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  • 米山舞、個展の全貌を語る。連作「SHE」で描いた、困難に立ち向かう”彼女”たち
インタビュー
2019.12.20

米山舞、個展の全貌を語る。連作「SHE」で描いた、困難に立ち向かう”彼女”たち

  • インタビュー
  • イラストレーターインタビュー
  • 作家インタビュー

インタビュー/虎硬
編集/佐久間仁美

現在、pixiv WAEN GALLERYで開催中のイラストレーター米山舞さんによる個展「SHE」。業界関係者の注目度も高く、ファンはもちろん著名クリエイターも数多く訪れ、連日大きな賑わいを見せています。米山さんはアニメ『キルラキル』『キズナイーバー』『プロメア』など、数々のビッグタイトルにメインアニメーターとして参加するキャリアを築きながらも2018年、イラストレーターとして再スタートを切りました。


今回の個展では新たに描き下ろした9枚のイラストと共に、個展のタイトル”SHE”に込めた自身の作品への思い、作家としてのこれからを伺いました。

米山舞
  • 米山舞
  • イラストレーター、アニメーター

    確かな技術と卓越したセンスで情感豊かな表現を生みだす。『レーシングミク2016』、エヴァンゲリオンアパレルブランド『RADIOEVA』などのイラストの仕事を担当。アニメ『キズナイーバー』キャラクターデザイン、『ダーリンインザフランキス』ED演出、『プロメア』など、アニメの仕事にも多数参加。

    過去のインタビューはこちら

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── あらためまして個展開催おめでとうございます。2019年にスタートしたpixiv WAEN GALLERYとしては、今年の締めくくりの展示となりました。米山さんとしてこのタイミングの個展はどういった意味を感じられましたか?

米山舞
ありがとうございます。私にとって今回の個展は「新たなスタート」だと思ってます。仕事をアニメーターからイラスト主体に変えてようやく1年。これまでの経歴も総括しつつ、あらためて自己紹介、という感じですね。

── 今回は個展のために多数の描き下ろしを展示をされてますよね。これはご予定通りだったのでしょうか?

米山舞
お話を頂いたのが春ごろだったと思いますが、当初から決めてました。今までの絵を集めてもそれなりの量になるのですが、自分の決意というか「こういう絵で認識されたい」という願望が強くて、結果的に9枚ほど描き下ろしました。なんというか、所信表明ですね。

── 普段イラストレーターさんはご自身の作品を語る機会は少ないかと思うのですが、今回は個展のテーマを通じてそれぞれの作品について伺います。

彼女たちが、それぞれ対峙するもの

米山舞
今年の5月に『THE ONE』という絵を描いて、展示のすべての作品がこの絵に集約するイメージでシリーズを作り始めました。

THE ONE

米山舞
とりあえず顔アップと眼力でどれだけできるんだろうっていう挑戦ですね。絵のテーマも「これから反撃」みたいなイメージです。服が透明なのがちょっと奇抜な感じですが、それを楽しんでもらえたら嬉しいですね。大人が女児っぽい装いにするとちょっとエグさが出るというか、ちょっとした毒を盛り込んでいます。

── このイラストから米山さんのスタイルができてきたように思えます。それまでもとても上手でしたし、注目されていましたが、なんというか独自の作家性が強くなってきたかなと。

米山舞
本当はもっと顔のアップが描きたくて、それこそ化粧品の広告のようなイメージがありました。連作『SHE』はテーマとして「逆境」「困難に立ち向かう」「多種多様」を掲げてます。同じような状況でもいろんな立場の人間がいて、それをメイクや肌の色、服の違いで表現したい、という気持ちがまずあったんですね。だからいろんな「彼女(SHE)」がいる、みたいなコンセプトです。

SHE HAS TO

米山舞

テーマに対してはこの絵はわかりやすいかも。戦っている情景です。私が絵で感動した原体験としてTVアニメ『セーラームーン無印』の最終話でセーラー戦士が全員死ぬシーンがあって。それが見ていたら、子供ながらにとても美しいと思ってて。そのシーンを自分の絵でもやりたかったところがあるんですよね。だから髪とかも乱れてる、でもその姿が綺麗みたいな。連作なので壁に配置する色のバランスがかなり難しく、白系でバランスをとりました。


私の中では絵が「歌」みたいであってほしくて。歌ってどこのフレーズを歌ってもその歌になるというか、そういう断片的な要素からもイメージができるところが良いと思ってます。ある意味で曖昧な存在というか。絵って具体的だから、そういうイメージの輪郭をぼかしたいと思っていていろんな見せ方を試してます。

S(HE)

米山舞

この作品は1~2年前からずっと描きたかったテーマですね。SNSで全身整形の過程を公開しているアカウントがあって、そこからインスピレーションを得ています。その人達が手術の経過を写真でアップしていくんですけど、脂肪吸引をすると経過によっては身体から液が滲み出てて、包帯が真っ赤になります。実際に痛みを伴い見た目も痛々しいのですが、自身をさらけ出す姿がすごく幸せそうなんですよね。もうすぐ綺麗になれる、みたいな。私はそれに肯定的でありたくて。変わろうとするのって自分の決断とか挑戦だから、そこに対して誰かが何か言うかもしれないけど、負けないでほしいという気持ちがあります。私自身も歯列矯正してますしね。

── はじめて見たとき、この絵は米山さんしか描けないって思いました。ある種の緊張感がありながら、いろんな方への救いになっているというか。

米山舞

タイトルを『S(HE)』としてます。これは(SHEの指すものが)男の子(HE)だったとして……みたいなニュアンスですね。でも性別は関係ないです。女の子であったとしても、もっと可愛いお人形さんみたいになりたいとか。そういう願望があって、痛いけどすごく嬉しいみたいな。この絵で描きたかったのはすごく簡単な感情です。

SHE WAS

米山舞
これはいろんな時代の「SHE」を描きたいと思って、時間を止めました。モチーフは大昔の琥珀に閉じ込められた虫で、過去だからタイトルもWASです。いわゆる美人とは少し違った、オリエンタルな雰囲気だから一番メイクを頑張っている絵かな。琥珀が好きで小さい頃集めてて、ぱっとみで綺麗なんですけど、よくみるとちょっとエグいんですよね。ゴミとか小さい虫とかも入ってて。そういう少しちょっとゾクゾクする雰囲気を出したかったんです。

── この構図は本当にすごいと思ってて、商業の仕事だとまず見ないですよ。

米山舞
普段の仕事では絶対描けなさそうなレイアウトは選んでますね。

SHE WILL

米山舞
創作活動VS自分、みたいな感じですね。これもわかりやすいかな。自分の創作に対して悪いループにハマっちゃったとか、絵を描いていると誰にでも訪れる連鎖から抜け出そうともがいてます。周りの手は石膏像です。

── でもこの表情は悲壮感の漂う感じではないですよね。そしてこれもすごい構図。

米山舞

そうですね。どちらかというと「ここから抜け出すんじゃー!」ってイメージで。この構図自体も面白いかなって思ってます。この連作に限らないのですが、私は一度描いた絵の構図をかぶらせたくない気持ちがあります。今回のSHEはあの手この手で見せたいっていうのがあったから顔を逆にして、影とかも印象的にして全ての絵の構図に差をつけてますね。これだと画面に対して上下逆さまで正面からスポットライトが当たっている、(構図)自身が作品になるような、舞台にも見えますね。

SSS

米山舞
この作品は「私、SSS(米山さんが所属しているゲーム制作スタジオ)に入ったんですよ!」みたいな絵ですね(笑)。この子にはストーリーがあって、ゴミ袋を腰に巻いてるんですよ。異世界から逃げて現代の渋谷のゴミ溜めに落ちてきた女の子みたいな感じです。周りにあったものがゴミ袋ってことがわかってないと思うから。ここにあったものを身につけてしまっているって感じの印象ですね。だから牛乳パックとかペットボトルとか。頭の輪っかとかも蛍光灯。

米山舞

けっこう涙袋とか描くと可愛くなくなっちゃうんですけど、案外受け入れてもらえたかなと思ってます。

── 米山さんは冒頭でご紹介した「THE ONE」の前からとても上手でしたし注目されてらっしゃいましたが、なんというか独自の作家性が強くなってきたかなと。

米山舞
これまでいろんなお仕事をこなしてしてきて、とにかく職人として能力を磨いてきた面が大きかったと自負してます。ただその中で自分の印象が仕事によって決められることに抗いたかったというのがあります。自分のことはちゃんと自分で決めたいという気持ちです。仕事をずっとやってきて、もちろんこれからも続けますが、そろそろ自分の主張をしようかなという感じです。だから私の絵は日記に近いんですよね。その時々の思いを込めてます。

アニメとイラスト、どちらも捨てない

── 作家さん本人から作品についてのコメントを聞けるのはとても貴重です。今回「立ち向かう」というテーマを掲げられていますが、米山さん自身の覚悟のようなもが強く反映されているかのように思います。

米山舞

特にアニメーターという仕事をしていると、周りも男性が多くて、そこで甘く見られたくないと思ったんですよね。テレビでオンエアされるといろんな方が見るので、ネガティブなコメントを書かれることもあります。でも、そこで自分や相手に怒りをぶつけるんじゃなくて、やりたいことを堂々と主張できるようにしようって考えてます。絵もそういうスタンスで描かないと、自分自身に負けてしまう気がして。私は人一倍負けん気が強いのかなと思ってます。末っ子だからですかね。お姉ちゃんがけっこう習い事とかしてて、けっこう親とかにも褒められてて。

── 米山さんは「作画監督」という縁の下の力持ち的な役割も長かったので、特にご苦労なさった経験もあったかと思います。ただここ1年は同人誌でも精力的に展開してて、攻撃のフェーズに入った感じですよね。

米山舞
そうですね。「反撃する」みたいな。去年作った本のタイトル「esc.(エスケープ)」はそのまま「逃避」というテーマなんですけど、まさにアニメからイラストに展開するタイミングだったんですよね。当時は本当に迷っていました。「アニメの技術がこんなに中途半端なままで辞めていいんだろうか?」って。でも完璧な技術なんて一生たどり着けないですよね。だったらやりたいことやって、結果的に正解だったなって思わせればいいのではと考えました。鞍替えしても別にいいし、みんなも悩んで踏み止まってしまうのであれば、怖がることないよというシリーズです。

COMITIA126情報です

[esc.] B5/20P/フルカラー
新作7点+既存1点のイメージボードぽい感じのイラスト集になります
メイキング(レイヤー構造分けたもの)付きのポストカードも販売予定です

11/25 た-54bにてお待ちしてますおります〜個人初でどきどきですがよろしくお願いします!#COMITIA126 pic.twitter.com/rTIQvNE2I5

— 米山舞 − 𝗦𝗦𝗦 12/6〜12/25個展 (@yonema) November 21, 2018

── 逆に言えばそれくらい米山さんの中でアニメの存在は大きいのですよね。

米山舞
もちろん。やってた人生とやっていない人生だったら絵が大きく変わってたと思うし、ここまで信用を勝ち得てなかったって思います。これからも自分のやってきたことを捨てず、裏切らないように続けていこうと思ってます。今は以前ほどアニメには関わってませんが、それでも捨てきることは絶対にしません。取捨選択は自分の幅を狭めるので、全部とりにいきたいですね。二択を迫られて、どちらかを諦めるみたいなことがすごく嫌いなんです。全部やればいいじゃんって。

渋谷の生命力から生まれたメインビジュアル3部作

SHE RAVEN

米山舞
これは(個展を開くにあたって)一番最初に描いた絵なんです。ギャラリー外観の装飾に使うので、建物との兼ね合いを意識してます。この「メインビジュアル3部作」は都会にいる生き物シリーズです。最近は渋谷で働くようになって朝帰りすることもあるのですが、そこら中にカラスやネズミがいっぱいいるんですよ。ゴミを漁ってご飯食べてるし、生きてるな〜って感じ。強い生命力を感じるのでモチーフとして選びました。擬人化ですね。

SHE-BLACK RAT

米山舞
この子はネズミですね。イラストレーターの望月けいさんの影響もあり、正面顔のインパクトが大きく目力があって、ドレッシーなものが描きたかったんです。服はゴミ袋みたいな素材で構成されているイメージ。あとは鉄骨や建築資材とかのモチーフが好きです。よくみるとしっぽもあります。あとは細かいけど齧られたコードも存在してます。ただそういうイメージは別に伝わらなくてもいいと思ってます。見ている方が自由に感じてくれれば。

SHE-TWO CROWS

米山舞

これはカラスですね。彼らの呆然とした、というか憂いのある表情を絵を描きたくて。でも寂しい雰囲気が強すぎると描きたいテーマである「生命力」からぶれるので、二人にして絵としては若干にぎやかにしてます。この子たちの衣装もゴミなんですけど、思ったよりはスタイリッシュになっちゃいましたね。

── デザインに対してのポテンシャルが非常に高いですよね。この間、同人誌のデザインも全部自分でやってるって聞いてすごいびっくりしました。

米山舞
なんでもやりたい、夢見るやつなんでしょうね。人がお菓子を食べている様子をみて「あれ美味しそう、私も食べたい!」みたいな(笑)。

── 米山さんがそういう思いで走っている姿は、ものすごくポジティブなメッセージになってます。その強さに憧れるというか、救われるというか。

米山舞
どちらかというと愚痴ですね(笑)。「一緒一緒」「わかる〜」で通じる女子の会話みたいな。私の中ではイラストはコミュニケーションツールになってます。なので受け入れられやすいのかなと思っています。

── ありがとうございました!

米山舞初個展「SHE」

【開催情報】

・開催期間:12月6日(金)〜12月25日(水)12:00-19:00

・定休日:なし

・入場:無料

※混雑時は整理券対応をさせていただく可能性がございます。あらかじめご了承ください。

【ギャラリー概要】

・名称:pixiv WAEN GALLERY by TWINPLANET × pixiv

・所在地:東京都渋谷区神宮前5-46-1 TWIN PLANET South BLDG. 1F 

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