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  • 哲学的な問いが創作の素地になる。イラストレーター・望月けいの思考の源泉を探る、盟友・結城にことの特別対談
インタビュー
2023.12.15

哲学的な問いが創作の素地になる。イラストレーター・望月けいの思考の源泉を探る、盟友・結城にことの特別対談

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哲学的な問いが創作の素地になる。イラストレーター・望月けいの思考の源泉を探る、盟友・結城にことの特別対談

インタビュー/原田イチボ

pixiv総監修のアートブック『VISIONS 2024 ILLUSTRATORS BOOK』(KADOKAWA)が発売中です。360ページの大ボリュームのもと、イラストレーター170人の代表作と新作を収録し、今のイラストレーションの最前線に迫ります。

人気イラストレーターの望月けいさんが、『VISIONS 2024 ILLUSTRATORS BOOK』(以後『VISIONS 2024』と表記)のカバーイラストを担当したほか、特別インタビューにも登場しました。書籍やゲームのキャラクターデザイン、アパレルブランドとのコラボなど幅広い活躍により現代イラストシーンの第一線を走る望月さんの、創作に対する姿勢とは? 親交の深い漫画家・結城にこさんと対談し、その思考の源泉を探りました。

望月けい(もちづき・けい)
  • 望月けい(もちづき・けい)
  • イラストレーター。エッジの効いたタッチや色彩感覚で人気を集める。主な仕事に『閻魔堂沙羅の推理奇譚』(講談社タイガ)の装画、ゲーム『Fate/Grand Order』『刀剣乱舞』のキャラクターデザインなど。2021年に初画集『人間よ強欲であれ』を刊行。

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結城にこ(ゆうき・にこ)
  • 結城にこ(ゆうき・にこ)
  • 漫画家。作品に『ふり向いて、ゆきのちゃん!』(リブレ)、『運命の人と出逢える恋するアプリ』(原作:弥生万智、全2巻、KADOKAWA)、『恐怖コレクター』(原作:佐東 みどり・鶴田 法男 キャラクター原案:よん、KADOKAWA)がある。

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目次
  •  「どうでもいいことを考える同盟」の2人
  •  モノトーンなのにカラフルな色使い
  •  「手を動かすのが、純粋に楽しい」という共通点
  •  絵に対する悩みも創作にぶつける
  •  絵を良くする過程でぶつかる苦労には辛さを感じない
  •  イラストレーター170人の作品を収録! 『VISIONS 2024 ILLUSTRATORS BOOK』発売中!

「どうでもいいことを考える同盟」の2人

── 望月さんたっての希望で、今回の対談が実現しました。おふたりはプライベートで親交が深いそうですね。

毎日のようにオンライン通話しています。学生時代に絵チャで出会って、それから10年くらいの付き合いになるでしょうか。

けいさんは出会った頃から画力がエグかったです(笑)。当時はまだ絵を描き始めたばかりだと言っていたけど、自分の中に「かっこよさ」の指針がしっかり存在しているのが伝わって、10代で描ける絵じゃないだろと驚くようなレベルの高い作品を発表していましたね。

39

by 望月けい

2012年に投稿された作品。

結城さんはハイペースに同人誌を出していたから、私だって「漫画を描くことへのモチベーションの高さがすごい人なんだな」と感心していたよ。お互い、なるべくしてプロになったのかもね。

結城さんによるBLマンガ『ふり向いて、ゆきのちゃん!』(リブレ、2019)。一部話数はpixivコミックでも読むことができます。

── 『VISIONS 2024』収録の特別インタビューを読んで、結城さんはどんな感想を持ちましたか? 「望月けいさんって孤高のアーティストなんだな」と感じる人が多そうな内容でしたが。

私から見た「望月けい」は意外ともっと人間味があるかもしれない。純粋で繊細だからこそ、創作者として悩むんだと思います。ちょっとイヤな言い方になってしまいますが、やっぱり世間で上手く立ち回れる人って、大なり小なりずる賢さを抱えているじゃないですか。でも、けいさんは自分がそういう立ち回りをすることに罪悪感を覚えるし、立ち回りの上手い人がステップアップしていく仕組みに葛藤を感じるタイプなんです。

たしかに純粋とは言われるかも。「自分にああいう立ち回りはできないけど、それでも太刀打ちするにはどうすればいいんだろう」と悩むことが多いですね。

『VISIONS 2024』のインタビューだと「悲しきモンスター」的な一面がクローズアップされていたけど(笑)、けいさんは優しいし、人間性が良いなって感じます。

『VISIONS 2024 ILLUSTRATORS BOOK』に掲載された望月さんのインタビューの一部抜粋。下線はpixivision編集部によるものです。

インタビューの全文は書籍にてご確認ください。『VISIONS 2024 ILLUSTRATORS BOOK』の詳細はこちら。

自分にとって、結城さんは創作にとどまらない「理解者」みたいな存在かもしれません。私の回り込んだ思考に一緒に回り込んで考えてくれる。

私たち、「どうでもいいことを考える同盟」だもんね。創作仲間というか、思考仲間。会話の内容がそれぞれの創作に直接役立っているわけではないけど、創作の下ごしらえには一役買っていると思います。

モノトーンなのにカラフルな色使い

── 結城さんから見て、望月さんのイラストはどんなところが魅力ですか?

デザイン的な絵を描きますよね。「ここで見切れたらかっこいいな」とか「キャラの顔がここにあったらいいな」という理想そのままに全体のシルエットがキマっている。けいさんの絵って、デフォルメが効いているけど、実はすごく立体的だと思うんですよ。けいさんのイラストをフィギュア化したら、絵そのままになる角度が確実に存在するはず。空間把握能力がすごい絵描きだと思います。

立体感を褒められることは少ないので、うれしいな。他のイラストレーターさんに「望月けいは"オタク絵"をかっこよく描いた最初の人間。あれは発明だった」と言われたことがあるんですが、結城さんの言ってくれる「デザイン的な絵」っていうのもそういうことなのかもしれない。

魔法少女は団地で待ちぼうける

by 望月けい

2015年に投稿されたオリジナル作品。

CDのジャケットとかアーティスト画像みたいな感じで、全体のデザインがキマっているんですよね。

絵を描くとき、デザイン的な思考は強いかもしれない。キャラ単体のかわいさよりも、「どういう色を乗せれば、どういう線の強さにすれば、観る側に視覚的な快感を与えられるか」ということを考えています。

そういうデザイン的な思考が「オタク絵をかっこよく描いた最初の人間」と感じられる部分なんでしょうね。

── 『VISIONS 2024』のカバーイラストは、赤の使い方が印象的でした。色は描きながら決めていますか? それとも描く前にある程度決めていますか?

『VISIONS 2024』のカバーイラストに関しては、「こういうふうに赤を使うのは、いかがですか?」とデザイナーさんにご提案いただきました。白を多めに使うという最近の自分のテーマに沿ったアイデアだったので、ありがたく採用させていただきました。

VISIONS

by 望月けい

普段は描きながら色を考えることが多いですね。着色の自由度が減るので、仕事のときも色ラフは極力作りたくないんですよ。もちろん頭の中に色使いのイメージはありますが、いざ線画が出来上がってみないと合う色はわからないし、「こう塗りたい」という自分の感情も変化しているかもしれませんから。

最近のけいさんの絵はグレーっぽい色が多いけど、それでもカラフルに見えるのがすごいよね。決して「モノトーンの作品」という印象にならない。「グレーって200色ある」みたいな色使いをしていると思う(笑)。

おめ

by 望月けい

2023年投稿のオリジナル作品。

(笑)。確かに昔から相互関係を意識しながら色を塗ってはいるかな。もっとカラフルな絵を描いていたときに「ここの隣り合った赤と青はどう見えるか」と考えていたのが、今は「ここの隣り合った濃い灰色と薄い灰色はどう見えるか」になっただけという気がします。

カラースポイトで写真から色を抽出してみたら、予想と全然違う色で驚くことってあるじゃないですか。「森から抽出してみたら、緑じゃなくて赤じゃん!」とか。けいさんは、そういう色使いを意図的にやっている印象があります。

それは本当にそう! まさに写真などで「緑じゃなくて赤じゃん!」みたいな経験をしたことが色使いの原点にあるかもしれない。「目の錯覚みたいでおもしろい。これを絵でもできないか」って。

── 結城さんは漫画家として白黒の原稿を普段描いているぶん、モノトーンの色使いの巧みさに気づきやすいのかもしれませんね。

私はカラーが苦手なので、表紙イラストを描くときはけいさんに相談させてもらっています。自分のテクニックを惜しげもなく出して、ノリノリでアドバイスしてくれるから奇特な人だな~と感じています。

「こうしたほうがいいかも」という指摘を結城さんが受け止めてくれるから楽しいっていうのもあるよ。他人の創作物を見ることは勉強になるし、自分にとってもありがたい機会です。

「手を動かすのが、純粋に楽しい」という共通点

── 逆に、望月さんが特に好きな結城さんの作品を教えてください。

洋画っぽいカメラワークが漫画に自然と使われているところとか好きだなぁ。でも具体的に好きな作品を挙げるとなると、同人誌になってしまう……。自由に描いているときの結城さんのヤバさが特に好きなんです。

趣味で出している同人誌は、けっこう暗い話が多いんですよね。いかんせんバッドエンドに惹かれるもので、不謹慎な感じの作品です(笑)。

それが好きだった(笑)。

── 商業作品だと、かわいいラブコメのイメージが強いので意外です!

ラブコメBLなどは、お仕事としてオファーをいただいて描きました。趣味で描く時と全く違うのも、楽しい経験でした。

結城さんが漫画を手がけた『運命の人と出逢える恋するアプリ』(KADOKAWA)。一部話数はpixivコミックでも読むことができます。

新たな部分に楽しみを見つけて取り組んだってことですよね。それが結城さんの作家としての強みだと思います。

── 『VISIONS 2024』の特別インタビューで、望月さんは商業性と作家性についても語っていましたよね。望月さんから見て、結城さんはどういうバランスで活動している作家だと感じますか?

結城さんは、自分とは真逆のタイプかも。創作へのこだわりが強いようで、商業に関しては、「なんでも描きます!」という柔軟なスタンスをとっている。お話づくりというより、「マンガを描くという行為」そのものが好きなんだろうなと感じます。

手を動かすのが、純粋に楽しいんだよね。

そういう描き手は意外と少ないと思います。私と結城さんは描くこと自体が楽しいタイプだけど、創作に対するスタンスは真逆なところがお互いに尊敬し合える部分でもあるのかもしれません。

絵に対する悩みも創作にぶつける

── おふたりはスランプになったときはどうしていますか?

過去に絵について悩んだとき、その悩みも創作にぶつけようと決めたら、絵が良くなった経験があります。私の場合、辛いときのほうが良い絵が描けるみたいです。なので、昔はうろたえていましたが、今は調子が悪いときほど「もしや良い絵が描けちゃうんじゃない?」と前向きになれます。自分の辛さが創作の武器になる。スランプのときこそ努力できるので、苦しんでる時間も好きです。

私がいただくお仕事は月刊ペースでのマンガ連載がほとんどなので、「調子が悪いかも」と感じたときは、1週間くらいなら創作から離れることができます。そうして自分の創作から離れている間は、マンガや映画を「観る側」としてプロ消費者に徹します。

インプット不足でスランプになっている可能性もあるしね。結城さんは自分の創作に対してモチベーションが下がったときでも、インプットはすごくしているよね。

アウトプットがしんどい時期はあっても、インプットがしんどい時期はないかもしれない。

あとは絵って、描き続けていると手癖になってきちゃいますよね。そうならないように「もっと良くすることができるはずだ」と考え続けて、自分の最善を追求し続けることが大事なんだと思います。

anan

by 望月けい

雑誌『anan』掲載のために描き下ろされた、2023年投稿のオリジナル作品。

私たちは会話していてすぐに「◯◯理論」みたいなものを生み出してしまうんですけど(笑)、ちょうど「練習カラオケ理論」という話をしたことがあるんですよ。「人に見てもらう」とか「仕事に繋げる」とかの目的が頭にチラついて純粋に絵を描くことを楽しめなくなったという悩みって、世の中にたくさん存在すると思うんですね。でも、いくら歌うのが好きでも毎回人前で歌うのはしんどいじゃないですか。ヒトカラのつもりで絵を描けば、また楽しめるはず。私はいつもヒトカラのつもりで描きたいな、と感じています。

絵を良くする過程でぶつかる苦労には辛さを感じない

結城さんと「楽しさ」と「幸せ」の違いを話したことがあったよね? そういう哲学っぽい話を2人でよくするんですよ。

── 「楽しさ」と「幸せ」はどう違うんですか?

私の中で、「楽しさ」は一瞬一瞬に感じる気持ちです。一方で、「幸せ」は、過去の自分や他人と比べて、プラスであると感じた状態のことだと思っています。なので、楽しい時間であっても停滞している状態は幸せとは限らないと思うんです。刹那的な楽しさだけを求めていても先の未来で幸せになれるとは限らず、幸せにたどり着くためには、時にやりたくないこともしないといけない。それって仕事にも通じることだよね、という話をしました。

けいさんは幸せになるためにやりたくないこともやれる人だよね。

幸せになる目的でやることは、全部楽しく受け取れる性質なんですよ。私にとっては自分の絵が良くなることが一番の幸せだから、その過程でぶつかる苦労には辛さを感じません。

── なるほど……! 最後に、おふたりの今後の目標を教えてください。

どんどん絵を良くして、一番良い状態になって満足してから死ぬ。それが人生のテーマですね。

けいさんは、「もっと頑張りたい」っていう気持ちを話してくれるし、実際ずっと頑張ってる。高い能力を持っているのに楽をしない人達の精神性を「医者理論」と勝手に呼んでいるんですけど(笑)、お医者さんってなるのも大変で才能も必要なのに、なってからも激務じゃないですか。けいさんはただでさえ絵が上手いのに人の何倍もの量を描くんですよ。

── また新しい理論が(笑)。

そう、すぐ「◯◯理論」を作っちゃうんです(笑)。あまりお互い未来の話はしないけど、けいさんが坂をずっと上っているのを近くで見ているのは楽しいなと思います。私自身の話をすると、本性を出すような創作をしたい気持ちはあるけど、コミカライズなどの仕事で黙々と作画に徹するのも楽しいので、どういうふうに商業作家として活動していくか模索しているところです。

結城さんが漫画を手がけた『恐怖コレクター』(KADOKAWA)。一部話数はpixivコミックでも読むことができます。

結城さんがどういうバランスを取るのか、どういう作品を作るのかも今後みていたい部分です。あとは全知全能だよね。どちらかというと全知?結城さんはこの世の全てを知りたがっている(笑)。

来世は惑星になって、宇宙の全てを知りたいですね!

来世で惑星になった結城さんがこの世の真理を私にそっと教えてくれる約束をしているんですよ。

「惑星は話せないだろ」という真っ当なツッコミは置いておきつつ(笑)。

── (笑)。どうもありがとうございました!

イラストレーター170人の作品を収録! 『VISIONS 2024 ILLUSTRATORS BOOK』発売中!

発売即重版! 全世界シリーズ累計25万部のイラスト年鑑。

最前線で活躍するイラストレーター 170人の「VISION」がここに。

pixiv総監修のアートブック!! 様々なフィールドでインパクトを与えている実力派イラストレーター170人の代表作と新作を多数収録。


カバーイラスト/メイキング/特別インタビュー:望月けい

書籍情報

B5サイズ/360ページ/フルカラー

本体価格2,800円+税

監修:pixiv
発行:KADOKAWA
ISBN:978-4-04-682577-3

>>『VISIONS 2024』公式サイト<<


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