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インタビュー
2022.08.10

「人を泣かせるイラストが描きたい」イラストレーター 荻poteからアニメ塗りの極意を学ぶ

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「人を泣かせるイラストが描きたい」イラストレーター 荻poteからアニメ塗りの極意を学ぶ

イラストレーターの荻poteさんの個展「彗月(はづき)」が、東京・表参道にある「pixiv WAEN GALLERY」にて2022年8月24日(水)まで開催中です。内装にもこだわりノスタルジックな雰囲気ただよう空間の中、オリジナルイラストを中心に80点が展示されています。


ベタ塗りで陰影がはっきりしたアニメ塗りは初心者にも取っつきやすい一方で、ともすれば単調になりがちな難しさもあります。それを独自に進化させ、いわば“アニメ塗り・改”とも言うべき手法を追求する荻poteさんに、テクニックの一部を教えてもらいました。

荻pote(おぎぽて)
  • 荻pote(おぎぽて)
  • 新潟県出身、在住イラストレーター。 アニメ調の精彩な美少女イラストを主軸に、様々なメディアにて作品を発表。 エモーショナルな題材や瞬間を切り取ったような画面構成で多くの反響を得る。 主にバナナと納豆でエネルギーを形成。昆虫採集愛好家。

  • pixiv
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『けいおん!』は衝撃だった

── 本日はよろしくお願いします。「荻pote」というペンネームは響きがかわいいですね。

本名とはまったく関係ないうえに、実は一度改名して「荻pote」になっています(笑)。もともと作品を発表していたペンネームがあまりにふざけていたので、少しお仕事をいただけるようになると変えたくなりまして。

── いつ頃から仕事の依頼を受けるようになったんですか?

あまり詳しく言うと年齢がバレるので恥ずかしいんですが、初めてお仕事をいただいたのは高校生のときです。趣味でウェブ小説を描いているという方から挿絵をお願いされました。依頼がだんだん増えていき、大学在学中に「これならイラスト1本で食べていけるんじゃないか」と見込める収入を得られるようになったので、卒業後からイラストレーターとしてフリーランスで活動しています。

夏至

by 荻pote

2013年投稿のオリジナルイラスト

── 昔からイラストレーター志望だったんですか?

子どもの頃から創作が好きで、絵に携わる仕事への憧れはずっとありましたが、本気でイラストレーターになろうとしていたわけでもなく、大学では教育学部に在籍していました。逃げ道として教員免許を取ろうと思ったんです。

── 美大に通っていたわけではないんですね。

はい。ただ美術教師になるつもりだったので、教育学部で日本画などの勉強をして、作品制作も行っていました。現代のイラストと日本画は通じるものがあると思うんです。どちらも「平面的・デザイン的な味わい」を感じるというか。なので仏教美術はよく観ていましたし、現代美術家の会田誠さんなど、日本画色を残しながら挑戦的な表現をする作家さんにも惹かれます。

── 影響を受けた作品やクリエイターを教えてください。

影響を受けたとなると京都アニメーションの作品、特に『けいおん!』は衝撃でした。2.5次元とも言うべき現実寄りのモーションと、がっつりエフェクトを乗せた美しい背景。間違いなく自分の作風のルーツになっています。

爪のび気味子

by 荻pote

2016年投稿のオリジナルイラスト

── アニメやマンガは昔からお好きだったんですか?

いえ、全然でした。高校の友人がきっかけでアニメオタクになり、「ペイントツールSAI」に出会い、美少女イラストを描くようになりました。

── ということは、それまでは全然違う作風だったんですか?

僕のpixivアカウントの最初の投稿みたいなイラストをずっと描いていました(笑)。あれは中学生のときに「Microsoft Paint」で描いたものです。なんか思い入れがあって消せないんだよなぁ……。

陰影とエフェクトで、アニメ塗りは変わる!

── 荻poteさんはアニメ塗りを得意としていますよね。アニメ塗りは初心者も挑戦しやすい塗り方ですが、一歩間違えると、のっぺりした印象になってしまいます。

アニメ塗りとは、1~2色で陰影を描いたベタ塗りの手法です。シンプルゆえに取っつきやすいですが、そのぶん粗が出やすい難しさもある。そもそもアニメにおける塗り方は、絵を動かしやすいように単純化したものなので、イラストだと物足りなく見えてしまいかねません。

── 荻poteさんは、その問題をどうクリアしましたか?

ひとつは陰影ですね。アニメ塗りの定義として「1~2色で陰影を描く」と言いましたが、これは効率重視で少ない色数にしているわけです。そして陰影と一口に言っても、光の当たらない部分の「陰」と、物体から落ちた「影」に分けられ、アニメでは「影」は省略して描かれがちです。でも動かさないイラストであれば、陰影を何色でも使って存分に描き込んでいい。まずは陰影のディテールを深めるだけで、アニメ塗りは大きく変わります。

荻poteさん自身のYouTubeチャンネルで、陰影のコツをまとめた動画が公開されています。

あとはエフェクトです。アニメ塗りはシンプルなぶん、空気感などの演出がよく映えます。アニメにおける効果演出を足すつもりで、僕の場合、実写のテクスチャをオーバーレイ・乗算合成などで乗せたり、自作のレンズフレアを使ったりしています。背景、キャラ、手前のオブジェの3レイヤーの間にエフェクト、空気を加えて5レイヤーにすると、一気にイラストに奥行きが出ますよ。

grow

by 荻pote

僕のイラストは基本的にはアニメ塗りですが、キャラクター以外は厚塗りを使うこともありますし、写実的な塗りを使うこともあります。イラストは自由なのだから、「アニメではこうだから」と囚われず、好きなようにカスタマイズしています。

── なぜアニメ塗りにこだわりを持つようになったのでしょうか? ほかの塗り方を試した時期はありますか?

「ペイントツールSAI」で絵を描き始めた当時、「SAIの使い方」のようなYouTube動画を参考にしていたんですが、その動画がアニメ塗りを使っているのを真似したのが始まりです。違う塗り方を遊びで試してみることはありますが、意識して変えようとしたことはありません。特別こだわっているつもりはないですが、自分に合っているということなんでしょうね。大好きな京都アニメーションさんはもちろん、イラストレーターさんだと昔から憧れのかんざきひろ先生など偉大な神々がいる分野ですから、アニメ塗りには普遍的な良さがあると信じていますし、自分もそこに近づきたい一心です。

いろいろなストーリーをイラストに詰め込む

── 荻poteさんのイラストは、背景や小物、ガラスの反射、光の屈折と細部まで描き込まれ、情報が詰まっていますよね。

1本のアニメに比べて、1枚のイラストはどうしても情報量で遅れを取ります。ぱっと見で訴えかけることはできても、「じゃあアニメを観て泣くように、イラストを観て泣くことはあるか?」と聞かれたら、まぁ滅多にありませんよね。でも自分は、1枚のイラストで人を泣かせてみたいんです。となると、まずは背景やエフェクトなどを盛り込む必要があります。ただ、アニメが持っている「時間」という武器をイラストは持っていません。アニメが30分かけて人間を感動させるように、イラストが一瞬で人間を感動させるのは至難の業です。そこを何とか乗り越えるべく、反射や屈折を駆使して、いろんなストーリーをイラストに詰め込む。イラストという「一瞬の芸術」で物語を表現することを模索しています。

春名残

by 荻pote

窓から外を見つめる少女。その視線の先にあるものは? 想像が膨らむ一枚

── しかし、それだけディテールまで凝ったイラストを描くとなると、アイデアに悩むことはありませんか?

描こうと思えば自然と手が動くので、意外と行き詰まりを感じたことはない気がします。

── 想像力がすごい……!

想像力というか、妄想力ですね(笑)。

── たとえば画集の表紙のイラストには、節水ポスターや粉洗剤など、「たしかに学校の水飲み場ってこんなものがあったけど、イラストを見るまで忘れていた」というモチーフが登場します。そのような「些細だけど確実に存在したもの」の描写がすごいなと。

もしかすると映像記憶のような能力が若干あるのかもしれませんが、これまで見てきた印象的な風景が写真のように脳内の引き出しに入っている感覚です。そこから引き出したイメージをもとに、あらためてネットで資料を検索したりして、イラストに落とし込んでいます。

あいきょう

by 荻pote

3

── 荻poteさんは新潟県出身と聞きました。ノスタルジックな風景描写には、ご自身の体験も反映されているんでしょうか?

もちろんイラストにする上で変えている部分はたくさんありますが、自分の育った環境に近い風景だとは思います。僕の地元の上越市はちょうどいい具合の田舎で、ノスタルジーに浸れる街なんですよ。ただ、僕が自分自身の作品のような青春を過ごしていたわけでは全然ありません。あれ全部が実体験だとしたら相当のリア充ですよね(笑)。自分の原風景をキラッキラに昇華した上で、どこか物悲しさも加えて、僕の作品はいわば「誇張した青春」なんです。

長い待ち時間

by 荻pote

── 荻poteさんの作品にある少しの物悲しさ、分かる気がします……! 作品の資料として、どこかに撮影に出かけるようなことはありますか?

たまたま良い場所を見つけたときは写真を撮りますが、撮影目的で出かけることはありませんし、撮った写真を背景などで直接使うこともありません。写真からインスピレーションを得て、それを自分の中にある理想郷に仕上げていく感覚です。

── 素朴な疑問なのですが、描き込んだ背景をぼかすときの感情ってどんなものでしょうか……?

一番大事なのはキャラクターで、背景はそれを引き立てるもの以上でも以下でもありません。……といっても、実際は泣く泣くぼかしているんですけどね(笑)。ついもったいなくなって、本当はもっとぼかす予定だったはずが変更することもあります。結局ぼかすにしても、しっかり描いちゃうんですよ。どうも自分は描き込み癖があるみたいです。

目立たせるために、瞳の情報量を増やす

── 絵のアイデアはどんな風に出していますか?

散歩中にアイデアが浮かぶことが多いですね。あとは女性アイドルの写真集を見て「この構図いいな」のように刺激を受けたり、いわゆる「エモい曲」を聴いて気持ちをかき立てることもあります。そうして、まずキャラクターを描いてみた後、「ガラス越しにこの女の子が見えたらおもしろいんじゃないか」「水に風景が映っているのはどうだろう」のように、どれだけ反射などのギミックを詰め込めるか考えます。

── エフェクトについては、作業のどの段階で決めていますか?

作品によりますが、どこにどのようなエフェクトをかけるか、最初から頭の中に漠然としたイメージはあります。実際にかけてみるのは、イラストに色がついてからですね。かけてみたら全然イメージと違う場合もあるので、また調整を重ねていきます。

── 荻poteさんのイラストは、瞳が印象的です。瞳を描く上でどんなことを意識していますか?

キャラクターの瞳は、イラストの中で真っ先に視線が留まる大事なポイントです。特に目立たせるために、瞳の情報量を増やすことを意識しています。光が屈折して虹色になったようなハイライトや環境光を乗せたり、イラスト全体をいったん出力してから、それが瞳に映り込むように反射させたりしています。やりすぎるとグチャグチャになるのでバランスが難しいところですけどね。

陽うらら

by 荻pote

虹彩や光の反射などが細かく描き込まれている

── お話を伺っていると、光や陰影に対する感覚が鋭いイラストレーターなんだなと感じます。

光はこだわっています。それと同時に、「正しい光」にこだわりすぎなくてもいいと思っています。たとえ現実にはありえないライティングでも、視覚的に心地よく感じられるならウソをついてもいいんじゃないでしょうか。

── YouTubeで公開している動画といい、今回のインタビューといい、荻poteさんはご自身のテクニックを気前よく伝えてくれるので、イラストレーター志望者にとってすごくありがたい存在だと感じます。

いえいえ、単にしゃべり好きなだけですよ(笑)。方法がわかっても簡単に真似できるものではない、という自信がないわけでもありませんしね。「よければ僕のやり方を皆さんのイラストのスパイスにしてみてね」という気持ちです。

個展のビジュアルのメイキング動画

個展のメインビジュアルは、「夏に一番映える絵」

── ここからは個展「彗月(はづき)」について教えてください。タイトルも印象的ですね。

開催月の8月(葉月)に引っ掛けつつ、僕の一番好きな季節である夏のキラキラ感やエネルギー、そして瞬時に過ぎ去る刹那性を表現したくて、ほうき星の「彗」の漢字を当てました。メインビジュアルは、夏に一番映える絵にしたくて、爽やかさを詰め込みました。

彗月

by 荻pote

2

── 内装にもこだわったそうですね。

担当者の方にはいろいろ無理を言ってしまいましたが、できる限りノスタルジックな空間に仕上げていただきました。

どこか懐かしいデザインの冷蔵ケース。中に入っているオリジナルデザインのボトルウォーターは、グッズを税込3,000円以上ご購入いただいた方にプレゼントしています。

── 個展で特に注目してほしい部分はどこでしょうか?

自分の絵は本来、現実で映える解像度やサイズで描いています。画集を出したときも「ここにこんなモチーフが描き込まれていたのか」と驚く声をいただきましたが、リアルな展覧会となったら、さらに多くの発見を皆さんにお届けできるのではないかと楽しみにしています。あとはグッズにもこだわりました。僕が本当に欲しいと思えるものを実現していただきましたし、無料配布もありますので、ぜひどれか思い出として持ち帰っていただけるとうれしいです。

荻poteさん自身による個展のグッズ紹介動画。一部の商品はBOOTHからウェブ購入が可能です。

── 最後に、イラストレーターとして今後の目標を教えてください。

基本どんなお仕事もウェルカムですが、VTuberなどキャラデザのお仕事もやっていきたいです。まだまだ自分には伸びしろがあると感じているので、このまま極限まで絵を追求していき、いつかその先で「人を泣かせるイラスト」にたどり着きたいですね。

8/24(水)まで開催中! 荻pote初個展「彗月」

pixivとツインプラネットが共同運営するギャラリー「pixiv WAEN GALLERY by TWINPLANET × pixiv」にて、荻poteさんの個展「彗月」が2022年8月24日(水)まで開催中です。

オリジナルイラストを中心に約80点のイラストを展示します。夏とノスタルジーをテーマにした内装や、荻poteさん監修のグッズなど、こだわりのつまった個展となっています。


開催期間:2022年8月5日(金)~8月24日(水)

定休日:なし

入場無料

所在地:東京都渋谷区神宮前5-46-1 TWIN PLANET South BLDG. 1F

営業時間:12:00~19:00


>>pixiv WAEN GALLERY公式HP<<

>>公式Twitter<<

※混雑時は整理券対応をさせていただく可能性がございます。あらかじめご了承ください。


※新型コロナウイルスへの対策について

荻pote個展「彗月」について、現時点では8月24日(水)までの開催を予定しております。今後も状況を注視しながら対応を進めてまいりますが、新型コロナウイルスの感染状況などにより、開催期間に変更が生じる場合がございます。販売商品や来店方法等を含め、運営状況については、随時pixiv WAEN GALLERY公式HP、公式Twitterにてお知らせさせて頂きます。何卒ご理解賜りますよう、重ねてお願い申し上げます。

一部グッズはWEB販売も!

BOOTHにて個展販売グッズの一部をご購入いただけます。荻poteさん自身の「こんなの作りたかった!」「これがほしかった!」を詰め込んだグッズをぜひご覧ください。


>>BOOTHを見てみる<<

荻poteさんの強い要望により実現したトレーディングアクリルフィギュア。全7種のうち、1種はシークレット。

高精細のキャンバスアートとアクリルパネルを重ねたレイヤードグラフはグッズ担当者の自信作。

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