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インタビュー
2021.09.24

会社員兼業でも絵を発表し続ける「作業をシステム化するコツ」とは?イラストレーター・じゅん インタビュー

  • イラストレーターインタビュー
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構成/原田イチボ@HEW

イラストレーター・じゅんさんの初個展「SWORD'S & FOOD'S」が、2021年9月24日(金)~10月13日(水)に、東京・表参道にある「pixiv WAEN GALLERY」にて開催。人気シリーズの『タベガール』『武姫Weapons』を中心に、版権作品を含め約300点という大ボリュームでイラストが展示されています。


じゅんさんは、株式会社CyDesignation所属のイラストレーターとしてキャラクターデザインやイラスト製作を担当する一方で、個人名義でも作品を発表しています。多忙なスケジュールの中でも創作を続け、コンスタントに絵を発表し続けるコツを聞きました。

しっかりしたコンセプトがあれば、オリジナル作品でも反応がもらえる

── じゅんさんの経歴を教えてください。

専門学校を卒業して、最初は3Dデザイナーとしてゲーム会社に就職しました。専門学校ではイラストの勉強をしていたのですが、まずはゲーム業界でキャリアを積むことを優先させました。5年目になり、そろそろ念願のイラストの仕事に挑戦したいと思い、現在の会社に転職しました。

── ゲーム業界への思い入れが強いんですか?

マンガとゲームに出会わなければ、イラストレーターになっていません。小学生のときに鳥山明先生の作品にハマり、三浦建太郎先生の世界観に強い影響を受け、ゲームだと『ファーランドサーガ』、『ファイナルファンタジー』、『ドラゴンクエスト』、あとは『スーパーロボット大戦』もめちゃくちゃ好きですし……。ゲームは僕の原点です!

── 熱いコメントありがとうございます! 「イラストレーターじゅん」としての個人名義の活動はどのように始まったんでしょうか?

Twitterにイラストを投稿していて、たしか社会人3年目くらいだったかな? フォロワーが増えてきて、そこからライトノベルの挿絵など商業案件の依頼も来るようになりました。だから、けっこう最近の話ではあります。

── 「フォロワーが増えた」というのは、『タベガール』や『武姫Weapons』がきっかけですか?

そうですね。どちらも2019年頃に始めたシリーズです。銃器を擬人化した『ドールズフロントライン』というゲームをプレイしていて、「じゃあ僕の好きなファンタジーの武器を擬人化して描いてみよう」と思いついたのが『武姫Weapons』です。自分の個人的な趣味をデザインに詰め込んだシリーズなんですが(笑)、しっかりしたコンセプトがあればオリジナル作品でもこれだけ反応がいただけるというのは発見でした。

『タベガール』は他のイラストレーターさん達の作品に見られる、「ジャンルを絞って女の子を描く」という部分を参考にして生まれたと思います。自分自身とても楽しく描けましたし、画集まで出していただいたのは本当に幸運だったと思います。

── じゅんさんの手を飛び出して、「何か食べている女の子のイラストを投稿するときは、『タベガール』のハッシュタグをつける」というムーブメントが起きましたよね。

すこし恥ずかしいですね(笑)。食べている女の子というジャンル自体は大昔から存在しますが、そこに『タベガール』というキャッチーな名前をつけたことが大きかったかもしれません。僕は『ドラゴンズクラウン』などヴァニラウェアが開発するゲームが好きなんですが、ヴァニラウェアのゲームって食事のシーンが印象的なんですよ。そこから「この感じをイラストに昇華できないかな?」と刺激を受けた部分もあります。僕が100%オリジナルなわけではなく、いろんな作品からインスピレーションを受けて生まれたジャンルだと思っています。

ストーリーを想像して、一番盛り上がるワンシーンをイラストにする

── 『タベガール』や『武姫Weapons』のように、ひとつのテーマを定めて描き続けるときに意識していることはありますか?

とらわれすぎるのもよくないんですが、ストーリーや世界観を考えて描くようにしています。「このキャラクターはこの世界の中で生きている」という手応えを感じ、「この子ならこういうとき、こうするだろう」と想像して、良いシーンを抜き出して絵にするんです。

── では、ひとつひとつの絵に裏設定みたいなものが想像するんでしょうか?

そうですね。子どもの頃はマンガ家に憧れて「設定遊び」のようなことをしていましたし、その延長線でイラストについても想像することが多いです。僕はファンタジー系のイラストだとバトルシーンを描くのが好きなんですが、「なぜ何と戦っていて、これは何をした場面で、この後に何が起こるのか」みたいな設定はしっかり存在します。いったんストーリーを思い浮かべて、一番盛り上がるワンシーンをイラストにする感覚ですね。極限の妄想の中から切り取る、というか。

── だからこそ、見ている側もいろいろ想像がふくらむイラストに仕上がっているんですね。

誰にも伝わらない僕だけの想像のつもりだったんですが、イラストを見た方々も「実はこうなんじゃないか」とか想像したことを語ってくれるんですよね。それがまた創作の刺激になります。

── あと『タベガール』でお聞きしたかったんですが、どういうポイントを意識すれば、こんなにおいしそうな食べ物が描けるのでしょうか? 一生懸命に描けば描くほど、まずそうな見た目になります……。

強いて言うなら、質感と彩度でしょうか。食べ物をおいしそうに加工してくれるカメラアプリってあるじゃないですか。あれを見て思ったのが、彩度を上げるとおいしそうに見えるんですよね。あとは形を少し柔らかく描くのもいい気がします。

── なるほど。描き込もうとするあまり、ブツブツやギザギザが強調されて、柔らかさから遠ざかっていたのかもしれません。

「とにかく頑張ろう」みたいな漠然とした状態は危険

── じゅんさんは、会社の仕事もしながら、個人名義の仕事もして、1日どれだけイラストを描いているんでしょうか?

多いときは1日中です。でも会社の仕事だけで終わる日も、全然描けない週末もあります。いったん集中すると、何時間でも一気にバーッと描くタイプだと思います。

── 日々たくさんの仕事をこなす中で、思うように描けないタイミングはありませんか?

上手くいかないときって、単純に疲れているんですよ。昔は不調のたびに「俺の才能はもう枯れた」とか「このジャンルはもう限界かも」とか、いちいち悩んでいました。でも違うんです。ただ疲れているだけなんです。調子が悪いとき、僕はもう完全に諦めて寝るか、ゲームしちゃいます。スイッチング(切り替え)は、めちゃくちゃ大事ですよ!

── じゅんさんは、もともと切り替えが上手な性格だったんですか?

いいえ、昔は全然でした(苦笑)。でもイラストに本腰を入れるようになって、「これはスイッチングを意識しないとダメだ」と気づきました。創作は自分自身との戦いです。孤独な作業だからこそ、自分でスイッチを用意する必要があります。「今からやるぞ」とか「今日はここまで」とか、スパッと区切って作業するようにします。ずるずる粘ったところで良い結果は得られません。

── スイッチングが大事だと理屈ではわかっていても、実践するのに苦労している人は多そうです。

絵を描くことを無理なくルーティン化するためには、自分の作業工程を正しく把握することが大切です。「自分はラフに約3時間かかる」や「これくらいのイラストだと制作に10時間は必要」といったことを理解していないと、スケジュールの見通しも立てられません。そもそもどの作業にどのくらい時間がかかるかわからなければ、今は作業時間を計測できるアプリもあります。いろいろ工夫してみることが大事で、「とにかく頑張ろう」みたいな漠然とした状態は危険です。

── なるほど。ただ「頑張る」ではなく、スケジュールを仕組み化していくイメージですね。

自分が知っているクリエイターの方々は、皆さん機械みたいに仕事しています。もちろん根本にあるのは「絵を描くのが好き」という感情ですが、作業自体は徹底的にシステム化している。特に多くの依頼が来るような売れっ子の方だと、スケジュール管理が重要です。そういった方々の話を聞いて、僕もノウハウを学んでいきました。

── 会社員をしながら個人名義でもコンスタントに作品を発表し続ける背景には、ロジカルな工夫があるんですね。

まぁでも最終的には「手を動かすのが正義」ではありますね。作業をシステム化しているからこそ、「じゃあ手を動かせば何とかなるな」と安心して気合いを入れられる。

── 論理に裏打ちされた根性論というか。

やり方をいろいろ工夫していると、なんだか新しいことをしている人に見えますが、結局イラストを描くのは地味な作業の積み重ねです。だからやっぱり最終的には「手を動かす!」ですね。

デッサンの知識があるから、魅力的な「あえて」が選べる

── じゅんさんは学生時代からデッサンを本格的に勉強して、一時は画塾でバイトしていたそうですね。美術的な知識があるからこそ、「イラストとして見栄えをよくするためのウソ」とのバランスに悩むことはありませんか?

「現実にはありえないバランスだけど魅力がある」という絵は実際に存在するんですよね。でもそういう絵を描く人が美術的な知識を持っていないかと言うと、そうとは言い切れません。理論を知った上で「でも自分はこれがいいんだ」と崩していたりする。で、その「崩し」の境地に至るためには、結局今まで描いてきた枚数が物を言うんですよね。デッサンは基礎力にはなりますが、絵の全てではない。そして、「こうすると見栄えがいい」という閃きは経験から生まれる……というのが僕の考えです。

── ということは、どうせ崩すからといって最初からデッサンなどを勉強しないのは違う?

それは全然違います。もちろん美術的な理論抜きでいきなり魅力的な絵を描ける方がいるのも事実ですが、僕のようにいったん正確な型を知ることが性に合っている人も大勢いると思います。3Dデザイナー時代にすごく勉強になったのが、3Dってまず正確なモデリングが存在した上で、「これにポーズを取らせて良い絵にするにはどうすればいいんだろう?」を考えるんです。見栄えを良くするためには、正確なモデリングの足を伸ばしたり、手を大きくしたりする必要があります。あの作業には、絵の精髄が全部詰まっていたように感じます。


最初から崩れているのと、正解を知った上で崩すのは大違いです。「現実だと足がもっと小さく見えるんだろうけど、ここはあえて大きく描こう」とか、もちろんやり方は人それぞれですが、知識があるからこそ、魅力的な「あえて」が選べる場面もあると思います。

バズらなくても、絵に魅力がないわけではない

── じゅんさんはアースカラーなど落ち着いた色味を使うことが多いですよね。それでもイラストが地味にならないように、どんなことに注意していますか?

「色味がダサい」って昔めちゃくちゃ注意されたんですよ(笑)。だから彩度の高い色をたくさん使おうとした時期もあったんですが、僕の絵柄と壊滅的に合わなかったんですよね……。「俺のセンスはこっちじゃない」と受け入れて(笑)、暗い色の中で試行錯誤するようにしたら、イラストにまとまりが生まれました。


具体的には、ブラック、ホワイト、グレーの配置に気を使うようになってから変わったと思います。ここで言うブラック、ホワイト、グレーというのは、色そのものではなく、明度の話です。白黒にしたとき、それでも魅力的に見えるならば、明度の配置がいいということです。一部がスカスカに見えたり、逆に重苦しく見えてしまうのだったら、明度の配置から考え直したほうがいいと思います。

── 作業で時間がかかる工程はどこですか?

レタッチです。レタッチの段階で色をまた変えたり、衣装のデザインも減らしたり増やしたりするので、効率が悪いんですけどね。行ったり来たりしながら完成に近づけます。

── Instagramでは、作業工程を動画で公開していますよね。描き進めた段階でもイチからやり直すところに驚きました。「これじゃない」という判断はどのように下していますか?

仮に他人の作品だったら、僕も「これで良いと思うけど」と感じるかもしれませんが、自分の作品だとどうしてもやり直す場合が多いですね(笑)。「この方向に進むと、自分は描いている途中で飽きるだろう」というのが感覚的にわかる瞬間があるので、そういうときは描き直しています。単純な良し悪しというか、自分がより進みたい道を選び直すイメージですね。でも「1回消す」というのは創作において大事なことのような気がします。1、2枚目はまだ思考が足りなくて、3枚目くらいになってからがようやく本番なのではないでしょうか。

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じゅん(@_navigavi_)がシェアした投稿

── SNSで作品を発表し続ける上で大切な心構えを教えてください。

無心になることですね。どうしても他人の評価が気になってしまう場所ではありますが、絵を描いてきた経験はそれぞれ違うし、その時々の流行のテイストというものもあります。僕も昔、ドラクエのファンアートを描いていたときは反応がよかったのに、オリジナル作品をアップした途端に反応がなくなってしまいまして。けっこうショックな出来事ではありましたが、それとこれとは別というか、SNSはそういう場所だから悩んだって仕方ないんですよね。


バズる快感は強い原動力になりますが、バズらなかったからといって、あなたの絵に魅力がないわけじゃありません。だから結局は苦しみながらも描き続けるしかないんでしょうね。どんなに上手い人だって、それぞれの悩みがありますし、苦しまないクリエイターはいません。……まぁそう言われて「なるほど。じゃあ安心だ」とすぐ落ち着けるなら苦労はしませんが(笑)、やっぱり苦しみ続けることでしか道は見えてこないんだと思います。

「イラストレーターじゅん」が誕生するまでをさらけ出した

── 初個展「SWORD'S & FOOD'S」のキービジュアルについて教えてください。

ファンタジー系のイラストと『タベガール』のイラストを両方展示するとなって、それらの世界観をどう両立させるべきか、すごく悩みました。その結果、「じゃあ融合させよう!」と『タベガール』に登場する姉妹にファンタジーの世界に入り込んでもらいました。作者による二次創作みたいな感じですね。作業はめちゃくちゃ楽しかったです!

── 個展の見どころを教えてください。

自分がイラストレーターになる前の落書きも展示して、「イラストレーターじゅん」が誕生するまでの成長過程を全部さらけ出しています。自信作だけを厳選して展示するのもひとつの選択肢だと思いますが、「僕自身が会場を訪れたときに発見がありそうな形」を考えて、このようなスタイルになりました。個展のために作品をまとめる段階で「この絵はこうすればよかった」とかが見えてきましたし、自分のための反省会にもなればと思っています(笑)。

── イラストレーターとして、今後の展望を教えてください。

やっぱり僕にとってはゲームが原点なので、自分の名前がクレジットされたゲームがたくさん出てほしいです。その目標に向かって、今後も頑張っていきます。自分が納得いく出来の作品は、最初のうちは10枚描いたうちの1枚かもしれない。でもそこから良い部分を分析して生かせば、5枚のうち1枚、3枚のうち1枚と勝率は上がっていく。そういうふうに進化を続けていきたいですね。

── どうもありがとうございました!

じゅん初個展「SWORD'S & FOOD'S」開催中!

pixivとツインプラネットが共同運営するギャラリー「pixiv WAEN GALLERY by TWINPLANET × pixiv」にて、じゅんさんの初個展「SWORD'S & FOOD'S」開催中です。

『タベガール』『武姫Weapons』などの人気シリーズはもちろん、オリジナル作品、版権作品ふくめて300点以上の大ボリュームで展開します。じゅんさんのイラストレーションのこれまでの軌跡を追うことができる展示となっています。


開催期間:9月24日(金)~10月13日(水)

定休日:なし

入場無料

所在地:東京都渋谷区神宮前5-46-1 TWIN PLANET South BLDG. 1F

営業時間:12:00~19:00


>>pixiv WAEN GALLERY公式HP<<

>>公式Twitter<<

※混雑時は整理券対応をさせていただく可能性がございます。あらかじめご了承ください。

※新型コロナウイルスへの対策について

じゅん個展「SWORD'S&FOOD'S」について、現時点では10月13日(水)までの開催を予定しております。今後も状況を注視しながら対応を進めてまいりますが、新型コロナウイルスの感染拡大により、開催期間に変更が生じる場合がございます。販売商品や来店方法等を含め、今後の運営状況については、随時pixiv WAEN GALLERY公式HP、公式Twitterにてお知らせさせて頂きます。何卒ご理解賜りますよう、重ねてお願い申し上げます。

じゅん
  • じゅん
  • 3Dデザイナーとしてゲーム会社への勤務を経て、現在は株式会社CyDesignation所属のイラストレーターとしてキャラクターデザインやイラスト製作を担当。
    その他、個人名義にてライトノベルなどの書籍用イラストを手がける等、幅広く活躍中。
    SNSを用いた創作活動は2014年からスタート。趣味のらくがき投稿から始め、現在もオリジナルイラストの投稿を継続中。

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