小説家志望さん必見!三浦しをんと盃をかわす、豪華すぎる「小説講座」潜入レポート
文/ひらりさ 編集/佐久間仁美
「他人の作品を読むのも楽しいけど、自分でもちょっと書いてみたいかも」
「試しに書き出してみることはあるんだけど、モチベーションが続かない……。」
日々アニメやマンガ、小説などを楽しむなかで「自分でも何か書きたいけど、うまく書けない」と思っている人は結構多いのではないでしょうか?
そんな悩みを抱える人に足を運んでもらいたいのが「山形小説家・ライター講座」。
20年の歴史を誇るこの講座は、第一線で活躍するプロの作家さんが毎回講師として登壇。生徒が提出した原稿に直接コメントし、真面目かつカジュアルに「ものを書くプロになりたい」という気持ちを持つ人たちにアドバイスをしてくれる熱いプログラムです。
今回は、東京在住のライター・ひらりさが、「山形小説家・ライター講座」にガチ参加! 三浦しをんさんをゲスト講師に迎えた1月講座への潜入レポートを、参加者さんの声もまじえながら、たっぷりお届けします。
ある日突然、山形へ……?
ひらりさ様
お世話になっております。ピクシブ文芸担当のRです。1月28日ってあいてますか?
作家の三浦しをんさんが講師をつとめる文章講座の出張取材をお願いしたいんです。
山形なんですけど……
1月半ばのある朝、ピクシブ文芸編集部から私に届いた1通のメールは、そんな書き出しで始まりました。
「三浦さんの取材! 行きたい! でも、山形!?」
三浦しをんさんといえば、直木賞を受賞した『まほろ駅前多田便利軒』をはじめ、『舟を編む』、『風が強く吹いている』、『光』など、数々の傑作を世に送り出してきた有名な作家さんです。私も高校時代からのファンですが、どの作品でも、個性豊かなキャラクターたちが自分たちの仕事や生活にひたむきに向き合うなかで物語が展開され、すっかりその世界に没入してしまいます。
小説やエッセイを精力的に次々と書き続けている三浦さんが、まだ試行錯誤中の作家志望の人たちにどんな言葉をかけ、どんな視点で作品を評するのか? 自分も「小説を書いてみようと思ってたまにポツポツやってみるんだけど、だいたい途中で挫折する」人間のひとりなので、かなり聞いてみたい。ドキドキしながら取材に向かうことになりました。
沖縄から北海道まで……バラエティ豊かな参加者たち
そうして、講座当日がやってきました。
ピクシブ文芸担当のRさんとpixivision編集部のSさんと共に、東京から新幹線に揺られること3時間ほどでJR山形駅に到着。pixivコミックで買ったマンガを読みまくっていたらあっという間だったので、意外と近いかも……?
とはいえ、景色は明らかに別世界。なんとこの日は積雪55センチで、駅の周りを歩くだけでちょっとした冒険気分です。
講座が行われるのは、山形駅からバスで5分ほどの距離にある学習センター「遊学館」。
事務局の方に導かれて2階に上がると、そこには4人の女性が待っていました。今回の講座で講評されることが決まった4作品を書いた参加者です。
── 4作品とも拝読しました。みなさん、非常にバラエティ豊かな経歴ですし、作風も多彩でおもしろかったです。
新堂 今日の参考テキストは女性4人のものになりましたけど、取り上げられる作品の傾向は、ゲスト講師によっても違います。教室に行くとわかりますが、男性も多いですし、北海道や沖縄の人が来ていたこともあります。
── 水上さんは、東京から通われてるんですよね。東京にはいろいろな創作講座がありそうですが……。
水上 はい。東京でも講座に通ったことはあります。でも、だいたいの場合、講師が編集者の方で、授業中はその方が一方的に話すという感じなんですよね。人気作家さんが登壇して実際に書いた作品にコメントを言ってくださるのは、この講座だけです。
円 それに加えて、同行している現役の編集者の方、講座をとりまとめている文芸評論家の池上冬樹先生、そして参加者の方からもコメントをもらえる。ときには作家さんと編集さんの意見が対立することもあって、すごく刺激的です。
穂積 そうそう。私、前回の三浦先生の講座では、編集の方からは技術的なアドバイスをいただいたのに対し、三浦先生からは「あなたの価値観がわからない」という指摘を受けたのが、印象に残っています。
「小説というのは、お金持ちをさらに満足させるためのものじゃなくて、世の中に新しい価値観を提示するものでしょう」と言われて。技術的なこと以外も、いろいろ学べるのが魅力。
新堂 私は、池上先生から「これはエッセイじゃなくて日記」と言われたのをよく覚えています(笑)。
── そんなことまでコメントしていただけるんですね……!
── 参加者の方はどういう感想を交わしあうんですか?
水上 それが結構辛らつなんですよ(笑)。私が最初に出した作品なんか、「何が言いたいかわからなかった」とか「つまらなかった」とか言われましたもん。起承転結をうまくまとめたつもりだったのですが、小説じゃなかったんですね。
大切なのは「書くこと」だけではない
── 講座に参加して、変わったことはありますか?
新堂 本を読むようになりました。それまでは、敬遠していたジャンルもあったんですが、講座に登壇する先生の作品を読んだらおもしろい作品ばかりで。書くこと以上に、読むことの大切さを学んでいます。
── まず人の作品を読まないと、自分が書ける表現に限界がありますもんね。
穂積 1年に1〜2回の参加でも、本当に励みになります。自分の作品に直接的なアドバイスをもらえると、小説を書くこと自体がすごく楽しみになってくる。
円 自分ひとりで書いているときから「これっておもしろいのかな?」とか「こだわりや縛りが偏ってるな」と思っていたんです。講座を通じて、自分がいかに「枠」にはまっていたかを痛感しました。三浦先生の「小説なんだから何書いてもいいんだよ」という言葉で、ウロコが落ちましたね。江國香織さんが「共感されたくなくて仕方がない」と話していたのも、心に響いて。私はいつも、なんとなく人の目を気にしながら書いていたなと気づいたんです。もう、目からウロコの連続。
穂積 ウロコがいくらあっても足りないですよね〜!
── 始まる前からワクワクしてきました! 最後に、今日の講座への意気込みをいただけますか。
穂積 自分では「書けたぞ」と思ったものでも、まだまだ穴がある。終わりがない。講座の前にいただいた池上先生のアドバイスを元に書き直したんですけど、また自分では気づいていない指摘をいただけるんだろうなと思うと、楽しみです。
円 今回書いた「フライ」の主人公は、小説を書くときの私のように、自分で自分をがんじがらめにしている人なんです。どういうオチにしようか迷ったので、そこをどう評価してもらえるかが気になっています。
新堂 書き終わったときは「最高!」って思いますよね。でも、人に批判されたくなかったら、この講座には来ませんから。
水上 どんな感想をいただけるかわかりませんが……「なんでも来い」という気持ちです!
4人の話を聞いただけでも、「書くこと」についてのヒントが盛りだくさん。あっという間に時間が過ぎていきましたが……、ここからが講座の本番です!
参加者プロフィール
■新堂麻弥(しんどう・まや)さん
4年前から講座に参加。エッセイストを目指し、夫・うさちゅうとのコミカルな日常をつづった作品を多数提出している。
・作品:へっぽこへたれおぼこ
■円織江(まどか・おりえ)さん
岩手県在住。ユーモアのある小説が好き。交通事故で命を落とす主婦が主人公の今作も、一見シリアスなテーマながら、意外な方向へ転がっていく。
・作品:フライ
■穂積みずほ(ほづみ・みずほ)さん
山形市出身。青年海外協力隊で海外にいたことも。今回の作品にも、その経験が生かされている。
・作品:カレーライスの歌
■水上春(みなかみ・はる)さん
東京在住。シナリオライターを目指しており、夜行バスで講座に通っている。今回の作品は、社会的に話題となっている少子高齢化問題から着想を得た。
・作品:私たちは肉を食べる