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インタビュー
2022.09.09

「涙を単なるアクセサリーにはしたくない」イラストレーター おしおしおが描く、切ない泣き顔の裏側

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「涙を単なるアクセサリーにはしたくない」イラストレーター おしおしおが描く、切ない泣き顔の裏側

インタビュー/原田イチボ

イラストレーターで漫画家のおしおしおさんの初個展「青光」が、東京・表参道にある「pixiv WAEN GALLERY」にて2022年9月21日(水)まで開催中です。オリジナルイラストを中心に、VTuberやライトノベルなど過去担当した商業イラストを含む約100点が展示されます。

おしおしおさんといえば、キャラクターの感情が伝わってくる「泣き顔」イラストに定評があります。魅力的な表情を描くために考えるべきことは? 制作の裏側を聞かせてもらいました。

おしおしお
  • おしおしお
  • 神奈川県出身のイラストレーター兼漫画家。 泣き顔イラストをはじめ、キャラクターの感情が溢れて伝わってくるようなイラストをメインに制作中。代表作にホロライブ「天音かなた」にじさんじ「空星きらめ」講談社マガジンエッジ「しかのこのこのここしたんたん」連載など。好きなものは猫と犬と動物全般。

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イラストレーターを目指し、同人誌を出しまくった

── おしおしおさんは、美大出身だそうですね。昔から絵を仕事にすることを意識していたのでしょうか?

それが全然だったんですよ。絵を描くこと自体は昔から好きでしたが、仕事にできるとは全く思っていなくて、あくまでデザイナーになるために美大のデザイン科に入りました。それから広告系の制作会社に就職しましたが、会社勤めがちっとも合わなくて……。結局、新卒で入った会社を1年で辞めてしまいました。冷静に考えてみると、私が子どもの頃からずっと好きだったのは、広告やデザインではなく、イラストを描くことだったんですよね。なので、「イラストを1年間だけ頑張ってみて、それでダメなら諦めてまた就職しよう」と決めました。

── イラストレーターを目指し、デビューのためにどんなことをしましたか?

もっとイラストが上手くなること、そして人の目に触れることが大事だと考えたので、とにかく同人誌を出しまくりました。

2015年投稿のイラスト

── それまで同人誌を出した経験はありましたか?

はい。中学生のときに初めて同人誌を出しました。中学時代は地元のイベントでコピー本とか便箋とかラミカを出していました(笑)。

── いにしえのオタクらしい甘酸っぱいエピソードですね……!

同人誌って一度作ってみると、スケジュール感や自分の作業スピードなどで発見もあるし、本当に勉強になると思います。お金のやり取りが発生するとなると、普段の落書きの何十倍も気合いが入りますしね。絵が上手くなりたい人は、グラデ便箋を作ってみるといいと思います!(笑) 何より自分の作品が本になるって、すごくうれしくて楽しいことですしね。

私は紙に印刷された絵を見るのが好きなので、同人誌を作る為に絵を描いてるみたいなところはあるかもしれん🤔

— おしおしお@9/2~21初個展開催 (@oshioshio_info) April 27, 2019
おしおしおさんの愛が伝わるツイート

── 同人誌を出していたら編集者の目に留まり、1年間の期限のうちにデビューすることができたんですね。

はい。芳文社の編集さんからお声がけいただき、『神様とクインテット』で商業デビューすることができました。同時期に『さくらマイマイ』の連載もスタートしています。

自分らしいはっちゃけたネタで手応えを感じた

── イラストレーター志望でしたが、まずマンガ家として商業デビューすることになり、迷いはありませんでしたか?

お声がけいただいて驚く気持ちはありましたが、せっかくの機会だから挑戦してみようと素直に思いました。結果的にマンガの繋がりからイラストのお仕事もいただけるようになったわけですし。

── 「やってみよう!」と思ったわけですね。

はい。連載は楽しい経験でしたが、悩むこともありましたね。

── どんなことに悩んでいたんでしょうか?

いわゆる萌え4コマらしさに囚われすぎてしまったんですよね。「かわいい女の子たちにほのぼのした会話をさせなきゃ!」と思い込んでいたけど、どうしても私の作風的にはしっくりこなくて……。途中からはっちゃけたネタを入れるようになったら、自分としても手応えを得られるようになりましたし、雑誌の中で存在感を出すこともできたのかなと感じています。

『神様とクインテット 1巻』(芳文社)p.107

── 『少年マガジンエッジ』で連載中の『しかのこのこのここしたんたん』は、シカの女子高生を取り巻くギャグマンガです。おしおしおさんは、イラストだと切ない雰囲気の作品が多いですが、マンガはかなりぶっ飛んでいますよね。

イラストから私を知ってくださった方には、「違う作者のマンガを買ってしまったかと思った」みたいによく驚かれます。そういう感想を見て、私はニヤニヤしています(笑)。

『しかのこのこのここしたんたん(1)』(講談社)p.17

── ギャグマンガ家としてのルーツになるような作品や作家さんを教えてください。

雪リコ(別名義・湯キリコ)先生が本当に大好きなんですよ……! 雪リコ先生が発表されるマンガもちょっと不思議なギャグが多くて、それが私の根底にあるんだと思います。ギャグだけでなく、イラストでもめちゃくちゃ影響を受けています。髪の毛の束感とか、グラデっぽい塗りとか、すごく真似しました。

私の描くキャラの手足がちょっと大きめなのも、雪リコ先生の影響です。「手が大きい」みたいなツッコミが入ることもあるんですけど、「いや、このくらいのサイズがかわいいんだよ!」と(笑)。

あとは種村有菜先生もですね。子どもの頃は『神風怪盗ジャンヌ』をずっと模写していました。雪リコ先生も種村先生も自分だけのデフォルメ感を持っていて、今見てもすごくかわいくて新しい絵柄ですよね。

── 最近印象に残った作品はありますか?

最近は、あずまきよひこ先生の『よつばと!』にすごく影響を受けています。今さら?とツッコまれそうですが……(笑)。『よつばと!』を読んだことがないと言ったら、担当編集さんが「ありえない」と本屋に走って全巻買ってきてくれたんですよ。それで読んでみたら、何気ない日常をここまでおもしろく丁寧に愛おしく描けるものなんだと感激して、自分にとっての「マンガの教科書」になりました。

「マンガっぽい線」を引くため試行錯誤した

── もともとイラストレーター志望だったおしおしおさんが今もマンガを描き続ける理由とは何でしょうか?

イラストは一瞬を切り取ることができますが、マンガと違って、ある程度ボリュームのある物語を描くことは難しい。それぞれ表現できるものが違うし、どちらにも違った楽しさがあるので、「あまいのとしょっぱいの交互に食べる」みたいな感じで両方続けていきたいと思っています。

── マンガとイラストで絵柄を変えたりはしていますか? 「キレイな絵柄だと、ギャグで笑いにくくなるかも」とか……。

この絵柄で変なことをするほうがギャップが生まれておもしろいかなと考えているので、特に絵柄を変えるようなことはしていません。ただ、「マンガっぽい線」になるように試行錯誤はしました。

── マンガっぽい線というと?

イラストだと、少しでもはみ出た部分はきっちり消して、納得のいく線が引けるまで描き直します。でもマンガでそれをやると、時間がいくらあっても足りないんですよね。昔は1ページに6コマあったとしたら、6枚のイラストを描く感覚で作画していたので、毎回疲れ果てていました。でも今の担当さんから「線が硬いから、もう少し柔らかくてもいいんじゃないか」とアドバイスされて、それもそうだよなと。だから『しかのこ~』では、ペンの設定やベタの塗り方を変えてみたり、各話で何かしら新しいことをしています。いろいろ試した結果、今はあえて線にライブ感というか生っぽさを残すようになりました。そちらのほうが、1コマ1コマがピシッとしすぎるよりは、ギャグマンガとしてスムーズに読みやすくなる気がしています。

『しかのこのこのここしたんたん(3)』(講談社)p.11

── 線の変化に注目して『しかのこ~』を読み返してもおもしろそうですね!

作品を観た人が「当事者」になれるようなイラストを描きたい

── おしおしおさんは、泣き顔のイラストでも人気を集めています。泣き顔を描くようになったきっかけは何でしょうか?

はっきりしたきっかけは思い出せませんが、昔から女の子の泣き顔が好きなんですよね。2017年に泣き顔をテーマにした『泣かないでシェリー』という同人誌を出したら好評で、そこから泣き顔のイラストのご依頼をいただく機会が増えました。「そういうイラスト集があったら私がうれしい」という自己満足で作った本ですが、同人誌を出したことで「泣き顔を描くイラストレーター」として多くの方に認知していただけたので、作品をまとめることって大事だなと感じました。

── 泣き顔を描く上でのこだわりを教えてください。

こだわりと言うほどでもないかもしれませんが、表情がメインのイラストを描くときは、「このキャラはなぜこんな表情をしているんだろう?」と想像して、ある程度ストーリーのようなものを固めるようにしています。

この『別れよっか』というイラストは、恋人に別れを切り出す女の子を描いたものなんですが、この子は本当は別れたくないんです。でも、お互いのことを考えてそういう選択をした。だから意を決したような表情をしているけど、視線はそらしている。今も涙をこぼしていますが、相手の男の子が去った後、この子はもっとぐちゃぐちゃに泣きはらすんだと思います。

── そんな裏ストーリーが……! しっかり設定を練っているからこそ、一口に「泣き顔」と言ってもバリエーションが豊かなんですね。

涙を単なるアクセサリーにはしたくないんです。人間はいろいろな理由で泣くものだから、その背景をしっかり想像したい。なんとなくで泣き顔を描かないようにしています。そうすることで、作品を観てくださる方も感情移入しやすくなるんじゃないでしょうか。作品を観た人が「当事者」になれるようなイラストを心がけています。

── では、表情を描くのには時間をかけていますか?

はい。ただ、顔のパーツだけでなく、手の仕草や髪のなびき方など全部含めて「表情」としてとらえています。だから、全体をパッと見たときに伝わってくる感情があるかどうかに気をつけて作画しています。

夏が過ぎても、消えたくないなぁ pic.twitter.com/agyIIapJcB

— おしおしお@9/2~21初個展開催 (@oshioshio_info) September 7, 2021

VTuberのデザインは、ファンアート化まで意識する

── 現在の作画環境を教えてください。

iMacと、液タブはWacom Cintiqのたぶん22HD、ソフトはCLIP STUDIO PAINTを使っています。

── 空星きらめさんなど、近年はVTuberのデザインも担当されていますよね。VTuberのデザインで意識していることは何でしょうか?

配信中はバストアップで映ることが多いので、顔周りに印象的なパーツがくるようにしています。あとVTuber界隈にはリスナーさんがファンアートを描いて応援する文化があります。あまりイラストを描き慣れていない方でも描きやすいように、デザインをなるべくシンプルにしつつ、トレードマークになりそうな要素も盛り込むようにしています。

── クライアントとのやり取りでは、どんなことに気をつけていますか? イラストでもデザインでも、発注側のイメージを汲んでアウトプットすることは慣れていないと難しそうです。

初期の段階で、細部までイメージのすり合わせをするようにしています。どんなキャラで、どれくらいの身長で、どういう要素が必要で、逆にどんなことはNGなのか……。あとから作り直すのは大変ですし、大枠を共有できるまでは実作業に移らないようにしています。

「青光」という個展タイトルに込めた思い

── 初個展についても聞かせてください。「青光」というタイトルには、どのような意味が込められていますか?

昔から青色が好きで、「いつか個展を開くとしたら、青にちなんだタイトルにしよう」と決めていました。青という色には、「若さ」や「未熟」といった意味もありますよね。私は作家として発展途上ならではのきらめきを描き続けてきましたし、そういったものを表現する造語として「青光(あおびかり)」と名付けました。イラストレーターとして若輩者の私が、あこがれの方々が作品を展示してきた「pixiv WAEN GALLERY」で個展を開くことができて、この個展自体が自分にとっての「青光」だなぁ……って言うと少し照れくさいですが、そういう思いも込めています。

── 「青光」というタイトルには、いろんな思いが込められているんですね。メインビジュアルは、おしおしおさんらしい切ない雰囲気のイラストです。

やっぱり女の子の泣き顔を描いたほうが、私のことを知ってくださっている方々に喜んでいただけるんじゃないかと思いました。勿忘草(わすれなぐさ)と青いアネモネを描いたのには、実は理由があります。花言葉を調べてみると、「この女の子は、こういう理由で泣いているのかな?」と深読みできるはずです。

── 個展の見どころを教えてください。

わざわざ会場に足を運んでいただくわけですから、作品を直接観ることに意味があるような展示内容にしたいと考えて、特殊な素材や加工を使った作品なども展示しています。会場で流れるBGMも私が選曲したものなので、空間全体の雰囲気も合わせてお楽しみください。あとはグッズに関してもいろいろ提案させていただいたので、ぜひお手にとっていただけるとうれしいです!

── 最後に、クリエイターとして今後の目標を教えてください。

自分の作品のアニメ化、もしくはキャラデザを担当するなど、アニメに関わるお仕事ができたらうれしいです。あと最近は作品をイチから作るのが楽しいので、何か新プロジェクトに立ち上げから参加できたらいいですね。ほかには、イラストで表現しているような切ない世界観をマンガでもやれないか担当さんと話しています。いつかマンガでも泣き顔を描きたいです。

9/21(水)まで開催中! おしおしお個展「青光」

pixivとツインプラネットが共同運営するギャラリー「pixiv WAEN GALLERY by TWINPLANET × pixiv」にて、おしおしおさんの個展「青光」が2022年9月21日(水)まで開催中です。

おしおしおさんが手がけてきたイラストを約100点という大ボリュームで展示します。イラストの素材選びや加工にもこだわっていますので、ぜひ会場にてご覧ください。


開催期間:2022年9月2日(金)~9月21日(水)

定休日:なし

入場無料

所在地:東京都渋谷区神宮前5-46-1 TWIN PLANET South BLDG. 1F

営業時間:12:00~19:00


>>pixiv WAEN GALLERY公式HP<<

>>公式Twitter<<

※混雑時は整理券対応をさせていただく可能性がございます。あらかじめご了承ください。


※新型コロナウイルスへの対策について

おしおしお個展「青光」について、現時点では9月21日(水)までの開催を予定しております。今後も状況を注視しながら対応を進めてまいりますが、新型コロナウイルスの感染状況などにより、開催期間に変更が生じる場合がございます。販売商品や来店方法等を含め、運営状況については、随時pixiv WAEN GALLERY公式HP、公式Twitterにてお知らせさせて頂きます。何卒ご理解賜りますよう、重ねてお願い申し上げます。

一部グッズはWEB販売も!

BOOTHにて個展販売グッズの一部をご購入いただけます。おしおしおさんの提案が盛り込まれたラインナップをぜひご覧ください。



>>BOOTHを見てみる<<

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