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インタビュー
2020.02.14

リアル彼氏への愛情ほとばしるツイートは、なぜオタクに共感されたのか?深澤ねじ×めろりインタビュー

  • Writer interview
  • rom-com manga

構成/原田イチボ@HEW

「アイドル? 二次元? いや……最推しは彼氏!!」


恋人への愛をハイテンションにつづったツイートで人気を誇るめろりさんの、SNSの総フォロワー数はなんと40万人。挙動がおかしい「彼オタツイート」は、深澤ねじさんの作画でついにマンガ化され、『彼氏のことが好きすぎて今日も全力で生きる!!!』として2019年9月に出版されました。

ここまで聞いて、実在のカップルのノロケなんて……と感じた人もいるかもしれません。しかし、ノロケに非ず、これは推し語り! 「好きすぎ死~~~!!!」という感情は、むしろ誰かしら「推し」がいるオタクほど共感できるものではないでしょうか?


リアルカップルの日常ツイートはどのようにマンガ化され、どのように読者に届いたのか?めろりさん、深澤ねじさんに(たまにリブレ担当編集Kさんも混じえながら)語ってもらいました。

深澤ねじ
  • 深澤ねじ
  • 2019年4月より連載が開始された「彼氏のことが好きすぎて今日も全力で生きる!!!」作画担当として漫画家デビュー。2019年9月に同タイトルのコミックスが発売、また「pixivコミックランキング2019」では総合8位、恋愛部門2位に選ばれる。

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めろり
  • めろり
  • 「好きすぎ死〜〜〜!!!」など恋人への熱いツイートが人気で多くのフォロワーを抱え、2019年には原案となったコミックスが発売される。著書に『彼氏の隣で落ち着けない』『やっぱり彼氏のことが好きすぎて死ぬ』(KADOKAWA刊)、『明日のデートに何着てく?』(秀和システム刊)がある。

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「愛する人、健やかであれ」という熱い想い

── マンガ『彼氏のことが好きすぎて今日も全力で生きる!!!』はどのような経緯で生まれたのでしょうか?

いわゆる「リア充」の日常を描いたものなんですが、めろりさんの「愛する人、健やかであれ」という熱い思いは、私のようなオタク層にも共感できるものだと思うんですよね。今って、推しをストレートに愛する行為こそが尊い時代だと思うんですよ。マンガを通して、推しへの愛の叫び方の一つを世の中に広めていくことができたらと思い、今回の企画が生まれました。

── たしかに……。めろりさんがツイートしていた「今日も健やかに呼吸してくれてありがとうな!」のような感情は、オタクとして自分にも覚えがあります。めろりさんは、今までの人生でオタクだったことはあるんでしょうか?

それが全然なんですよ。アイドルとか芸能人にハマったこともなく、実は最初pixivさんのことも存じませんでした……。だからマンガ化にあたって、担当さんには「言動がオタクっぽいだけで私自身はオタクじゃないけど大丈夫ですか?」ということは相談していました。マンガ版はいわゆるオタクの方々に読んでもらうことを目標にしているので、読者の方々に受け入れてもらえるか不安でした。

その対象が2次元であれ芸能人であれ恋人であれ、誰かに強い愛情を持っている人はみんな同じ情熱を抱えています! 熱い気持ちを素直に発信するめろりさんに共感する人は多いはずだと信じていました。

── 著者である深澤ねじさんは、実在の人間、しかもカップルをマンガにすることに苦労はなかったのでしょうか?

めろりさんのツイートって、“明るくて元気”なイメージ以外はあまり見えてこないんですよ。だからこそ、マンガ化する上での“キャラブレ”が殆どなく、どんなに過去に遡っても、仕事のことや、彼氏への愚痴を呟いていたりはしません。

「彼氏が好きすぎるあまり挙動がおかしくなっている女の子」と「クールでつれない彼氏」を、私なりに改めて解釈して、「このキャラはこういう行動はするけど、こういう行動はしない」というのを場面ごとに選択するイメージで執筆しました。苦労はあまりしなかったです。

ある意味、ファンアートに近い感覚かもしれません。元になるツイートが存在して、「じゃあ、このやり取りに至るまでどんな流れがあったのかな?」と想像して埋めていく作業というか。

── 実在の人間でどこまでギャグをやっていいのか、みたいな難しさはありませんでしたか? テンションが上がっためろりさんがハニワになってしまうなど、ぶっ飛んだネタが満載ですが……。

ハニワになるめろりさん。こちらはpixivコミックでは2話に収録。単行本のカバー下には元となっためろりさん作画のマンガも載っています。

それは当初ありました。でも、めろりさんって心が広い方なんですよ! 事前の制約もNGも一切なくて、「とりあえず見せてください」という姿勢なんです。本当にやりやすくて、ありがたかったです

ねじさんのネームが毎回面白いから、私が直すようなところは、ほとんどありませんでした。

すぐ褒めてくれるんですよ! ネームを見ていただいても、「これ素敵~!」みたいな感じで(笑)。

めろりさんは、ネームを見ても「今回もヤバいっすね! 創造神がまた創造しちゃいましたね!」みたいに毎回褒めるんですよ。私とめろりさんは最初の読者として普通に楽しんで読んでいます。さすがに次はこのおもしろさに慣れるだろうと思っても、ねじさんがまた全力を出してくるから……(笑)。

── ねじさんにとっては、『彼氏のことが好きすぎて今日も全力で生きる!!!』がマンガ家デビュー作ですよね。ねじさんがコミカライズを担当することは、どのように決まったのでしょうか?

ねじさんとは以前からやり取りしていたのですが、そのときから、キャラクターの深堀りが丁寧な作家さんだと感じていました。あと話していて楽しいんですよ。編集と作家の会話って普通はもっとビジネス的なんですが、ねじさんとお話するのは仕事抜きで楽しい。めろりさんもねじさんも、「人を楽しませる」という視点をすごく大事にされている方だと思います。めろりさんのツイートがマンガとしてどんな形になるのか、編集部内では正直心配していた部分もあったんです。でも蓋を開けてみたら、編集長も「ここまでマッチするのはすごい!」と感心していました。本当に『彼氏のことが~』は、おふたりのマッチングの奇跡だったと思います。

「リアルはるちゃん」はさらに塩対応!?

── めろりさんにお伺いしたいんですが、「自分と、自分の彼氏がマンガになる」とは、どんな気持ちになのでしょうか?

もともとSNSに自分の日常をただ独り言みたいに書くのが好きじゃないので、「読んだ人はどう思うだろう」ということは最初から意識していました。もちろん嘘はついていませんが、「日常の面白かった出来事をさらに面白そうにつぶやく」というか。

だからマンガになっても、100%がイコール私ではない感覚です。だって私、実際はこんなに美人じゃないですし(笑)。ねじさんが想像でふくらませてくれた部分が多いので、パラレルワールドの自分という感覚かな?

── 彼氏の「はるちゃん」に関しても、ねじさんにお任せですか?

お任せしていますね。女性ものはこれ、男性ものはこれって、着る服のテイストだけ決めたくらいです。

── 現実のはるちゃんと比べて、マンガのはるちゃんはいかがですか?

マンガのほうがクールですね。実際の彼氏もこんな感じではあるんですが、もうちょっと冗談も言いますし、もうちょっと……。

── デレが多いですか?

いや、デレはもっとありません。

── えっ!

言葉遣いとか、マンガのはるちゃんは丁寧じゃないですか。現実の彼氏はもっとフランクというかやんちゃです。お尻を触ると、「どつくぞ」みたいな(笑)。

たしかにネームで指摘があるとしたら、「こんなにラブラブな感じじゃないですよ」みたいなことですね。ラブコメのラブが強くなりすぎると、「もうちょっと塩対応で」と言われるんです(笑)。

── マンガの時点でだいぶ塩対応なのに……! 現実のはるちゃんは、めろりさんのツイートやエッセイを読んでいないと聞きました。

未だに何も見ていないと思います、たぶん。本やマンガは普通にリビングに置いていますし、全然隠していないんですけどね。

── 自分がマンガになると聞いたら、普通は気になりそうなものですが……。

最初のキャラデザだけは一応転送したんですけど、「誰やねん」で終わりで、あとはノータッチです。マンガもパラパラッと開いて、「ふーん」で終わり。Twitterも相互フォローではあるんですが、「また変なこと言っている」くらいで、ちゃんと読んでいないみたいです。

── 逆にすごい。

気になる感情がないんですかね(笑)?

ナンパのエピソードは「ちょっとえっちな雰囲気だから……(笑)」

── 「今回はこのツイートをネタにしよう」というのは、どのように決まるんですか?

私はどのツイートもお好きにどうぞ、という形にしていました。

ありがたいことに、これも制約がありませんでした(笑)。コマ割りなどがイメージできてマンガにしやすそうなもの、あとは、推しのいる生活に共感しやすそうなものを選んで、ねじさんにお渡ししていました。

── マンガにしやすそうなツイートをねじさんが自分で選んだわけではないんですね。

そうですね。初めてのお仕事で不安そうにしている私を編集部の方々がすごく心配してくださって、最初は大筋のネームも切ってもらったんです。でも実際自分が描いたら全然違うものになってしまって……(笑)。担当さんがツイートを選び、私がネームを切ってマンガにして、めろりさんが監修という形に落ち着きました。

── 単行本では、pixivコミックに掲載されていたエピソードに加えて、書き下ろしも収録されているとか。

単行本でしか読めないエピソードを入れたかったので、自分でプロットを書いたりもしました。「うちの毛玉」とかがそうですね。

── お互いとくに読者におすすめしたいエピソードはありますか?

なんだろう? ねじさんが描いたから全部面白いです。ちっちゃいデフォルメキャラとか、めっちゃ可愛いですよね! でも読者さんに人気なのは、ナンパのエピソードですかね。ちょっとえっちな雰囲気だから……(笑)。あと、テンションが上がってハニワになる描写も人気です。

はるちゃんがナンパ師に挑戦するエピソード。pixivコミックでは1話に収録。

ネタとして私が好きなのは、ドキドキ2択クイズや、コッペパンプードルのイラストのエピソードですね。しょうもないやり取りを実ははるちゃんが大事にしていたことがわかって、そこが大好きなんです。

「生々しくないノロケ」を追求し、パワーワードが生まれた

── 読者の方から、どんな反響が届いていますか?

「自分かと思った」みたいなのが多いですね。マンガが世に出るまで、私のツイートに反応をくれる人って、「うちの彼氏もこうです!」みたいにリプライ欄で自分の恋愛の話をする方が多かったんですよ。でもなんかオタクの人って、直接リプライはくれないんですけど、いっぱいリツイートした後に「わかる」って一言だけ呟くみたいな感じで……。

── いちオタクとして、ものすごく見に覚えがある行動です……。

ふふふ(笑)。でも私、あんなツイートしていてアレですけど、もともと人と恋愛の話をするのが特別好きなタイプではないんですよ。だから、生々しいのろけにはならないように気をつけています。みなさんの反応も参考にしながら「これなら大丈夫かな?」というギリギリのラインを探っています。

── 生々しくないのろけにする秘訣はありますか?

あまり感情を出さず、ただ自分が面白いと思ったことをだけをスパッと切り取ることですかね。やっぱり過程とかをきっちり説明しすぎると、なんだか湿っぽくなってくるじゃないですか。とにかくまっすぐ伝えたくて、ビックリマークをつけたりして生々しくない言い回しを突き詰めていったら、オタクの方々にも共感されるものになったみたいです。

── いわゆるパワーワードのような書き方に自然と近づいていったんですね。

あとは、「花束をくれた」とかは行動として甘すぎるじゃないですか。でもドキドキ2択クイズなら別にロマンス色はないから、生々しさも薄くなるかなと思っています。やっぱり私、自分の考えとか感情を表に出すのがそんなに得意ではないんですよ。だからツイートに人間味がなくて、「中の人は本当に存在するのか?」とか言われちゃうんですけど(笑)。

オタクにも共感されるツイートを、実際のオタクがマンガ化

── 『彼氏のことが好きすぎて今日も全力で生きる!!!』を読んでいて、ねじさんも自分の推しへの感情を思い返して描いている部分があるのかと感じました。

自分ではそんなつもりはなかったんですが、友達やフォロワーさんから「言い回しが完全にねじちゃん」って言われて、ちょっと反省しています(笑)。オタクではなくとも、オタクにも共感されるめろりさんの推し愛ツイートを、実際のオタクである私が消化してマンガにしているので、オタクのパッションが2乗されている作品ではあります。

── ねじさんの推しは誰なんでしょうか? 絵を描き始めたきっかけのキャラクターはいますか?

私は絵を本格的に描き始めたのと、Twitterをやり始めたのが同時期で、高校の卒業式の直前でした。Twitterのやり方を教えてくれた友達がアニメが好きな子で、そこからファンアートの世界を知っていきました。だから最初は、その子が好きだった渚カヲルくんの絵をひたすら描いていたんです。

── 高校3年生とは、けっこう遅咲きのオタクですね。

もともとマンガを読むことは好きだったんですが、いわゆるファンアートの世界は全然知りませんでした。カヲルくんは友達の趣味がきっかけでしたが、初めて自分発信で好きになって描いたキャラは、『よんでますよ、アザゼルさん。』のベルゼブブ優一です。周囲を見下しているようで、自分の仲間が困っていたら助けに行っちゃうようなところが、「うう~! 好きだぜ!」となりまして……(笑)。

── めろりさんはストレートに愛を表現していますが、ねじさんもオタクとして同じタイプなんでしょうか?

私はどちらかというと、自分の推しに「結局こいつは甘えてんだよなー!」とか厳しいことを言っちゃうタイプです(笑)。そういう意味でもコミカライズの作業は新鮮でした。めろりさんとは推しのタイプも違いますし、推し方も違いましたから。

健全な推し活の秘訣は「振り回さない推し」を持つこと

── めろりさんは、彼氏のことはずっとあのテンションで好きなんですか?

マンガだとあんな感じですけど、日常は落ち着いていますよ。行動が落ち着いていないだけです。ドアがガチャってなったら、ちょっと踊りながら玄関に行くけど、心は冷静です。

── ちょっと踊っているけど冷静なのか……。

冷静ですよ(笑)。恋愛で生活に支障が出る人っているじゃないですか。そういう意味では私、すごく恋愛に対してフラットなタイプなんですよ。

── フラットでいられるのは、彼氏を推しとして見ているからなんでしょうか?

どうなんでしょう? でも今の彼氏って本当に良い人なんですよ。私を変に振り回すようなことが全然ないんです。良いときと悪いときの差が激しい人を好きになってしまうと、こっちの気持ちの振れ幅もどうしても大きくなっちゃうじゃないですか。でも今の彼氏は、すごく穏やかなので、私の気持ちの振れ幅も小さくいられる。「高級レストランでエスコートしてほしい」みたいな人からすると、つまらなく見えるかもしれませんが、フラットな状態で好きでいられるところが良いんですよね。

── たしかにオタクも振り回さないタイプの推しを持ったほうが幸せになれるかもしれない……。

振り回すような人います?

── クズっぽいキャラとか、ヤンチャな芸能人を推している人とかはやっぱり……。

(笑)。

── 健全な推し活のためには、健全な推しを愛することが重要という学びを得たところで! 最後にpixivコミックがバレンタインキャンペーン中ということで、おふたりに今年のバレンタインの過ごし方をお伺いしたいです。

友達にチョコレートケーキを焼いてプレゼントする予定です! なまものだし無事に送れるのかってところが問題ですが(笑)。

私はアイシングクッキー教室の講師もしているので、2月14日はそのレッスンがあるんですよ。でもイチゴが好きな彼氏のために、1パック1000円以上のイチゴを大量買いして、盛り盛りのプレートを作る予定です。イチゴが好きって、彼氏めっちゃ可愛くないですか……!?

── やっぱり愛がすごい!

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