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インタビュー
2021.04.15

「自分語り」にならないためにはどうしたらいい?「日常」マンガの 極意をエッセイマンガ編集者に聞いた

  • インタビュー
  • マンガコンテスト
  • 日常マンガ

構成/原田イチボ@HEW

ピクシブエッセイ「とある日常マンガ賞」が、5月10日23時59分まで応募受付中。同コンテストの大きな特徴は、「日常」を題材としていれば、フィクション、ノンフィクションどちらもOKということ! 作者自身の体験を元にした赤裸々なエッセイでも、ほのぼの動物ものでも、異世界を舞台にしたファンタジーでも、幅広いジャンルを受け付けています。


とはいえ、「なんでもあり」だからこそ、どんな作品を描くべきか悩んでいる人もいるかもしれません。そんな人にはヒントになるかも? 「とある日常マンガ賞」を選考するKADOKAWAエッセイマンガ編集者の斎数さん、佐藤さん、松本さんに「日常」というテーマのおもしろさについて伺いました。

喜怒哀楽どれかの感情を動かしてくれるものがあってほしい

── 「とある日常マンガ賞」は、昨年に続き、今年で2回目です。前回は何作品ほど集まったのでしょうか? また、前回はフィクションとノンフィクションの割合はどれくらいでしたか?

松本:応募期間中に投稿されたのは296作品で、フィクションの方が少し多かった印象です。エッセイ以外の作品にも間口を広げるため開催したコンテストだったので、上手く狙いが当たってくれました。うちの編集部でもエッセイ以外のマンガを刊行する例が増えてきて、もっとフィクションも手掛けていきたい思いがありました。とはいえ、エッセイマンガ編集部がバチバチのバトルマンガを出すというのも唐突ですよね(笑)? でも「日常」というテーマであれば、自然に受け止めていただけるんじゃないかと考えたんです。

── 副編集長の斎数さんが「とある日常マンガ賞」に期待することは何でしょうか?

斎数:描き手にも読み手にも、エッセイマンガというジャンルを好む方は一定数いらっしゃいます。そこで、エッセイマンガと共通するものはありつつ、さらに幅広い作品を受け入れる「日常」という切り口でコンテストを行うことで、「エッセイマンガ以外も描いて(読んで)みようかな」となり、描き手や読み手の層を広げられたらと期待しています。

創作マンガ「姫ばあちゃんとナイト」その1

by 佐倉イサミ

19

>>pixivコミックで連載を読む<<

── 佐藤さんは、前回の大賞作である『姫ばあちゃんとナイト』を担当していますよね。この作品の魅力は、どこにあるとお考えですか?

佐藤:作者の佐倉イサミ先生は、もともとプロとして活動されているだけあって、この短い作品の中にもテクニックが詰まっています。奇抜な展開はなくとも、ひとりひとりのキャラクターが魅力的で、何気ない日常に心が温まりますよね。実際、佐倉先生は昔、おばあちゃんっこで、柴犬を飼っていたそうです。そんな実体験に基づいた、お年寄りが孤独にならない世界への願いが感じられましたし、そのメッセージに自然と共感できました。


松本:ストーリーやキャラクターに共感できるか、というのは大事ですよね。喜怒哀楽どれかに感情を動かしてくれるものがあってほしいなぁ、と。


斎数:共感できるものがあると、自然と物語の続きが読みたくなります。「この先が見たい!」と思えるかは、選考上のポイントでもありました。

── 大賞の『姫ばあちゃんとナイト』も、入賞した『1DKメイド。』『豆知識で精神的にマウント取ってくる彼女』も、他の日常の1コマも見たいと思わせる魅力がありますね。

斎数:大賞作は賞金10万円に加え、ピクシブエッセイで連載・単行本化ですからね。われわれ編集部としても、やはり書籍化を見据えて作品をチェックしています。となると、「単行本のボリュームにまで広げられそうな設定やキャラクターか?」というのは選考でも意識する要素ではあります。

豆知識で精神的にマウント取ってくる彼女

by 尽

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>>pixivコミックで連載を読む<<

特別な体験は「あれば良いよね」程度

── 「『日常』がテーマであれば、なんでもOK」という形式は、自由だからおもしろい反面、自由だからこその難しさもありますよね。いくら日常といっても、たとえば私がただ「昨日はこんなご飯を食べました」というだけを描いても地味な自分語りでつまらない……。

松本:でも自分にとっては普通でも、他人にとってはイレギュラーなことってあると思うんですよね。おもしろい、おもしろくないは、僕らが判断するので、あまり深く考えずに応募してほしい気持ちはあります。応募作品は全てチェックしていますので!


斎数:それに、ただの「昨日はこんなご飯を食べました」でも描き方次第ですよね。


佐藤:むしろ特別な体験なんて全然なくて良いんですよ。みんなが潜在的にモヤモヤっと感じていることを提示して共感させるのが、日常マンガにおいて大事なことなんだと思います。

── 「昨日はこんなご飯を食べました」の例で言うと、「実はこんな珍しいものを食べて……」と言える変わった題材が何かないか考えたくなりますが、そういうことではない?

佐藤:たとえ特別なご飯じゃなくても、質素な食卓を少し整えてみるようなことに共感する読者はたくさんいるはずです。ほかにも、ひとりのときの食事は超ズボラとか。変にかっこつけず、自分のちょっと恥ずかしい部分や嫌な部分を掘り下げることは創作において重要です。そこをあえて表現してみると、意外と大勢の人が「自分もそうだ!」と共感してくれるかもしれませんよ。

── 特にコミックエッセイの分野だと、「自分自身に強烈な体験がないから描けない」と思っている人も多そうです。

佐藤:少なくとも私は、そういうものではないと思っています。松本くんはどう?


松本:特別な経験を持っていたら、それはそれで武器になるけど、ないならダメだということはありません。「あれば良いよね」程度ですかね。それよりも、キャラやストーリーに魅力があるか、共感できるか、心が動かされるか。こういった点を抑えていれば、テーマ自体は平凡でも、特別な作品になりえます。一番大事なのは、「共感性」。エッセイに限らず、共感性を抑えていれば、他のクリエイターから一歩抜きん出きることができます。
斎数:たとえば、作者のつづ井さんのオタクな日常を描いた『腐女子のつづ井さん』シリーズは、特別何が起こるわけではありませんが、つづ井さんの推しへの愛がおもしろいですよね。二次元のキャラクターの身長がどれくらいの高さか、壁にテープを貼って確かめてみるとか、オタクなら誰でも「わかる!」と感じる描写ではないでしょうか。そういう「わかる!」というポイントをマンガに落とし込んでいるから、ヒット作になったんでしょうね。

ただの自分語りにしないためには?

── ただの自分語りではなく、他人が読んでおもしろい作品にするためには、どうすれば良いでしょうか?

斎数:難しい質問ですが、「自分はおもしろく感じるけど、他人もそう思うかな?」と作品を客観視できる作家さんは強いです。


松本:家族もののコミックエッセイを描く人はとても多いんですが、個人の育児日記の範疇を超えた魅力がある作品となると、ごく限られてしまうんですよね……。「わかる!」や「そんなことがあるの!?」と思わせてくれる要素があれば、ただの自分語りではなくなっていきます。


佐藤:登場人物が感じた喜怒哀楽を読者も共有できること。それが作品をただの自分語りにさせないポイントだと思います。社会へ問題提起するような内容のコミックエッセイを最近目にしたのですが、問題の説明に終始した内容で、この作品に心を動かされるのは、その問題にもともと関心がある人だけなのではないかと少しもったいなく感じました。問題を通して作者自身が感じた悲しみや怒りを表現してくれていたら、自分ごとに引き寄せて共感する読者がたくさん現れたかもしれません。


斎数:コミックエッセイという形式を取るのであれば、登場人物の感情や人柄が見えてこないと、なかなか読者は入り込めません。「作者がどう感じ、どう考えたのか?」が表現されていないと、ただの解説になってしまう。自分の想いを赤裸々に語る姿勢が大切なんだと思います。

── なるほど、共感性が大事。とはいえ、ただの自分語りになってしまっている作品でも、作者は「これはみんながおもしろく感じるはず!」と信じている場合がありますよね。客観的に作品を見るためには、どうすれば良いでしょうか?

松本:そういうときは、家族や友人など他の人に一度読んでもらうのが一番です。作品を見せるのは恥ずかしいかもしれませんが、なりふり構わず他人に意見を求めても良いと思います。「このマンガ、ただの自分語りになっていないかな?」と誰かに聞いてみるだけで全然違ってきますので。


佐藤:もしくは、SNSに投稿するのもありです。リツイートされた数が今後の指針になりますし、やってみて損はないんじゃないかな。


斎数:リアルな数字を確認できますからね。SNS上の数字に引きずられて、そのメディアに特化しすぎた作風になってしまうリスクはありますが、作品を外に出してみることは重要です。

初手で心を掴むために、サムネイルを工夫せよ

── 作品を選考する編集者に「この作品はおもしろそうだな」と初手で思わせるためテクニックはありますか?

松本:もちろん全ての応募作に目を通してはいますが、タイトルを文字で記しただけのサムネイルが並ぶ中で、ひとつだけカラーの扉絵をどんと持ってこられたりすると、「おっ!」と目につきますよね。あとは、「この作品は一言で説明するとこうです」とか「こういうものを描きたかった作品です」と説明するページを添えてもらえると、こちらもそのつもりで作品に臨めます。「とにかく早く作品を読んでほしい」と感じる作家さんは多いと思いますが、だからこそ、読む人のことを考えたひと手間加えることで、他と一気に差がつけられるんじゃないでしょうか。


佐藤:サムネは大事ですよね。作品の1枚目は、文字だけでタイトルを記すのではなく、印象的なコマを持ってきたり、登場人物をアップにしてみたり、思わずクリックしたくなるようなものにすると良いです。


斎数:タイトルも大事ですよね。「日常」とか「〇〇家の日常」というだけのタイトルだと、どうしてもイメージが湧きづらい。そういう点では、受賞作の『1DKメイド。』は秀逸ですよね。「1DKにメイド? どういうこと?」と一気に心を掴まれました。
松本:コミックエッセイのジャンルで大ヒットを飛ばした、永田カビ先生の『さびしすぎてレズ風俗に行きましたレポ』はタイトルが秀逸ですよね。応募作をタイトルで落とすことはありませんが、それだけで読もうと思わせるインパクトのあるタイトルというものは存在します。


佐藤:編集部でタイトルを考えるとき、思いつく限りの形容詞とかキーワードを並べて、さらに類語辞典もひいて、よりキャッチーな言葉を探して、あとは長すぎてもいけないから文字数も気にして……と熟考します。もしも書籍化するとなったら、編集者と一緒に改めてタイトルを考えることになるとは思いますが、応募の段階で、いったん作家さんの方でもベストなタイトルを考えてみても良さそうです。やはりタイトルに惹かれるものがあると、こちらの読む姿勢が少し変わってきたりもします。

人間の生活や感情が廃れることはない

── 「日常」という題材は一見地味に感じられますが、日常のおもしろさはどこにあると思いますか?

松本:ちょっと臭い表現かもしれませんが、日常って無限の可能性があると思うんですよ。自分と同じ年齢・性別の人間を集めても、過ごしてきた人生はそれぞれ違うし、同じような経験をしたことはあったとしても、そこから感じ取ったことは絶対に違う。人間には一人ひとりドラマがあって、掘り下げ方や目のつけどころ次第にさらに多彩に広がるはず。そう考えると、「日常って本当に地味かな?」と思うんです。


斎数:日常の中にどういう非日常を見出すか、ですよね。創作全般に言えることだと思いますが、日常のふとした違和感を上手く掘り下げることができれば、それは立派な作品です。


佐藤:設定や展開に流行り廃りはありますが、人間の生活とか感情が廃れることはありません。『鬼滅の刃』が大ヒットしたのは、鬼殺隊とか呼吸とかの設定が目を引いたのもありますが、描かれている人間の感情にみんなが共感したからこそだと思うんです。


松本:炭治郎の「俺は長男だから我慢できたけど次男だったら我慢できなかった」というセリフとか、こういう謎なセリフで自分を鼓舞しようとする場面ってあるので、「わかる!」と思わせるものがありますよね。

── 読者の感情を動かすものが感情であるならば、日常マンガは全然地味ではありませんね。

松本:みんな鬼を殺したことはないけれど(笑)、誰もがそれぞれの日常を過ごしている。むしろ描き方次第で、「共感」という意味では、日常マンガの方が大きな可能性を秘めているのかもしれません。


── ここまでお話を伺ってみて、「とある日常マンガ賞」というのは、「何を描くか」ではなく「どう描くか」を非常に重視しているコンテストであることがわかりました。

(3人とも大きく頷く)

── 最後に、「とある日常マンガ賞」への応募を考えている人に向けてメッセージをお願いします。

斎数:もちろん画力があるに越したことはありませんが、新たな視点を提示してくれる作品であれば、フィクションでもノンフィクションでも大歓迎です。みんなが日常の中で潜在的に感じている「何か」をすくいあげるような作品をお待ちしています。


佐藤:特別な体験じゃなくても、今の自分の日常をじっくり観察してみれば、何かおもしろいものが見つかるかもしれません。ぜひ気軽に応募してみてください。


松本:まず応募してくれなきゃ、こちらも賞をあげられません(笑)! 実は『20時過ぎの報告会』の作者のヤチナツさんは、「とある日常マンガ賞」第1回で受賞を逃した方なのですが、ひとりの編集者の目に留まり、出版まで至りました。たとえ受賞しなかったとしても、「この作家さんはストーリーは拙いけど動物を描くのが上手いな」と編集者の印象に残って、その後、動物ものの企画で新たにお声がけする……なんてこともあるかもしれません。受賞だけが全てではないし、せっかく興味があるのに作品を応募しないのはもったいないです。応募作は必ず全部読むので、安心してください!

>>pixivでシリーズを読む<<

ピクシブエッセイ「第2回とある日常マンガ賞」開催中!

「日常」を題材としたマンガ作品を募集するコンテスト「第2回とある日常マンガ賞」開催中!


なんと大賞作品は賞金10万円+ピクシブエッセイで連載・単行本化!

2020年3月に開催された第1回コンテストでは、受賞した3作品のうち2作品がpixivコミック内にて連載、1作品が連載予定となっています。


日常を描いていれば、赤裸々なエッセイや想像した恋愛、動物もの、異世界物語など、テーマは自由です。
みなさまのオリジナリティあふれる日常をお待ちしております。

>>コンテストページ<<

開催期間
2021年3月18日〜2021年5月10日 23:59


投稿形式
作品は、必ず4枚以上でお願いします。この枚数に該当しない作品は審査対象外といたします。カラー、モノクロは問いません。
<テーマ例>
『腐女子のつづ井さん』のような自身の毎日を赤裸々に綴ったエッセイ
『ほむら先生はたぶんモテない』のような先生と生徒という関係性のラブコメ
『子連れ勇者』のような異世界をテーマにした育児物
『クマとたぬき』のような動物の日常


受賞賞品
大賞
若干名
賞金:10万円
「ピクシブエッセイ」にて連載、書籍化

入賞

若干名
賞金:5万円
「ピクシブエッセイ」にて連載、書籍化

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