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  • 「見せたいもの」を際立たせる。イラストレーター美和野らぐに「ポーズと構図へのこだわり」を聞いた
インタビュー
2022.06.21

「見せたいもの」を際立たせる。イラストレーター美和野らぐに「ポーズと構図へのこだわり」を聞いた

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インタビュー/原田イチボ

イラストレーター美和野らぐさんの初個展「水に溺れて夢を見る」が、東京・表参道にある「pixiv WAEN GALLERY」にて2022年6月29日(水)まで開催中です。

3月に発売された初の作品集『水に溺れて夢を見る』収録のイラストのほか、個人制作シリーズ『幻妖水奇譚』の新作イラストなど約150点を展示します。

美和野さんは、イラストを描くとき、キャラクターのポージングや構図を重視していると言います。それらへのこだわりの裏には、アニメーターとして働いた経験や、2歳から続けているバレエがありました。

美和野らぐ(みわの らぐ)
  • 美和野らぐ(みわの らぐ)
  • アニメーターを経て2020年よりフリーのイラストレーターとして活動中。 水彩画や油絵の手法にヒントを得た、質感的かつ透明感のある描写で注目を集め、書籍の装画や、バーチャルアーティストのイメージイラスト等で幅広く活躍。 ダークな世界観を描いた個人制作シリーズ「幻妖水奇譚」のイラストを中心に収録した初の画集『水に溺れて夢を見る』(KADOKAWA 刊)が22年3月より発売中。 好きなものは爬虫類と日本酒とホラーゲーム。

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高校時代のホームステイが転機だった

── アニメーターを経て、フリーランスのイラストレーターになったそうですね。子どもの頃から絵を描く仕事にあこがれていたんですか?

漠然としたあこがれはありましたが、本気で仕事にするつもりはなく、通っていた大学も美術系とかでは全然なくて……。大学生のとき、大好きなアニメを手がける制作会社がアニメーターを募集しているのを偶然見かけたんですよ。試しにイラストを送ってみたら合格したので、大学を中退してアニメーターになりました。

── 思い切りのいい人生ですね……!

本当ですよね(笑)。普通に就職するつもりだったのに、たまたま絵を描くのが仕事になりました。我ながら運が良かったと思います。

── とはいえ、アニメスタジオの採用に合格するくらいですし、趣味といえど相当の量を描いてきたのでは?

物心つく前から絵は描いてきましたが、高校2年生のとき、アメリカに1か月間ホームステイをしたのが転機になりました。私が絵を描くのが好きだと知って、ホストマザーがコロラド州のある場所に連れて行ってくれたんですが、街中にアート作品があふれていました。そこでひとりのクリエイターに「あなたはどんな絵を描くの?」と聞かれて、即興でイラストを描いたら、すごく喜んでもらえました。それから意識が大きく変化したというか、スイッチが入ったというか、ひたすら絵を描くようになり、当時は100枚ノートを2週間で使い切るほどでした。

── すごいですね。現在、フリーのイラストレーターになって何年目ですか?

2019年の年末に会社を離れたので、まだ2年ちょっとです。生きていくためには稼がないといけませんが、再就職先を探すには中途半端な時期だし、「これはもう絵に本腰を入れていくしかないぞ」と覚悟を決めました。仕事に繋げるために、当時はとにかく絵を描いてSNSに投稿するようにしていました。

雪とうさぎとないしょの話

by 美和野らぐ

2020年1月に投稿された作品

── 自信作以外もアップしていたのでしょうか。

まずは投稿しないと「イラストレーター美和野らぐ」を知ってもらえませんからね。少しでも露出を増やすことが大事だと考えました。

透明感のある塗りは、西洋絵画がルーツ

── 現在の作業環境を教えてください。

ソフトはCLIP STUDIO PAINT EXです。線画は液タブのWacom Cintiq Pro 24、色塗りは板タブのWacom Intuos Pro Mサイズを使っています。液タブだとつい姿勢が悪くなってしまうので、姿勢を矯正する目的で使い分けています。

デジタル作画歴は10年ほどですかね。受験直前に板タブを買ったので、母親からすごく怒られた記憶があります(笑)。

── 美和野さんといえば、透明感のある作風ですよね。イラストに透明感を出したいなら、どんなところを意識するといいでしょうか?

やっぱり塗りですね。私は昔から水彩画や油彩画を見るのが好きなんですが、近世~近代の西洋絵画って、陶器のように透けた肌でもよく見るとすごくしっかり塗られているんですよ。そこから「ただ単純に淡い色を使うよりは、薄い色と濃い色のコントラストを意識したほうが絵に透明感が出るようになるんじゃないか」と考えました。

── 薄い色と濃い色のコントラスト?

たとえば、差し込んだ光と陰の境界線に一番彩度が高い色を配置しています。その彩度が高い色の隣に暗い色を置いて、さらにその隣には水色と灰色を混ぜたような色を置いています。この色の並べ方は、昔の絵画から学んだものです。

🍀

by 美和野らぐ

境界となる部分がピンクがかった色で塗られ、陰は水色と灰色を混ぜた少しくすんだ色で塗られている。

美和野らぐさんFANBOX
美和野さんのFANBOXでは、ご本人による解説やメイキングを見ることができます。

── 光の表現にこだわるイラストレーターさんはカメラを趣味にしているイメージがありましたが、美和野さんが描く光のルーツは水彩画や油彩画にあるんですね。

絵画の中でも特に印象に残っているのは、ウィリアム・アドルフ・ブーグローの「漁師の娘」という作品です。中学生時代、この作品にすっかり恋して、ポストカードを大切にしていました。

ウィリアム・アドルフ・ブーグロー「漁師の娘」 1872年(東京富士美術館所蔵)

絵のどの部分がメインで、どの部分がサブかを明確にする

── アニメーターの経験が現在も活きていると感じることはありますか?

アニメーター時代の上司に「アニメで一番大事なのは目だ。画面をぱっと見たとき、まずキャラクターの目に視線が行って、それから初めて周辺に意識が向くんだ」と教わり、今もイラストを描くときは目を意識しています。

── 「目を意識して描く」とは、具体的にどういうことでしょうか?

視線誘導と言うと少し難しく感じるかもしれませんが、要するに「絵のどの部分がメインで、どの部分がサブかを明確にする」ということですよね。全部が全部きっちり描き込むと、どこを見ていい絵なのかわからなくなっちゃいますから。で、キャラクターの目、つまり顔は一番目立たせたい部分なんですよ。だから彩度が高い色や、手を顔の近くに配置する。逆に彩度が低い色などはメインから離れたところに置いて、その箇所はあまり描き込まないようにします。顔まわりの情報量を高くして、そこから離れた部分は「抜く」イメージですね。

桃色予報

by 美和野らぐ

── 美和野さんのイラストは、背景などにぼかしを効果的に使っていますよね。それも「抜く」方法の一種ですか?

背景を描くのが苦手なので、ぼかしを使い始めました(笑)。ぼかすことで、「ある程度の情報量はありつつも目立ちすぎない」というバランスが取れている気がします。あとはイラストに奥行きも生まれます。

── ほかにアニメーター時代に学んで今も役立っていることはありますか?

「日常の自然なポーズを観察しなさい」と言われてから、周囲の人の何気ない姿を写真に撮って、それを絵に起こす練習を続けています。気の張ったポーズってイラストに良くも悪くも緊張感を生むんですよね。私は気の張ったポーズを考えるのが向いているので、逆にそういった自然なポーズを描いてみると、服のシワや肩の可動域などに発見があります。

── 絵を描き始めた頃はどんな練習をしていましたか?

もともと素体(ヒト型の模型のこと)を描くのが好きなので、学生時代からいろいろなポーズの素体をボールペンで一発描きしていました。ちょっとしたクロッキー感覚ですね。鉛筆だとやり直しできるけど、ボールペンは修正が効かないので、描くときに頭を使います。

ポーズから考えて、それが映える要素を足していく

── 美和野さんは構図や、キャラクターのポーズを重視してイラストを描いていると聞きました。良いポーズとは、どんなものでしょうか?

私は2歳からバレエを続けているので、キャラクターのポーズを考えるときもその経験が役立っています。個人的な好みとして、直線的なポーズだと感情が上手く表現できないような気がするので、曲線も出せるような動きや画角を探っています。「何を見せたいか」によって、キャラクターのポーズや絵全体の構図も変わってくると思うんですよね。

── どのように組み立てていくことが多いのでしょうか。

ただ座っている姿にしても、手を顔の近くに持ってきたら顔に焦点が当たります。そして座っている膝に花を置くと、そこもポイントになる。まず何を見せたいか決めないと、構図も決まりません。モチーフやテーマをスタート地点にして絵を描く人が多いとは思うんですが、私はポーズを最初に考えて、そこからポーズが映えるような要素をどんどん足していきます。あくまで自分の場合ですが、テーマから絵を描き始めると、どうしてもテーマの範囲に収まった仕上がりになってしまって、突出したアイデアが生まれない気がするんです。

── ポーズを最初に考えて、それが映えるように要素を足していくということですね。

過去に描いた『水の騎士』を例にしますと、これはすごく縦のラインを強調した構図ですよね。

水の騎士

by 美和野らぐ

剣に沿って顔と腕を配置しているので、斜めに伸びた剣のラインが目を引くようになっているんです。この剣によるラインを強調しつつ、さらに躍動感を出すために水を足しました。そして右の目元にまで水を飛ばすことで、キャラクターの顔まわりに視線を集めて、そこから視線が剣の斜めのラインに流れていって……という効果を狙っています。

── なるほど。「この縦のラインを見せるイラストにしたい」という意図から逆算して細かい部分を決めていくんですね。あとは美和野さんは作品のタイトルにもこだわっていると聞きました。

では、これは『毒花吐きの狼少女』を例にしますね。最初はただ「座っている女の子を描こう」というところから描き始めたんですが、途中で獣耳が描きたくなって、狼少女になりました。狼少女ということは、この子は嘘をつくのかもしれません。そこから「キレイな花には毒がある」という言葉を思い出して、じゃあ嘘をつくことを「毒の花を吐いている」と捉えて、花を加えてみよう……という流れで描き進めていきました。

毒花吐きの狼少女

by 美和野らぐ

── 作品を完成させてからタイトルを決めるのではなく、アイデアをふくらませたり、作品の世界観をまとめる機能としてタイトルを使っているんですね。

そうですね。

── イラストレーターさんは、「こういうモチーフを描きたい」というビジュアル先行か、「このキャラはこういう子で、この世界はこういう世界で……」という設定先行のどちらかに分かれる印象だったので、そういう描き方もあるのかと驚きました。

以前メイキング映像を公開したとき、「変わった描き方をしますね」と驚かれました(笑)。ラフの途中で線画を描き始めて、線画の途中でラフに描き足して、描き足したぶんを線画に反映しつつ、一部を塗り始めるみたいな……。描きながらアイデアがふくらんでいくので、ついラフと線画を行ったり来たりしちゃうんですよ。普段の仕事でも、可能な限り、ラフをガチガチに決めすぎないまま進めさせてもらっています。

Wacom Cintiq Pro 24を使った美和野さんのライブペインディング「Drawing with Wacom」

動画と関連した美和野さんのインタビューはこちら

── スランプになったときはどうしていますか?

どうしてもアイデアが湧いてこないときは、音楽の力を借りています。心が動くような曲を聴いて、時には自分で踊ってみながら「こういうものを描いてみたい」という方向に気持ちを高めています。

人間と「あやかし」の戦いと共生を描いた『幻妖水奇譚』シリーズ

── 個人制作シリーズ『幻妖水奇譚』について教えてください。

大半が水に沈んだ街を舞台に、人間と「あやかし」の戦いと共生を描いたオリジナル作品です。5年ほど前に最初のアイデアが生まれたんですが、当時の私は、戦いを通して感情表現するような物語への興味が強くありました。そこから「階層ごとに雰囲気が様変わりする街。その街を走り回る少年少女たち……」というふうにイメージがふくらんでいきました。

── 人間の秘密組織「鬼」や「あやかし」など登場人物が多く、群像劇としても楽しめます。特に思い入れのあるキャラクターはいますか?

「鬼」の一員でありながら「あやかし」の血を引く主人公の水野ナギです。ナギちゃんは、『幻妖水奇譚』を制作する前から描いていたキャラクターで、ショートヘアにチョーカー、脚と私の好みが詰まっています(笑)。

生きる街×タロットカード

by 美和野らぐ

22

── 3月に発売された初めての画集も、今回の個展も『水に溺れて夢を見る』というタイトルですよね。

画集を出版したKADOKAWAの担当さんと「これまでのイラスト作品と幻妖水奇譚を踏まえてどんなタイトルがふさわしいのか?」と話し合いました。その結果、やはり私の作品は「水」というのがひとつの大きな要素になっているのかなと。さらに幻想的な雰囲気を「夢」という言葉に託し、このタイトルになりました。水に溺れた瞬間に見た夢、というイメージです。

『水に溺れて夢を見る 美和野らぐ作品集』(KADOKAWA)

── オーロラ素材をあしらうなど、個展会場は美和野さんの作風を再現したような雰囲気に仕上がっています。

私ひとりでは実現しないことが実現して、本当にスタッフの皆さんに感謝です。作品はもちろん、ぜひ会場の雰囲気も楽しんでください。

── 「美和野さんは素材への感度が非常に高い」と個展の担当者から聞きました。

きっかけは『青の祓魔師』のBlu-rayでした。銀の紙がすごく印象的で、当時、「この紙はなんですか? 私もこれで本が出したいです」と印刷所に問い合わせました(笑)。そこからすっかり「沼」にハマって、コンビニのお菓子売り場を眺めて「この素材にこの加工……。この箱はコスト高いぞ!」なんて考えています。せっかくの作品なので、紙自体にも世界観があったほうが楽しいじゃないですか。よくお願いするデザイナーさんも沼の仲間なので、「この素材なら、あえて線画だけにしたほうが映えるんじゃないか」など提案してくれます。

── 細部にまで美和野さんのこだわりが詰まった個展、とても楽しみです! しかし3月に発売された画集と個展をもって、『幻妖水奇譚』は一区切りなんでしょうか?

いえいえ、まだ全体のほんの一部に過ぎません! まだ出し切れていない部分がいろいろあるので、今後も同人誌などで発表していければと思っています。そして、やはり自分が元アニメーターということもあって、ゆくゆくは『幻妖水奇譚』がアニメになったらうれしいなと思っています。

── FANBOXにて、美和野さんご自身による個展の解説もあげられています。そちらもぜひご覧ください!

6/29(水)まで! 美和野らぐ初個展「水に溺れて夢を見る」開催中

pixivとツインプラネットが共同運営するギャラリー「pixiv WAEN GALLERY by TWINPLANET × pixiv」にて、美和野らぐさんの初個展「水に溺れて夢を見る」が2022年6月29日(水)まで開催中です。


オリジナル、商業イラストを含め、約150点のイラストを展示します。美和野さんが歴代の作品から特に印象深いイラストを選び作成したアクリルアートなど、展示方法にもこだわっています。美和野さんのイラストの透明感を象徴する「水」をテーマに、透明感のある素材やオーロラカラーを用いたグッズの販売もございますので、ぜひお立ち寄りください。


開催期間:2022年6月10日(金)~6月29日(水)

定休日:なし

入場無料

所在地:東京都渋谷区神宮前5-46-1 TWIN PLANET South BLDG. 1F

営業時間:12:00~19:00


>>pixiv WAEN GALLERY公式HP<<

>>公式Twitter<<

※混雑時は整理券対応をさせていただく可能性がございます。あらかじめご了承ください。


※新型コロナウイルスへの対策について

美和野らぐ個展「水に溺れて夢を見る」について、現時点では6月29日(水)までの開催を予定しております。今後も状況を注視しながら対応を進めてまいりますが、新型コロナウイルスの感染状況などにより、開催期間に変更が生じる場合がございます。販売商品や来店方法等を含め、運営状況については、随時pixiv WAEN GALLERY公式HP、公式Twitterにてお知らせさせて頂きます。何卒ご理解賜りますよう、重ねてお願い申し上げます。

グッズのWEB販売も!

BOOTHにて個展販売グッズの一部をご購入いただけます。美和野さんの絵柄に合わせ透明素材で制作したグッズなどをぜひご覧ください。

>>BOOTHを覗いてみる<<

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