前よりも「いいね」がつかない。自分がオワコン化した不安を解消するには。/カレー沢薫の創作相談

文/カレー沢 薫
過去作ほど「いいね」がつかない
最後に自分で回答を書いてしまっていますが、イーロンです。
イーロンのせいだから仕方がないと諦め、そして真の黒幕に気づいた自分の慧眼を讃えて、その観察力を今後の創作に生かしていきましょう。
実際「自分や他人のせいにするぐらいならぼんやりした巨大なもののせいにする」というのは大切なことです。
「上手くいかないのは自分が無能なせい」なのは否めませんが、認めたところで現状が変わるわけでもなく、だからと言って「周囲が俺の能力を認めないせい」と近しい他人のせいにしても角が立ちます。
よって「政治のせい」など、あまりにも大きく、分厚く重く、そして大雑把すぎて否定しにくいもののせいにしておくのが一番なのです。
しかし政治批判に対し「そんなに嫌なら日本を出ていけ」という極論をいう人がいるように「そんなに嫌なら他のSNSに移ればいいし、そもそも『イーロンの悪口をXに書いている』という状態を恥ずかしいと思わないのか?」と言われたら「スレッズもしばらく見ない内に大沢たかお祭とか似たようなもんだし」としか言い返せません。
幸いあなたは二次創作なので、責任を「原作」という巨大なものに求めることもできます。
二次創作は原作の波に多く左右されるので、単に原作人気が落ち着いたという可能性もあります。
また作品数増加と時間経過で数字が右肩下がりになるというのは自然の摂理です。
どんな人気作であろうとも「2巻には付録として2兆円がついてくる」とかでなければ、1巻の部数を2巻が超えるというのはまずありえませんし、巻数が増えるごとに部数は落ちます。
同カップリングの作品を挙げ続けるうちにそれと同じ現象が起きているだけとも考えられます。
「比較」はキリがない
しかしそういわれても、同じカプを扱っていて同じくイーロンのデジタルDVを受けているはずのあの人は数字が落ちていない、など今度は他者と比較して自責してしまったりするのでしょう
もはや進次郎語録の中に「創作って地獄なんですよヘルって感じで」が入っていても気づかないレベルで創作は地獄なのですが、この地獄の厄介なところは「無間地獄」なところです。
特に「比較」に関してはキリがなく、上には上がいますし万が一頂点になっても、今度は自分を追い落とす新星との比較が始まるでしょう。
運よく他人との比較から抜け出せても、また過去の自分との比較が始まり、その繰り返しです。
比較という行為自体をやめるのが一番ですが、それは「悟りを開け」と言っているようなものなので、多分無理です。
よって、比較が始まってしまったら「その行為に意味はない」と早めに気づいて切り上げることを心がけましょう。
例え今後過去作を超える作品を出せても、今度はその作品との比較が始まるだけで、それはいいね数が世界人口を超えるまで永遠に続くのです。
「虚しさ」というのは、全ての行動をストップさせる威力があり、虚しくなって創作をやめてしまう人もたくさんいます。その虚しさを創作ではなく「比較すること」に向けましょう。
そもそも、過去の自分と比較して焦る気持ちはどこから来ているのでしょうか。
おそらくあなたは自分が「オワコン化」してきたのではないかという不安を抱えているのでしょう。
商業作家にとってオワコン化は餓死に直結するので重大な問題なの悩むのは当然なのですが、趣味の二次創作作家がオワコンに悩むという現象自体よく考えれば謎ですし、そもそも「終わり」とはなんだという話です。
商業作家がオワコンになることで連載が終了し、以後仕事がもらえなくなるように、いいね数が3桁下回ったらジャンル追放、もしくは利き手が爆発して描けなくなるというルールなら焦るのもわかります。ですが誰も見ていない、そもそもジャンルに自分しかいないという状態でも、描きたいと思う限り描いて発表していいのが楽しみとしての創作です。
創作の楽しみの中に「他者評価」があることは否めませんが、そのウエイトが重くなりすぎているのではないでしょうか。
せっかく力作を仕上げた達成感が数字で損なわれるというなら、創作すること自体の楽しみと他者に評価される喜びが殺し合っている状態なのでしょう。今一度「全員振り落とされてもいい」ぐらいの勢いで自分が描きたいものを描いてみてはどうでしょうか。
私も一作目を超えられなかった
私は漫画家デビューして15年なのですが、実は10年ぐらいデビュー作の部数を超えられませんでしたし、電子書籍参入で数字がうやむやになったため、未だに越えられてない説すらあります。
当然オワコン化に悩みましたし、昔の自分の方が面白かったのではないか、とも思い、昔の作風に戻してみようとしたこともありました。
しかしよく考えれば「デビュー作もそこまで売れてない」のです。
過去作のリメイクがやっていけるのは過去作が温め直して食っても美味い名作だからであり、そうでもないものを焼き直しても発がん性物質が生成されるだけです。
つまり「終わったのではなく始まってすらいない」キッズリターン状態だったのです。
あなたも過去の自分を「絶頂」と捉えるから今の自分を落ち目と感じるのでしょう。
何せ創作は無間地獄なのでゴールは存在せず、過去は出発点、もしくは通過点なので、うしろばかり振り返っていたら失速するのは当然です。
もちろん、スタートダッシュが最速でその記録を超えることない場合もありますが、走り続けている限り、記録更新の可能性はあるのです。
無間地獄であると同時に、死ぬまで希望があるのも創作です。
だからこそ「やめるにやめられない」というシャブみがあるのですが、「一度手を出したらおしまい」なところも同じです、恍惚と離脱に苦しみながら死ぬまでやっていきましょう。

カレー沢先生のコラムいつも楽しく読んでいます。
二次創作のマンガ描きなのですが、ジャンルを始めた当初よりいいねの数が減っている気がします。
カップリング自体は元からそんなに需要が高いわけではないのですが、マンガは多い時で1万〜3万を越していました。
普段イラストはあまり書かず時折マンガをアップしています。
ただ最近は力作のマンガを描いても伸びず数千止まりです。
見てもらえてる数としてはカプの規模から考えても十分な数なのですがつい過去の自分の伸びと比べてしまいます。
フォロワー数もそこそこいる方ではあります。
私の上げ方が悪いのか、飽きてしまったのか、それとも単純に伸びた作品はマンガとしておもしろかったから伸びただけなのか、はたまたイーロンのせいなのか。
過去の自分との向き合い方、ぜひ教えてください!