ビートまりおに聞く。東方Projectの同人音楽活動とイラストとの関わり方
同人サークル「上海アリス幻樂団」による弾幕シューティング「東方Project」。その独自の世界観と魅力的なキャラクターたちは、およそ30周年にもなる現在に至るまで衰えを知らず絶大な人気を誇っています。
当時からファンの手によってこれまで膨大な数の二次創作が生み出されていますが、30周年を迎えるいまもpixivに年間13万作品以上投稿されており、投稿作品総数は280万件を超えます。
今回は、開催中の『FANBOXプリントクリエイターフェス「東方Project」』および「東方Projectイラストコンテスト」を記念して、東方アレンジを代表する作品の数々で知られるビートまりおさんに、主にイラストとの関わり方についてインタビューをしました!

- ビートまりお
同人音楽サークル「COOL&CREATE」主宰。「東方Project」の二次創作アレンジ楽曲「ナイト・オブ・ナイツ」「最終鬼畜妹フランドール・S」「Help me, ERINNNNNN!!」などで知られ、エネルギッシュな歌唱とパフォーマンスにも定評がある。近年は活動の幅を広げ、VTuberとしても活躍している。
東方アレンジMVやCDジャケットの制作秘話
── ビートまりおさんは、YouTubeの東方アレンジMVでしたり、CDのジャケットなど、イラストレーターにビジュアルを依頼されることが、かなり多いんじゃないかと思いますが、いかがでしょう。

── そういう意味では、普通のミュージシャンの枠を超えているというか。

── そういうとき、どこを重視してイラストレーターを探したり、選んだりしているんでしょうか。

やっぱり自分の同人サークルなので、まず自分がこの人のイラストで見てみたい、というのを絶対大事にしていますね。
── 知り合いにお願いすることが多い感じでしょうか?

そこで初めましてになる作家さんも結構います。やっぱり「この人が参加しているのか」とワクワクしてほしいというか、自分自身もワクワクしたいですし。
── 基本的には東方の二次創作イラストを描かれている方の中から探す?

最近は意外とそうでもないかも? ものによると言うか、東方のコミュニティに強く寄り添った作品の場合はそういう作家さんにお願いすることが多いですし、外に向いた企画をやりたいとなったら、あえて外の作家さんにお声がけすることもありますね。
ですが、最近は東方って、絵を描く人の入り口のジャンルになっているところがあると感じています。イラストレーターさんを探しているとき、その方の過去のイラストを見たら、描き始めた頃に東方キャラを描かれていた、なんてこともあります。
だから、必ずしも「現在」の東方のコミュニティの中から探しているわけではないけど、結果的にそうなることもありますね。
── イラストレーターさんはどこで探すことが多いんでしょうか。

やっぱりXとpixivですかね。依頼とか関係なく「いいなこの人の絵」ってフォローさせていただいていますし。
あと「こういうコンセプトの企画やりたいんだけどオススメの作家さんいない?」みたいに知り合いに相談することも多いです。普段からイラストめちゃくちゃ見てる人とかいるんで。
── このイラストのおかげでうまくいったとか、記憶に残っている作品について教えてください!


あと2022年の「インターネットサバイバー」ですかね。

── そういう意味では「ゆっくり」とか最たるものですよね。

たしかに、あれがオッケーだったら何でもいいんじゃないかはありますね(笑)。
YouTubeやBOOTHの活用について
── YouTubeのチャンネルには東方アレンジMVを投稿されているだけでなく、ご自身もVTuber化してライブ配信されたりもしています。これらは、どういうきっかけだったんでしょうか?

自分は即売会やリアルのライブを中心に活動してたんですけど、2020年のコロナでどちらもできなくなってしまいました。その頃、たまたま東方スペルバブルというゲームの配信でホロライブの宝鐘マリンさんの存在を知って、VTuberの活動っておもしろいなと思ったんですね。
YouTubeのチャンネル自体はかなり昔からありました。でも、それまでは、ほとんど何もアップロードしていないし、そもそもインターネット上の活動ってちゃんとやってなかったんです。じゃあ本気出すぞとやってみたら、当たり前ですけど、みんな見てくれたなあという。
もう今の時代、インターネットにない曲は、存在してない曲なんだなというか。たとえばCDでリリースしましたってだけだと、まだ世の中に存在してない曲で、サブスクで配信されたり、 YouTubeにMVがアップされた時点で、はじめてこの世の中に存在した曲っていう認識になるぐらいの勢いだなって最近はしみじみ思いますね。
── ちなみにビートまりおさんといえば、やはり元々はニコニコ動画かなと思うんですが、YouTubeにミラーでアップする活動もその頃でしょうか。

そういうのも2020年以降ですね。実はニコニコでたくさん再生されている動画って、自分が東方の二次創作として世に出した東方アレンジの楽曲を元にして、他の人が映像を加えてアップロードしてくれていたみたいな、三次創作的なものだったんですよね。
── ああ、なるほど。確かに言われてみればそうですね。

インターネットのオタクなら誰もがニコニコ動画を見ていた時代がありましたけど、今だとやはりみんなYouTubeをメインで見るような時代になりましたので、あらためて自分のチャンネルに集約したほうが良いなと。
そういう映像を作ってくださった方々とは知り合いなので、ビートまりおのYouTubeチャンネルにアップしてもいいかと連絡して、お借りしているような形ですね。
── 次にBOOTHについて。ご自身もオーナーとしてBOOTHにショップを開設されていますが、BOOTHを利用している理由を教えてください。

CDやグッズを作りすぎて在庫が余ってしまうことってよくあると思うんですが、BOOTHがあるというのは、とても気持ち的に楽ですね。
とはいえ、BOOTHがあるからイベント行かなくてもいいかってなるわけでも全然なく、即売会に来てくれる人は来てくれますし、そのうえでどうしても行けない人がBOOTHでってことになっているので、手に取ってくれる人の総数は増えた印象がありますね。

── 東方に限らず、さまざまなジャンルで二次創作のガイドラインも整備されてきて、BOOTHのような通販でも売買しやすくなりましたね。

自分は古いオタクなので、時代が変わったというか、昔は牧歌的だったな……と思うところもありはしますけど、みんな堂々と同人活動できるようになったという意味では、今は今で全然楽しいですね。
FANBOXプリント、東方イラコンについて
── 今回、ビートまりおさんも『FANBOXプリントクリエイターフェス「東方Project」』にご参加いただいています。きっかけというか、どのあたりに企画のおもしろみを感じられましたか?

「東方ダンマカグラ」っていうゲームで、ゲーム内に出てくる「ミタマカード」というカードを実際にコンビニプリントできるサービスがあったんです。
それまでは「コンビニのプリントってどうなんだ?」みたいな気持ちがちょっとあったんですが、プリントしてみたらすごくきれいだったんです。フォトフレームに入れてみたら、もうこれグッズとして成立してるなって。
そういうこともあって、自分も参加することにしました。
── 初めてプリントしてみると、きれいで驚かれる方は多いですね。

自分は元々、ポスターやタペストリーをあまり購入しないタイプだったんですが、こうやって好きなキャラクターを飾っておくのもいいもんだなと感じました。それに、気軽にパッとコンビニに行ってパッと印刷できるって、みんながやるのも分かるなって思った記憶があります。
最近の東方のファン、ビートまりおのファンのみなさんって、かなり若い子たちも多いんです。 若い子にとってアニメグッズの専門店や即売会は遠くて行けなかったり、通販するのも難しかったりってこともあると思います。そういう子たちにとって、全国のコンビニで、かつ数百円でプリントできるのはうれしいんじゃないかと思いました。
── 今回はFANBOXプリントの企画に合わせて「東方Projectイラストコンテスト」も開催されています。ビートまりおさん的に、どんな作品を見てみたいとかありますか?

東方のイラストコンクールって今でも結構ありますけど、小学生とか中学生とか、若い子がすごく多くて。本当に100%素直な「東方が好きです!」って気持ちで描かれているイラストを見ると、結構食らっちゃいますね。もちろん、めちゃくちゃいい意味で。
東方って、20何年前、2004年ぐらいからバーっと同人が流行っていったんですけど、当時は大体20歳前後の大学生を中心としたコミュニティでした。そのあと「東方が売れてるらしいぞ」みたいな色んな大人たちも入ってきました。そのままみんなで歳を取って、そのまま年齢層が上がっていっていくんだろうなと思っていたんですね。
── 私も同じ世代なので、すごくよくわかります(笑)。

そこに「ゆっくり」とか、きっかけはいろいろあると思うんですけど、小学生とか中学生が入ってきました。それまでは純粋に「ただ好きだから描いてます」みたいなキラキラした子どもたちの感情で描かれているイラストをあまり見たことはなかったんです(笑)。そういうイラストがあると、すごくいいなって感じますね。
たぶん東方っていうジャンルが1周して、2周目が来たんじゃないでしょうか。そこに未来を感じて、ちょっとおもしろいなと思いながら若い子のイラストを見ていますね。
クリエイターのみなさんに
── では最後に、東方Projectの二次創作に関わるクリエイターのみなさんへのメッセージなどいただければ。

ものを作る楽しさって、うまくいかないことも含めての楽しさだと思っています。
たとえばゲームって、ガチャでSSRが出たみたいな楽しさもありますが、苦労してクリアしたときのうれしさや楽しさってその何十倍も何百倍もあるじゃないですか。それと同じで、手間をかけることを楽しんで作品を作ってほしいですね。
「いいね」がついたとか、つかなかったとか、自分と同じくらいの年齢で神絵師がいるとか、いろいろ目についてしまうと大変だろうなと思います。でも、東方が好き、作るのが楽しいっていうシンプルなところを大事にしてくれたらなと思います!
── ありがとうございました!