品では、イラストの上に重なる形で「獄」の文字が立体的に浮き出ているという表現を、アクリルをくり抜いた立体フレームの中で行っています。このフレームの外観もゲームのステータス画面っぽくしていて、側面にはキャラクターのステータス表記を入れたりしています。こうした表現はFLATLABOさんとしても初の試みだったそうで、こんな複雑な造形を実現していただいたことにとても感謝しています。
他にも沢山あるのですが、最後に紹介しておきたいのが『記録』という3枚の作品です。
これは昆虫標本みたいに女の子が飾られているという、少し毒々しい作品群で、骨、筋肉、小指、歯茎、舌、耳といった、僕自身の細かいフェティッシュを鮮明に描き出す事を目指しました。
この『記録』ではもうひとつチャレンジしたことがあって、それは「お化粧をしていないすっぴんの女の子を描く」ということです。すっぴんで、服も着ていない裸体の女の子を描いています。
僕の作品は、カラフルな色使いやメイク、ネイル、アクセサリーなどの印象が強いと思うのですが、『記録』ではネイキッドな状態の女の子を描いてみたかったんですよね。
展示するにあたって、実際の昆虫標本のような額装を購入して、ピンでイラストを留めつつ、各部位の説明文言をあしらっています。
── LAMさんは『PROJECT KAGURA』というキャラクターコンテンツも制作されていますが、今回『PROJECT KAGURA』関連の展示も見られますか?
もちろんです。僕は元々人形、特に日本人形やからくり人形などが好きだったので、「人形をテーマにした作品を作りたいな」と思って始めたのがこの『PROJECT KAGURA』というシリーズです。
人形を作るにあたって、プロの人形師さんや、京都の着物職人さんとご一緒していて、徹底的にこだわった「本物」として仕上げています。何回も京都に通い詰めて、1年以上の制作期間を経て完成しました。
人形に持たせる和傘も特注して作っていただきましたし、この「猩々緋」人形は個展の見所のひとつですね。会場の後半エリアのど真ん中に鎮座しているので、ぜひじっくりとご覧いただきたいです。
また人形とは別に、「猩々緋」の着物デザインで人間サイズの着物も作っていて、こちらも会場に展示します。
── 今回、個展『千客万雷』の開催に合わせてティザーPVが公開されていますが、これはどのような経緯で制作されたものでしょうか?
実は前回の『目と雷』のときもPVを作ったので、今回も映像でのお披露目をやりたくなったんです。
そこで、長らく懇意にさせていただいている映像作家のyonayona graphicsさんと、元々僕がファンだった音楽アーティストのTORIENAさんにお声がけをさせていただいて、今回のPVが実現しました。
音楽に関して、僕は元々TORIENAさんの『DietCoke』という曲がすごく好きで、最初はTORIENAさんに「『DietCoke』をPVで使わせて欲しい」というご相談をしたんです。そうしたらTORIENAさんが「せっかくなら『DietCoke』をリアレンジして、『千客万雷』のテーマ楽曲を新規で作りましょうか」とありがたいご提案をくださって、『RumCoke』という新規楽曲が完成しました。本当に感激でしたね。この楽曲は会場でも流させていただいています。
── 今回ボカロPのKanariaさんも、個展『千客万雷』のテーマソングとして『BRAIN』という楽曲を制作されていますが、これはどのような経緯で制作されたものでしょうか?
僕はKanariaさんとかれこれ4年ほどタッグを組んでMV制作を担当させていただいていて、もはや友人のような間柄なんです。今回初めて僕の方から「個展に楽曲を書いてもらえないか」とご相談して、快く引き受けていただいたという流れです。
『千客万雷』ではKanariaさんエリアも作るので、どうせなら新曲があった方が嬉しいなという想いでした。『BRAIN』は本当に素敵な楽曲で、こちらは会場で流させていただくだけでなく、『千客万雷』の地上波CMでも使用させていただきます。
── 最後に、会場に来られるお客さんに向けてのメッセージはありますか?
やはり、わざわざ交通費と入場料を支払って遠くから来ていただくというのは、本当にとてつもなくありがたいことだと思っているので、ご足労いただく以上は、心から楽しい気持ちになって帰っていただきたいと思っています。ですから、『千客万雷』は僕のファンの方だけでなく、「なんかLAMって見たことあるな」くらいの方や、たまたま立ち寄ってくださった方たちにも楽しんでもらえるような空間作りを目指して、2年間みっちりと準備してきました。
それに、掛け軸や立体作品、人形など、今までのLAMがやってこなかった表現、新たなLAMの可能性についても感じて貰えたらなと思います。
個展について、ちょっとした感想でも良いので、ハッシュタグ「#LAM個展」「#千客万雷」を付けてSNSなどで書いていただけたらうれしいですし、写真撮影可能なエリアも沢山設けているので、写真もガンガンアップしていただけるとうれしいです。
皆様のご来場を、心よりお待ちしています。
『千客万雷』は2024年11月1日(金)より開催!画集は絶賛発売中!
2020年にLAMの初個展『目と雷』が大きな話題となって以来、今回二年の準備期間を経てようやく開催される運びとなった二回目の個展『千客万雷』。LAMがこれまで手掛けてきたワークスとオリジナルイラストだけでなく、多数の新規描き下ろしイラストや立体物を含む膨大な数の作品群が一堂に会する空間となっている。
今回は東京だけでなく大阪での開催も決定しており、東京会場は昨年リニューアルオープンしたアニメイト池袋本店8階『Space Galleria』で2024年11月1日(金)~12月2日(月)の期間、大阪会場はアニメイト大阪日本橋別館3階『Space Gratus』で2025年1月10日(金)~2月3日(月)の期間にわたって開催される。
入場料は1000円で、当日券はイープラス、または会場当日券窓口にて購入可能。入場特典としてもれなくミニ色紙(全5種ランダム)が付いてくる。これとは別に限定グッズ引換券も同時発売されているので、こちらもぜひチェックしてもらいたい。
また、今回の個展に合わせて初画集『いかづち』も発売され、さらには個展会場限定の特装版も用意されている。こちらは画集本体(182ページ・A4判変形)に加え、特製冊子(32ページ・A3)、オリジナルボックス、さらにLAM本人の直筆サイン入りステッカーが付属した大変豪華なセット。
通常版はネットでも購入できるが、特装版は会場でしか買えないので、ぜひ早めに手に入れてもらいたい。
そして会場の物販エリアでは、画集『いかづち』だけでなく多数の記念グッズも販売されている。記念グッズたちは、そのどれもが個性的で魅力的な風合いを帯びている。
ご本人曰く「これまでのLAMの総決算」たるこの空間で、皆さんにも「雷に打たれたような衝撃」をぜひ体感してもらいたい。
■画集情報
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001043.000012505.html
https://pie.co.jp/book/i/5926/
書名:『LAM画集 いかづち』
仕様:A4判変形(天地297mm×左右200mm)/ソフトカバー/182ページ
定価:本体¥3,000+税
発売日:2024年10月23日
発行元:パイ インターナショナル
■個展開催情報
個展『千客万雷』公式サイト
個展『千客万雷』公式X
東京 2024/11/01-12/02
〒170-0013 東京都豊島区東池袋1-20-7 アニメイト池袋本店8F
開催時間
月~金 11:00~21:00
土・日・祝 10:00~20:00
大阪 2025/01/10-02/03
〒556-0005 大阪府大阪市浪速区日本橋4-15-17 アニメイト大阪日本橋別館3F
開催時間
月~金 11:00~20:00
土・日・祝 10:00~20:00